異世界転移魔方陣をネットオークションで買って行ってみたら、日本に帰れなくなった件。

蛇崩 通

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第4章第十話 王女の使命

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  第4章第十話 王女の使命
 小声で呼んだ。トッキロが、テントの外にいる首席姫を。念のために、確認してもらうために。その甲冑姫騎士が、リリーシア王女であるか否かを。
 テント内に入ってきた。首席姫が。
 思わず、駆け寄った。首席姫が、姫騎士に。
 息を、のんだ。悲鳴をあげる直前に。
 「なんということを。おいたわしい」
 すぐさま首席姫が、甲冑姫騎士の猿轡さるぐつわを取り除いた。
 トッキロも、近寄って見た。リリーシア王女を。
 拷問されていた。上腕や太ももの皮膚を、炎で焼かれて。
 首席姫が、回復魔法をかけ始めた。
 だが、広範囲にわたる重度の火傷やけどだ。そう簡単には治癒ちゆしない。
 この異世界の回復魔法は、たいしたことはない。
 ヒーラーが、自分のマナを負傷者に送り込み、傷の回復を早める程度だ。
 戦場で切り傷を負って出血した負傷者に対しては、魔法で止血する。止血の方法は、負傷者が垂れ流している血液を乾燥させ、かさぶたにする。それにより、一時的に出血が止まる。
 魔法による止血は、単なる応急処置に過ぎない。だが、負傷者が出血多量で死ぬのを防ぐことは、できる。
 トッキロがナイフを取り出し、リリーシア王女を縛っているロープを切った。
 ちょうどその直後、氷姫が入ってきた。大型テント内に。
 「なんてむごいことを」
 絶句した。氷姫が。リリーシア王女の広範囲の火傷を見て。
 「おのれ、魔族どもめ」
 トッキロがテントの外にいる兵士たちに、小声で指示した。担架を持ってくるように、と。
 兵士二名が、リリーシア王女を担架に乗せようとした。
 はらった。兵士の手を。リリーシア王女が。
 立ち上がった。リリーシア王女が。ふらつきながらも。
 「わらわのことは、よい。それより、人質を助けよ」
 「人質?」
 思わず、聞き返した。氷姫が。
 「とらわれている。多くの人間が。魔族どもに」
 「王女殿下の救出が、先です」
 その首席姫の言葉を、すぐさま否定した。リリーシア王女が。
 「人質が先だ。無辜むこたみだ。それに、子どもたちも多い。早く救出しないと、喰われてしまう。魔族どもに。子どもたちが」
 「王女殿下が先です」
 「ダメだ。わらわよりも、子どもたちの救出が先だ」
 氷姫が、尋ねた。
 「その人質は、どのくらい、いるのですか?」
 「わからぬ」
 「千人ほどです。残りは」
 間髪入れずに、そう答えた。トッキロが。
 言葉を、続けた。
 「もうだいぶ、喰われましたので。残りの半数以上が、子どもたちです」
 「そんなに、いるのか。おのれ、魔族め」
 いきどおった。氷姫が。
 「人質は皆、農民たちです。王都の近隣農村から、拉致されました」
 トッキロのその説明に、尋ねた。氷姫が、驚いた表情で。
 「そなたはなぜ、そんなに詳しいのか?」
 「監視部隊の隊長に、聞きました」
 第十六砦の監視部隊の隊長に、教えてもらった。多数の農民が囚われていることを。
 囚われている農民たちの人数を、数えてもらった。大型望遠鏡を使って。
 最初は面倒がって、嫌がった。人数を数えるのを。
 だが、銀貨を三枚渡したら、部下に命じてくれた。人質たちの人数を数えるように、と。
 「私は聞いていないぞ。そんな報告」
 「残酷すぎる内容だから、報告をひかえたのでしょう。なにせ魔族どもは、毎日のように、拉致した農民たちを殺して喰っているのですから。豚のように丸焼きにしたり、バラバラにした遺体を、大鍋で煮込んだりして」
 絶句した。氷姫が。
 口を、はさんだ。首席姫が。
 「今は、王女殿下の脱出が優先です。農民なんかよりも」
 「バカ者!」
 叱責しっせきした。リリーシア王女が、首席姫を。
 「たみは、国の宝だ。ゆえに、民を守ること。それが、王族の使命なのだ」
 「しかし……」
 さえぎった。首席姫の言葉を。リリーシア王女が。
 「わらわは、動かぬぞ。人質を救出しないのなら」
 全員が、押し黙った。リリーシア王女の無茶な要求に。
 だが、トッキロが口を開いた。
 「王女殿下のおおせのままに。救出しましょう。千名の人質も」
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