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第58話 両手に花と言われても at 1995/5/13
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「で? どうなの、そっちは?」
土曜日の午前授業もつつがなく終わり、さて帰るか、と思ったところに渋田がやってきて、遊びにきなよ、と誘われた僕。肩を並べて歩いていると、渋田がそんな問いを投げてきた。
「ん? 校外活動の件?」
「そそ」
何度もうなずいては、話の続きをせがんでいる。お前は、待て! の出来ない犬か。
「いやあ、みんなで相談したのもギリギリの木曜日でさ、結局昨日の放課後に、部活がなくって用事がなかった僕と佐倉君の二人だけ居残って、なんとか行動予定表を作って提出したんだ」
「そぉーうぉーじゃあーなくってぇーさぁー」
「な、なんだよ、いつもに増してうっとうしいな……」
「いつも!?」
僕の素っ気ないセリフにショックを受けた表情を浮かべた渋田は、芝居がかった仕草でのけぞってみせた。それからニヤニヤと気色の悪い満面の笑みを浮かべつつ、僕の脇腹を肘で突く。
「なんたって、清純派文学少女として隠れファン急増中の河東さんと、学年トップクラスの人気を誇るあのノハラさんが一緒なんだよー? まさに両手に花! このー! このこのっ!」
「はぁー? ノ、ノハラさん!? ……あー、なんだ、ロコのことか」
上ノ原、だから、ノハラさん、ってわけか。はじめて知ったぞ。
っていうか、純美子にも結構ファンがついてるだなんて、今まで全然知らなかったな……。これはうかうかしてられない。
と、僕がぽろっと口にした昔からの呼び名に渋田は喰いつき、あわあわと口をわななかせる。
「ロ、ロコだって!? まーっ! もうそんなカンケイにまで……!!」
「そんなカンケイってなんだよ? 昔からの知り合い、幼馴染みなんだって」
「いいですねぇー、お・さ・な・な・じ・み!」
「からむなぁ」
いやん! いやん! とか言いつつ、団地の階段を登りながらしきりにくねくね身をよじる渋田。正直気持ち悪い。その気持ち悪いついでに、渋田はとうとうこんなことまで言い始めた。
「し・か・も、ですよ? あの佐倉君まで一緒じゃないですかー!?」
「………………はぁ?」
すると、うひひ、と渋田は下品な笑みを浮かべてみせた。こいつ、ワザとやってるな……。
「佐倉君、いや、佐倉かえでちゃんも結構コアなファンが多くってですね――」
「かえでちゃん、って……。おい、アイツ、男だぞ?」
「ノンノンノーン! 本当は女の子なんだってウワサがあるくらいなんですよー」
「……アホか。いいから上がれって。狭い階段でギャアギャア騒いでると近所迷惑だろ?」
「って、僕んちなんだけど!?」
そんなしょうもないコントを繰り広げつつ、今日も今日とてお邪魔します、っと。
にしても、佐倉君にまで手を出そうだなんて、ウチの男子マジで終わっとる。確かに佐倉君の顔立ちや仕草、声のトーンは女の子っぽいところがあるけれど。いい匂いもするし。あれ?
