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ドドソルニア編
弟子入り期間終了
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イオ視点に戻ります。
------------------------------------
雨の音がする。まどろみの中で意識を浮上させるといつものように背中からジークに抱き込まれていた。ただ、いつもと違うところは触れる感触が素肌だということだ。雨のせいで少し気温が低くなっていて温かな肌が心地よい。
体勢を変えようと身じろぐと体中の痛みに口から唸り声が漏れた。体中が筋肉痛だ。そして股関節、腰、お尻が痛い、痛すぎる。その痛みとともに夕べのことを思い出す。
何というか、想像以上にすごかった。何も知らない俺に不安を持たせないように使用する物、これからすることをジークが細かく説明してくれたのでまるで実地込みの保健の授業みたいだった。
ドドソルニアは大人のお店専用の職人もいるらしく、そのための道具が豊富らしい。感心したのは洗浄玉と呼ばれるビー玉くらいの大きさの道具だった。洗浄玉をお尻に入れると腸内洗浄され、体温で溶けるとローションになり更に性病予防効果もある。洗浄玉の種類は色々あり、これに避妊の効き目を施したものは娼館で使われ、弛緩効果があるものは初体験だったり、体格差のあるカップルに重宝されているらしい。
ジークは宣言通りゆっくりと進めてくれた。ゆっくりすぎて本番前にはヘトヘトになるくらいに時間をかけて進められ、体力も気力もごっそりと搾り取られた。
行為自体は正直苦しいだけだったが、多幸感が凄まじかった。ジークは何回かすれば快感を拾えるようになってくると言っていたが本当だろうか。
「起きたのか?」
頭上からジークの声が聞こえたので見上げると、見惚れるほどの美丈夫が柔らかな笑みを浮かべてこちらを見ていた。眩しい⋯。
顔はとても格好良いのに、掛け布団からはみ出た尻尾がブンブンと振られていて可愛いと思ってしまう。
「おはようジーク。」
「体は大丈夫か?」
「大丈夫ではない、全身痛い。」
「はは、悪い。途中から加減ができなかった。」
笑いながらジークは近くのテーブルから鞄を手繰り寄せた。俺もトイレに行きたくなったのでベッドから下りようとしたが、床にへたり込んでしまった。足に力が入らない。ラーフさんが言っていた「足腰立たなくなる」とはこのことか!
「イオ、ポーション飲んどけ。」
ジークは俺を抱き上げてベッドに戻し、手にポーションを持たせた。
「これ、高級ポーション!?怪我したわけじゃないから安いのでいいよ。」
「いや、最初はこっちの方が良い。俺とイオには魔力の差があるからな。」
魔力関係あるの?と思ったが、とりあえずポーションを飲んで立てるようになったのでトイレを済ませた。しかし高級ポーションを飲んだにも関わらず、体の怠さは取れない。
「以前寿命の異なる夫婦は寿命が長い方に引っ張られるという話をしただろ?」
「うん」
「あれは体を繋げることによってお互いの魔力が混ざって、それに付随して寿命が長い方に引っ張られるんだ。」
「そんな仕組みが⋯」
「だから魔力に差がある場合は馴染むまではどうしても少ない方が負担になる。体のダメージはポーションで治るけど、魔力過多による怠さや体の重みは慣れるしかないんだ。でもイオは思ったより平気そうだな。」
なるほど、だからラーフさんは俺が動けなくなる可能性があったから早々に関係を進めるなと言っていたのか。
「全く動けないわけではないけど、今日は休みだからゆっくりしていようかな。」
「世話は任せろ。」
ジークは機嫌良さげに俺の肩を抱いた。ちなみにこの間、2人して素っ裸である。さすがに恥ずかしくなってきたので服を着た。
いや、いそいそと服を着せようとしないで下さい。自分で着られます。耳を伏せてもダメです。
