異世界転移魔方陣をネットオークションで買って行ってみたら、日本に帰れなくなった件。

蛇崩 通

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第4章 王女救出作戦 <第一話 急報>

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  第4章第一話 急報
 夕食が始まって、すぐだった。
 毒薔薇姫が、ぼやいた。
 「こんなの、食べられない」
 半泣き顔で、言葉を続けた。
 「ゴールデン・ホテルのルームサービスが、いいわ」
 ゴールデン・ホテルは、王都で最も高級なホテルだ。最も安い部屋一泊の料金が、小金貨一枚、すなわち、日本円で十万円ほどだ。
 王都内で最も高級な料理を提供するのが、ゴールデン・ホテルの付属レストランだ。
 その付属レストランをしのぐ料理を提供できるのは、王宮の厨房だけだ。
 彼女の言葉を皮切りに、次々に文句を言い始めた。南校女生徒の半分ほどが。
 「まずいわ。まずすぎる」
 「パンが、かたいわ」
 「このパン、まずい」
 「このチーズ、おいしくない」
 「なに、この野菜スープ。貧乏人用なの?」
 「このソーセージ、なんの肉なの? 人間が食べても、だいじょうぶな肉なの?」
 南校女生徒たちの文句が、続いた。数分間も。
 そのときだった。
 一人の少女が立ち上がった。亜麻色の髪の美少女だ。小柄で、まだおさな面影おもかげだ。
 一喝いっかつした。南校の女生徒たちを。怒りの表情で。
 「今は、有事です!」
 彼女は通称、首席姫。北校の一年生だ。通称の由来は、北校の入学試験の順位が、一番だったからだ。
 そのうえ、三月末と六月末の定期試験の順位も、一位だった。
 ちなみに北校の学年暦は、一月開始で十二月終了だ。
 口を閉じた。首席姫の一言で。南校の女生徒たちが。
 首席姫が、言葉を続けた。
 「この食事は、パーティーの時の楽しむための食事ではありません。戦うために必要な栄養補給のための食事です」
 第十六砦内の大会議室。
 南校の女生徒約三十名、北校の女生徒約十名、それに、三大魔法剣姫とトッキロ。総勢で四十数名が、大会議室で夕食を開始したところだった。
 その日も、夕食の時間は早かった。午後六時前だ。
 今は真夏なので、日没が遅い。日が没するのは、夜七時過ぎだ。
 とはいえ、この異世界の文明レベルは低いため、夜間の照明はロウソクくらいしかない。
 そのため、日没前に夕食や入浴をすませるのが一般的だ。
 気まずい静寂が、流れた。大会議室に。数十秒間も。
 毒薔薇姫が、つぶやいた。うつむいて。
 「まずすぎるわ。こんなスープ、飲めない」
 本当に、まいっているようだった。毒薔薇姫は。
 まあ、しかたがない。つかれきっているのだ。
 あたりまえだ。
 昨日突然、徴兵された。
 昨日は、三キロメートルも歩いた。王都を守る城壁、通称、外壁の上を。東城壁の中央付近から、南城壁のほぼ中央にある第十六砦まで。
 昨日、八月十日、南校生徒の徴兵一日目。
 東城壁を襲った魔王軍部隊を殲滅せんめつしたあと、氷姫が守る南城壁第三十砦に救援に向かった。
 ちょうど、魔王軍のアース・ドラゴン第二波攻撃の最中だった。
 第二波攻撃のアース・ドラゴン四十匹を皆殺しにした。トッキロが。水魔法を応用した高圧水のウオーター・カッターで。
 その後、第三波攻撃のアース・ドラゴン三十匹も、皆殺しにした。
 アース・ドラゴンが、城壁外側の堀を渡り始めた段階で。ウオーター・カッターにより、心臓を切りいて。
 かかった時間は、たぶん五分間くらいだ。
 その直後、氷姫が主張した。有無を言わせぬ口調で。
 「第二十九砦の支援に向かおう」
 向かった。第二十九砦に。
 第二十九砦も、三十匹のアース・ドラゴンに襲われていた。
 撃退した。三十匹のアース・ドラゴンを。七分間から八分間くらいの時間で。
 すぐさま、第二十八砦に向かった。
 その後、次から次へと隣の砦の救援に向かった。南城壁の上を、東から西へと。
 魔王軍の第三波攻撃は、午後二時頃から始まった。
 一つの砦あたり七分間前後で救援し、すぐに隣の砦に移動した。
 砦と砦の間の距離は約百メートルなので、移動にかかる時間は、わずかだ。
 砦に群がっているアース・ドラゴンは、皆殺しにしなかったケースが多かった。
 理由は、砦屋上の中央付近にいるアース・ドラゴンは、砦の屋上に登らないかぎり、ウオーター・カッターでは角度的に倒せないからだ。
 午後四時の少し前に、第十六砦に到達した。
 第十六砦は、百匹のアース・ドラゴンに包囲されていた。
 砦の屋上では、炎姫が奮戦していた。
 砦の周囲に群がっていたアース・ドラゴン数十匹をウオーター・カッターで倒した。
 そのあと砦の屋上に登り、炎姫と連携して、残りのアース・ドラゴンを倒した。
 昨日一日で、五百数十匹のアース・ドラゴンを倒した。
 そして今日は、魔王の娘らと死闘を演じた。
 毒薔薇姫たちが疲れきるのは、あたりまえだ。
 そのときだった。沈黙を破った。大会議室に飛び込んできた伝令の兵士が。
 「急報! 急報! リリーシア王女殿下が、拉致されました! 魔族によって!」
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