ごほん、と咳払いをひとつして、慌てて馬鹿げた妄想をかき消すと、僕は麦茶とコップを持ってきた渋田に逆に尋ねてみることにした。こっちもやられっぱなしじゃ面白くないしな。
「そ、そっちこそどうなんだよ? サトチンとは? ん?」
「もっちろん、仲良しだよ!」
……聞いて損した。
そうだった、こういう奴だったっけ。
嫌味とかまるで通じないんだよなぁ。そこがこいつのいいところでもあるんだけど。
「はぁ……。まあ、いいや。それよりも……ほら、早速続きやるぞー」
「えええ……。もう少し現実逃避したかったなー」
「自分たちのためにやってることだろ? 文句言わない。じゃまずは、先攻、僕から行くぞ」
カタカタタタタ――。
土曜日の午前授業もつつがなく終わり、さて帰るか、と思ったところに渋田がやってきて、遊びにきなよ、と誘われた僕。肩を並べて歩いていると、渋田がそんな問いを投げてきた。
「ん? 校外活動の件?」
「そそ」
何度もうなずいては、話の続きをせがんでいる。お前は、待て! の出来ない犬か。
「いやあ、みんなで相談したのもギリギリの木曜日でさ、結局昨日の放課後に、部活がなくって用事がなかった僕と佐倉君の二人だけ居残って、なんとか行動予定表を作って提出したんだ」
「そぉーうぉーじゃあーなくってぇーさぁー」
「な、なんだよ、いつもに増してうっとうしいな……」
「いつも!?」
僕の素っ気ないセリフにショックを受けた表情を浮かべた渋田は、芝居がかった仕草でのけぞってみせた。それからニヤニヤと気色の悪い満面の笑みを浮かべつつ、僕の脇腹を肘で突く。
「なんたって、清純派文学少女として隠れファン急増中の河東さんと、学年トップクラスの人気を誇るあのノハラさんが一緒なんだよー? まさに両手に花! このー! このこのっ!」
「はぁー? ノ、ノハラさん!? ……あー、なんだ、ロコのことか」
上ノ原、だから、ノハラさん、ってわけか。はじめて知ったぞ。
っていうか、純美子にも結構ファンがついてるだなんて、今まで全然知らなかったな……。これはうかうかしてられない。
と、僕がぽろっと口にした昔からの呼び名に渋田は喰いつき、あわあわと口をわななかせる。
「ロ、ロコだって!? まーっ! もうそんなカンケイにまで……!!」
「そんなカンケイってなんだよ? 昔からの知り合い、幼馴染みなんだって」
「いいですねぇー、お・さ・な・な・じ・み!」
「からむなぁ」
いやん! いやん! とか言いつつ、団地の階段を登りながらしきりにくねくね身をよじる渋田。正直気持ち悪い。その気持ち悪いついでに、渋田はとうとうこんなことまで言い始めた。
「し・か・も、ですよ? あの佐倉君まで一緒じゃないですかー!?」
「………………はぁ?」
すると、うひひ、と渋田は下品な笑みを浮かべてみせた。こいつ、ワザとやってるな……。
「佐倉君、いや、佐倉かえでちゃんも結構コアなファンが多くってですね――」
「かえでちゃん、って……。おい、アイツ、男だぞ?」
「ノンノンノーン! 本当は女の子なんだってウワサがあるくらいなんですよー」
「……アホか。いいから上がれって。狭い階段でギャアギャア騒いでると近所迷惑だろ?」
「って、僕んちなんだけど!?」
そんなしょうもないコントを繰り広げつつ、今日も今日とてお邪魔します、っと。
にしても、佐倉君にまで手を出そうだなんて、ウチの男子マジで終わっとる。確かに佐倉君の顔立ちや仕草、声のトーンは女の子っぽいところがあるけれど。いい匂いもするし。あれ?
ごほん、と咳払いをひとつして、慌てて馬鹿げた妄想をかき消すと、僕は麦茶とコップを持ってきた渋田に逆に尋ねてみることにした。こっちもやられっぱなしじゃ面白くないしな。
「そ、そっちこそどうなんだよ? サトチンとは? ん?」
「もっちろん、仲良しだよ!」
……聞いて損した。
そうだった、こういう奴だったっけ。
嫌味とかまるで通じないんだよなぁ。そこがこいつのいいところでもあるんだけど。
「はぁ……。まあ、いいや。それよりも……ほら、早速続きやるぞー」
「えええ……。もう少し現実逃避したかったなー」
「自分たちのためにやってることだろ? 文句言わない。じゃまずは、先攻、僕から行くぞ」
カタカタタタタ――。
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