*************************
そう言えば夕食も取らずに行為に及んだのでお腹が空いた。今はまだ日は昇りきっていない朝だ。遅めの朝食をベッドでとり、そのあとはずっと2人でゴロゴロしていた。
体調が大分回復し、夕食の時間になったので食堂に降りるとロロさんとラーフさんと一緒にハヤトさんもいた。
「ハヤトさん!ご飯食べに来たんですか?」
「ああ~いや、うーん⋯」
「イオ、ハヤトもこの宿を拠点にすることになったんですよ。」
「そうなんですね。嬉しいです。」
泊まる予定だと言っていた宿は空いていなかったのかな?夕食を食べながら話も弾む。
「ところでハヤトはうちのパーティに入る気はないか?」
とジークがハヤトさんに声をかける。
そうなれば嬉しいかもと思ったのだが、
「すみません、俺は臨時でパーティ入りするやり方が合っているみたいで⋯でも一緒に依頼は受けたいので、人数が必要なときに誘ってもらっても良いですか?」
「ああ、もちろん。」
ハヤトさんのように固定でパーティを組まない冒険者は一定数いるらしい。しかし大抵は訳ありだったり人嫌いだったりするので、ハヤトさんのように臨機応変に動ける人は貴重で、臨時でメンバーが欲しいパーティやギルドに必要な人材だという。
ちょっと残念だけど、一緒に依頼は受けてくれるというので良かった。すると相変わらずお酒をガブガブ飲みながらロロさんが思い出したように、
「あ、そうそうジークとイオはようやく最後までできたんだね。おめでとう。」
としれっと人前で話し始めたので飲んでいた果実水を吹き出しそうになった。俺はお酒を飲まないのでいつも果実水を注文する。色々な味があっていつか全種制覇したい。
いや、今はそんな話じゃなくて。
「なななんでそんなことわかるんですか!?」
「匂いでわかる。」
「匂い!?」
「あー、すまんイオ。鼻の良い獣人には体の関係があればすぐにわかるんだ。」
「ええ!?」
と驚いたのは俺ではなく、ハヤトさんだった。
「ちょっとロロ、バラさないで下さいよ。昼間は私を避けてバレてないと思っているハヤトを見るのが面白かったのに。」
「ええ!?」
この驚きは俺だ。
「よく言うよ。マーキングで獣人を牽制して、ピアスで他種族にアピールしちゃってさー。ハヤトって意外にニブちんだよねー。」
この話の流れで言ったらラーフさんとハヤトさんて⋯
「ふふ、イオ。私とハヤトは正式なパートナーですよ。いや、昨夜伴侶になりましたね。」
「ええ!?」
これはハヤトさん。
ん?何でハヤトさんが驚いてんの?
「ハヤト?」
「⋯他に相手を作らないセフレかと⋯」
突然空気が凍りついた。物理的に。コップの飲み物には薄い氷の膜が張り、食べ物には霜が降りていた。「ああ、すみません。」とラーフさんが手を一振りすると元の状態に戻り、食べ物は温かくなった。そして「私たちは部屋に戻りますね。」と言ってハヤトさんの首根っこを掴んで引きずっていった。
「えーっと。ジーク、ピアスって何か意味があるの?」
そう言えばハヤトさんは片耳に白いピアスを付けていた。お洒落だな~くらいに思っていたのだがファッションというわけでは無いのかもしれない。
「イオはマーキングについては知っているか?あれは獣人ならわかるが、他種族には通じない。だから人族が伴侶に自分の色の装飾品を身に着けさせる習慣を真似て、さらに贈る側が装飾品に魔力を纏わせることで匂い、魔力、見た目で牽制できるようになる。」
「なるほど。」
「ちなみに俺もイオにピアスを用意している。」
「そうなの!?」
「ドドソルニアに着いてすぐ職人に注文したんだが、素材が手に入らなくて時間がかかったんだ。」
「そうなんだ。そういうことなら俺も用意したいな。」
