ラブ×リープ×ループ!

虚仮橋陣屋(こけばしじんや)

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第263話 波乱ぶくみの運動会(9) at 1995/10/10

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『これから――二年生代表による――障害物競争が――はじまります――』

「がんばれー! スミちゃーん! サトチーン!」


 応援席から渋田と二人で腹の底から大きな声を出して二人を応援する。純美子と咲都子の二人は女子の部だから、まだ少しスタートまで猶予があるようだ。すし詰め気味の隊列の中から、純美子は恥ずかしそうに控えめな仕草で手のひらだけ振り返してきた。咲都子の方はというと、ただいまストレッチ中だ。


 障害物競走とひとくちにいっても、地域や年代によってバラつきがあると思う。

 白い粉の中から手を使わずに飴玉を探し出す関門があったかと思えば、平均台を落ちずに最後まで渡ったり、伏せられた網の中を潜り抜けたり、紐でぶら下げられたパンを口でキャッチするといった関門があるのが、一般的な障害物競争のイメージだろうか。

 ちなみに、あの飴玉探しの粉ってなんなの?
 小麦粉? 片栗粉?
 今だと衛生面ガーとかうるさく言われそうである。

 ともかく、僕らの西町田中学校の運動会においては、男子と女子で関門の内容が異なるという微妙に準備に手間のかかる特色があったりする。

 男子の場合はこうだ。

 第一の関門は『タイヤ引き』。やたらデカいトラックのタイヤが置いてあり、結わえ付けられたロープを両肩にかけて引っ張るパワー勝負だ。
 第二の関門は『麻袋跳び』。コースに置かれた麻袋の中に両足を入れ、両手で腰あたりまで引き上げた状態でぴょんぴょん跳ねて進むという地味にツラいアレである。
 第三の関門は『キャタピラ』。両端をつなげて輪っかにした段ボールの中に入り、ハイハイをするようにして文字どおりキャタピラのごとく進む割と腰に響く奴だ。
 そして、最後の第四の関門がさっきも出てきた『飴玉探し』だ。もうこの時点で参加者は大汗をかいて息も上がっているので、顔に粉はつくは飴を探そうにも息が続かない、という地獄のような組み合わせなのである。誰だよ、これ考えた奴。出てこい。

 そして、それが女子の場合にはこうなる。

 第一の関門は『ハシゴ抜け』。コースに横倒しにされた木のハシゴをくぐり抜けられたらクリアだ。
 第二の関門は『三輪車』。どこから持ってきたのか、代々受け継がれている三輪車がコース分の十二台あって、それを漕いで進むのだ。
 第三の関門は『リンボーダンス』。微妙に嫌な位置に棒が渡されていて、それを上半身を反らしてうまくかわさなければならない。
 そして最後の第四の関門は『パン喰い』だ。一応衛生面の危惧からか、おととしあたりから袋のまま吊るすようになったらしい。おかげで取りづらいとたいそう不評なようだ。そのため何度もジャンプしなければならないので、へそチラチャンスあり、と吉川のエロテクメモには書かれていたかと思う。女子にはナイショだよ!

 とまあ、二つを比較すると、難易度の違いももちろんそうなんだけれど、女子の方はやたらラッキースケベ的な要素が含まれているような気がしてならないのは僕だけなのだろうか……。

 いやいやいや、さすがに中学生女子が三輪車に乗っている姿にコーフンするセンセイやクラス委員はいないだろう。否、いないことを切に祈るばかりである。


「位置についてー! よーい!」


 ぱあん!!


 案の定、汚い絵面となった男子の部を眺めつつ、僕はまもなくやってくる『借り物競争』の対策を練ることにする。事前に部員たちの持ち物や色を確認しておけば役に立つかもしれない。


「なあ、シブチン? 去年の『借り物競争』のお題って覚えてる?」

「さすがに全部は覚えてないよー。インパクトの強かった奴なら少しだけ覚えてるけどねー」

「だよなぁ。こんな時に限って、ハカセがいないんだよなぁ……」


 五十嵐君ならばすべて記憶しているのではないかと期待していたのだ。ただ残念ながら、少し前に、貧血気味の症状を訴えた水無月さんを保健室へ連れて行ってしまったのでここにはいなかった。


「ぼ――僕はあんまり覚えてないんだよね……どんなのあったっけ?」


 なにしろ二十六年も前のハナシだからさ、とは口が裂けても言えない。
 渋田は、うーん……、とひとしきり唸り声をあげてからこう言った。


「そーだなー。確か……『赤いパンツを履いてる人』とか『片思い中の人』とか」

「プライベートの侵害だろ、それ……やめてやれよ……」

「あとは『物真似ができる人』ってのが面白かったよね! その場でやらされてて!」

「すでに拷問なんだよなぁ」

「そうそう! 『学校で一番怖いセンセイ』ってのは盛り上がったかも! 梅センが――!」

「そこは確定なんだ……梅セン、かわいそう……。確かに怖いけど」


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