というわけでジークがピアスを注文した職人に俺からもピアスを注文することになった。どうやら「お揃い」という発想はなさそうだけど、俺がジークとお揃いにしたい。ちなみに装飾品の種類は指輪やブレスレットやチャームなど色々あるが、冒険者は無くしたり傷付けたりする場合が多いのでピアスが1番多いそうだ。
*************************
弟子入り期間ももうすぐ終わりだ。ついに俺の武器を造る工程に入った。
不純物を取り除いたアダマンタイト鉱石は淡い青色でとても綺麗だった。それを真っ赤になるまで熱し、金槌で叩く鍛錬の作業に入る。俺は少し離れたところからその様子をみる。シエロさんは工房にいるときは頭にタオルを巻いているので、普段は髪で隠れている緑色の瞳がよく見える。集中したシエロさんが〘速筋〙と呟く。
シエロさんの固有スキルの〘速筋〙は瞬間的に筋力を増幅させるもので、これによって硬すぎて加工が困難なアダマンタイトも扱うことができる。
どんどん短剣の形になっていくアダマンタイトは合間の「焼き入れ」作業のときに俺の魔力を流す。こうすることによって武器に俺の魔力を通しやすくなる。
数時間に及ぶ作業を終え、シエロさんも俺も汗だくでクタクタになった。
「あとは俺しかできない作業になるからキミはおしまい。鞘の色だけ選んでくれる?」
話をしながら店側の扉を開けると、お店はもう閉店していてロランが食事の準備のためにパタパタ走り回っていた。
「師匠、イオお疲れ!」
「美味しそうなご飯だね。ありがとう。」
「ロラン、魔力回復ポーションどこだっけ?」
「あ!師匠!勝手に引き出しイジらないで!」
ロランが用意してくれた食事はドドソルニアの食事にしては薄味で、バランスも考えられていて俺の味覚にとても合っている。
「イオの弟子期間は明後日までだろ?最終日はパーティしようよ。」
「いいの?何か用意しようか?」
「んじゃお肉を用意して欲しい。」
お肉は肉屋で買えばいいのかな。と思っていたら、冒険者はギルドでお店に卸す前の肉を購入できるらしい。明日買いに行ってみよう。
**************************
弟子入り期間最終日、ギルドに行ったら最高級の「牛頭人身」の肉をジークが買ってくれた。自分で買うと言ったが「これで俺もパーティに参加させてくれって交渉するからいいんだ。」と言ってロランに参加許可をもらっていた。
最終日の仕事は店番で締められた。これまでの店番で体験したことは、客のほとんどが冒険者だったので理不尽なことや乱暴な物言いをされたことだった。
現世でアルバイト経験がなかったので、今回接客に関わることで店側の苦労を知った。もしかしたらランクアップ試験に弟子入りの条件が入るのは職人への敬意を持つためなのかもしれない。
店を閉め、最後に工房に入る。シエロさんは黒色の鞘に納められた短剣を俺に渡した。鞘から抜いて観察する。淡い青色の刃は極限まで薄くされている。魔力を送ると抵抗なく馴染む。俺の手にしっくりとくる柄はさり気なく装飾も施されている。これは手先が器用なロランが彫ったと聞いた。
「短期弟子入りお疲れ様。イオ。」
最後に名前を呼んでくれた。感動していると「素材採取の護衛依頼は今後も受けてね。」と念押ししてきた。き⋯機会があれば⋯。
結局、あとから酒をお土産に持ってきたロロさんとラーフさんと、メンテナンスした武器を受け取りに来たハヤトさんも合流し、飲み会へとなだれ込んだ。シエロさんもドワーフなだけあって酒に強い。そしてこの世界ではお酒の年齢制限はないのでロランも飲んでいて、やっぱり強かった。ドワーフ半端ないな。
こうして俺の短期弟子入りは腕の良い鍛冶職人の元で無事終わらせることができた。
*******************************
・ハヤトは自己評価は低くない(むしろ自分の才能に自信有)のですが、見た目以外で評価されることがなかったので本性を見せた相手に愛されるわけがないと無意識に思っています。ラーフにわからセッされて自覚して下さい。
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雨の音がする。まどろみの中で意識を浮上させるといつものように背中からジークに抱き込まれていた。ただ、いつもと違うところは触れる感触が素肌だということだ。雨のせいで少し気温が低くなっていて温かな肌が心地よい。
体勢を変えようと身じろぐと体中の痛みに口から唸り声が漏れた。体中が筋肉痛だ。そして股関節、腰、お尻が痛い、痛すぎる。その痛みとともに夕べのことを思い出す。
何というか、想像以上にすごかった。何も知らない俺に不安を持たせないように使用する物、これからすることをジークが細かく説明してくれたのでまるで実地込みの保健の授業みたいだった。
ドドソルニアは大人のお店専用の職人もいるらしく、そのための道具が豊富らしい。感心したのは洗浄玉と呼ばれるビー玉くらいの大きさの道具だった。洗浄玉をお尻に入れると腸内洗浄され、体温で溶けるとローションになり更に性病予防効果もある。洗浄玉の種類は色々あり、これに避妊の効き目を施したものは娼館で使われ、弛緩効果があるものは初体験だったり、体格差のあるカップルに重宝されているらしい。
ジークは宣言通りゆっくりと進めてくれた。ゆっくりすぎて本番前にはヘトヘトになるくらいに時間をかけて進められ、体力も気力もごっそりと搾り取られた。
行為自体は正直苦しいだけだったが、多幸感が凄まじかった。ジークは何回かすれば快感を拾えるようになってくると言っていたが本当だろうか。
「起きたのか?」
頭上からジークの声が聞こえたので見上げると、見惚れるほどの美丈夫が柔らかな笑みを浮かべてこちらを見ていた。眩しい⋯。
顔はとても格好良いのに、掛け布団からはみ出た尻尾がブンブンと振られていて可愛いと思ってしまう。
「おはようジーク。」
「体は大丈夫か?」
「大丈夫ではない、全身痛い。」
「はは、悪い。途中から加減ができなかった。」
笑いながらジークは近くのテーブルから鞄を手繰り寄せた。俺もトイレに行きたくなったのでベッドから下りようとしたが、床にへたり込んでしまった。足に力が入らない。ラーフさんが言っていた「足腰立たなくなる」とはこのことか!
「イオ、ポーション飲んどけ。」
ジークは俺を抱き上げてベッドに戻し、手にポーションを持たせた。
「これ、高級ポーション!?怪我したわけじゃないから安いのでいいよ。」
「いや、最初はこっちの方が良い。俺とイオには魔力の差があるからな。」
魔力関係あるの?と思ったが、とりあえずポーションを飲んで立てるようになったのでトイレを済ませた。しかし高級ポーションを飲んだにも関わらず、体の怠さは取れない。
「以前寿命の異なる夫婦は寿命が長い方に引っ張られるという話をしただろ?」
「うん」
「あれは体を繋げることによってお互いの魔力が混ざって、それに付随して寿命が長い方に引っ張られるんだ。」
「そんな仕組みが⋯」
「だから魔力に差がある場合は馴染むまではどうしても少ない方が負担になる。体のダメージはポーションで治るけど、魔力過多による怠さや体の重みは慣れるしかないんだ。でもイオは思ったより平気そうだな。」
なるほど、だからラーフさんは俺が動けなくなる可能性があったから早々に関係を進めるなと言っていたのか。
「全く動けないわけではないけど、今日は休みだからゆっくりしていようかな。」
「世話は任せろ。」
ジークは機嫌良さげに俺の肩を抱いた。ちなみにこの間、2人して素っ裸である。さすがに恥ずかしくなってきたので服を着た。
いや、いそいそと服を着せようとしないで下さい。自分で着られます。耳を伏せてもダメです。
*************************
そう言えば夕食も取らずに行為に及んだのでお腹が空いた。今はまだ日は昇りきっていない朝だ。遅めの朝食をベッドでとり、そのあとはずっと2人でゴロゴロしていた。
体調が大分回復し、夕食の時間になったので食堂に降りるとロロさんとラーフさんと一緒にハヤトさんもいた。
「ハヤトさん!ご飯食べに来たんですか?」
「ああ~いや、うーん⋯」
「イオ、ハヤトもこの宿を拠点にすることになったんですよ。」
「そうなんですね。嬉しいです。」
泊まる予定だと言っていた宿は空いていなかったのかな?夕食を食べながら話も弾む。
「ところでハヤトはうちのパーティに入る気はないか?」
とジークがハヤトさんに声をかける。
そうなれば嬉しいかもと思ったのだが、
「すみません、俺は臨時でパーティ入りするやり方が合っているみたいで⋯でも一緒に依頼は受けたいので、人数が必要なときに誘ってもらっても良いですか?」
「ああ、もちろん。」
ハヤトさんのように固定でパーティを組まない冒険者は一定数いるらしい。しかし大抵は訳ありだったり人嫌いだったりするので、ハヤトさんのように臨機応変に動ける人は貴重で、臨時でメンバーが欲しいパーティやギルドに必要な人材だという。
ちょっと残念だけど、一緒に依頼は受けてくれるというので良かった。すると相変わらずお酒をガブガブ飲みながらロロさんが思い出したように、
「あ、そうそうジークとイオはようやく最後までできたんだね。おめでとう。」
としれっと人前で話し始めたので飲んでいた果実水を吹き出しそうになった。俺はお酒を飲まないのでいつも果実水を注文する。色々な味があっていつか全種制覇したい。
いや、今はそんな話じゃなくて。
「なななんでそんなことわかるんですか!?」
「匂いでわかる。」
「匂い!?」
「あー、すまんイオ。鼻の良い獣人には体の関係があればすぐにわかるんだ。」
「ええ!?」
と驚いたのは俺ではなく、ハヤトさんだった。
「ちょっとロロ、バラさないで下さいよ。昼間は私を避けてバレてないと思っているハヤトを見るのが面白かったのに。」
「ええ!?」
この驚きは俺だ。
「よく言うよ。マーキングで獣人を牽制して、ピアスで他種族にアピールしちゃってさー。ハヤトって意外にニブちんだよねー。」
この話の流れで言ったらラーフさんとハヤトさんて⋯
「ふふ、イオ。私とハヤトは正式なパートナーですよ。いや、昨夜伴侶になりましたね。」
「ええ!?」
これはハヤトさん。
ん?何でハヤトさんが驚いてんの?
「ハヤト?」
「⋯他に相手を作らないセフレかと⋯」
突然空気が凍りついた。物理的に。コップの飲み物には薄い氷の膜が張り、食べ物には霜が降りていた。「ああ、すみません。」とラーフさんが手を一振りすると元の状態に戻り、食べ物は温かくなった。そして「私たちは部屋に戻りますね。」と言ってハヤトさんの首根っこを掴んで引きずっていった。
「えーっと。ジーク、ピアスって何か意味があるの?」
そう言えばハヤトさんは片耳に白いピアスを付けていた。お洒落だな~くらいに思っていたのだがファッションというわけでは無いのかもしれない。
「イオはマーキングについては知っているか?あれは獣人ならわかるが、他種族には通じない。だから人族が伴侶に自分の色の装飾品を身に着けさせる習慣を真似て、さらに贈る側が装飾品に魔力を纏わせることで匂い、魔力、見た目で牽制できるようになる。」
「なるほど。」
「ちなみに俺もイオにピアスを用意している。」
「そうなの!?」
「ドドソルニアに着いてすぐ職人に注文したんだが、素材が手に入らなくて時間がかかったんだ。」
「そうなんだ。そういうことなら俺も用意したいな。」
というわけでジークがピアスを注文した職人に俺からもピアスを注文することになった。どうやら「お揃い」という発想はなさそうだけど、俺がジークとお揃いにしたい。ちなみに装飾品の種類は指輪やブレスレットやチャームなど色々あるが、冒険者は無くしたり傷付けたりする場合が多いのでピアスが1番多いそうだ。
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弟子入り期間ももうすぐ終わりだ。ついに俺の武器を造る工程に入った。
不純物を取り除いたアダマンタイト鉱石は淡い青色でとても綺麗だった。それを真っ赤になるまで熱し、金槌で叩く鍛錬の作業に入る。俺は少し離れたところからその様子をみる。シエロさんは工房にいるときは頭にタオルを巻いているので、普段は髪で隠れている緑色の瞳がよく見える。集中したシエロさんが〘速筋〙と呟く。
シエロさんの固有スキルの〘速筋〙は瞬間的に筋力を増幅させるもので、これによって硬すぎて加工が困難なアダマンタイトも扱うことができる。
どんどん短剣の形になっていくアダマンタイトは合間の「焼き入れ」作業のときに俺の魔力を流す。こうすることによって武器に俺の魔力を通しやすくなる。
数時間に及ぶ作業を終え、シエロさんも俺も汗だくでクタクタになった。
「あとは俺しかできない作業になるからキミはおしまい。鞘の色だけ選んでくれる?」
話をしながら店側の扉を開けると、お店はもう閉店していてロランが食事の準備のためにパタパタ走り回っていた。
「師匠、イオお疲れ!」
「美味しそうなご飯だね。ありがとう。」
「ロラン、魔力回復ポーションどこだっけ?」
「あ!師匠!勝手に引き出しイジらないで!」
ロランが用意してくれた食事はドドソルニアの食事にしては薄味で、バランスも考えられていて俺の味覚にとても合っている。
「イオの弟子期間は明後日までだろ?最終日はパーティしようよ。」
「いいの?何か用意しようか?」
「んじゃお肉を用意して欲しい。」
お肉は肉屋で買えばいいのかな。と思っていたら、冒険者はギルドでお店に卸す前の肉を購入できるらしい。明日買いに行ってみよう。
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弟子入り期間最終日、ギルドに行ったら最高級の「牛頭人身」の肉をジークが買ってくれた。自分で買うと言ったが「これで俺もパーティに参加させてくれって交渉するからいいんだ。」と言ってロランに参加許可をもらっていた。
最終日の仕事は店番で締められた。これまでの店番で体験したことは、客のほとんどが冒険者だったので理不尽なことや乱暴な物言いをされたことだった。
現世でアルバイト経験がなかったので、今回接客に関わることで店側の苦労を知った。もしかしたらランクアップ試験に弟子入りの条件が入るのは職人への敬意を持つためなのかもしれない。
店を閉め、最後に工房に入る。シエロさんは黒色の鞘に納められた短剣を俺に渡した。鞘から抜いて観察する。淡い青色の刃は極限まで薄くされている。魔力を送ると抵抗なく馴染む。俺の手にしっくりとくる柄はさり気なく装飾も施されている。これは手先が器用なロランが彫ったと聞いた。
「短期弟子入りお疲れ様。イオ。」
最後に名前を呼んでくれた。感動していると「素材採取の護衛依頼は今後も受けてね。」と念押ししてきた。き⋯機会があれば⋯。
結局、あとから酒をお土産に持ってきたロロさんとラーフさんと、メンテナンスした武器を受け取りに来たハヤトさんも合流し、飲み会へとなだれ込んだ。シエロさんもドワーフなだけあって酒に強い。そしてこの世界ではお酒の年齢制限はないのでロランも飲んでいて、やっぱり強かった。ドワーフ半端ないな。
こうして俺の短期弟子入りは腕の良い鍛冶職人の元で無事終わらせることができた。
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・ハヤトは自己評価は低くない(むしろ自分の才能に自信有)のですが、見た目以外で評価されることがなかったので本性を見せた相手に愛されるわけがないと無意識に思っています。ラーフにわからセッされて自覚して下さい。
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