異世界転移魔方陣をネットオークションで買って行ってみたら、日本に帰れなくなった件。

蛇崩 通

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第4章第九話 囚われの王女

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  第4章第九話 囚われの王女
 潜入部隊十六名が、大型テントの一つを包囲した。
 氷姫が、たずねた。トッキロに。小声で。
 「このテントに、リリーシア王女がとらわれているのか?」
 「間違いありません」
 理由は、二つある。
 一つ目は、第十六砦の監視部隊が、大型望遠鏡で監視し続けていた。午後七時過ぎに日が没するまで。
 この大型テントに、銀色の甲冑の姫騎士が、連れ込まれた。昨日の午後三時過ぎに。
 それ以降、何人もの魔族が、入れ替わり立ち替わり、このテント内に入った。
 その中には、片足の女魔族もいた。
 炎龍王女に違いない。
 理由の二つ目は、この大型テントの周囲には、十名も、見張りの魔族がいたことだ。
 見張りの魔族十名は全員、倒した。トッキロが。毒入りの水魔法で。
 ウオーター・アローよりも小規模な水魔法だ。
 それを、水の弾丸ウオーター・バレッドと名付けた。
 そのウオーター・バレッドを、魔族の心臓に撃ち込んだ。静かに背後から接近して。
 見張りの魔族たちは、テントのほうを向いていた。
 テント内に拘束されている王女が、逃げ出さないように、見張るためだ。
 そのため、トッキロは、見張りの魔族に、背後から接近することができた。
 痙攣けいれんして倒れた。見張りの魔族は。声も出せずに。毒入りの水を心臓に注入されて。
 次の瞬間、首を切り落とした。もう一つ形成しておいた水球を使って。ウオーター・カッターで。
 同じ方法で、次々に見張りを倒した。物音一つさせずに。大型テントの左側面の二名、後方の二名、右側面の二名、合計六名を。二名同時に。順々に。
 大型テントの正面に、まわった。音もなく。
 四発同時に、撃ち込んだ。ウオーター・バレッドを。見張りの魔族四名の心臓に。
 その直後、切り落とした。見張りの魔族四名の首を。次々に。
 まだ、魔族側は気づいていない。見張りの魔族十名が、倒されたことに。
 「まずは私が一人で入り、内部を確認します」
 氷姫にそう伝えたあと、トッキロは右手のつえで、大型テント正面の幕を、少しだけめくった。静かに。
 中を、のぞいた。
 大型テントの中は、広かった。
 中央に、がある。消えかけているが。
 しかし、その焚き火のあかりにより、テント内の中央付近は、よく見える。
 焚き火の手前に、見張りの魔族二名が、あぐらをかいて座り込んでいる。
 背中を、トッキロに向けて。
 二人とも、居眠りしているようだ。
 焚き火の向こう側に、白銀の甲冑をまとった姫騎士が横たわっている。
 縛られているようだ。
 それに、口もとは、猿轡さるぐつわふさがれている。
 魔法詠唱を、防ぐためだろう。
 静かに、近寄った。見張りの魔族の背後に。
 テニスボールくらいの水球を、空中浮遊させながら。
 一瞬だった。
 ごろりと、首が落ちた。見張りの魔族二名の首が。水平に放った一本のウオーター・カッターで。
 素早く、接近した。転がる魔族の首に。
 無詠唱で、ウオーター・バレッドを撃ち込んだ。魔族の頭部に。一発ずつ。転がる二つの頭部に。
 なぜなら魔族は、首を切り落とされても、即死しないからだ。
 だから、脳を破壊した。頭部に水の弾丸を撃ち込んで。仲間の助けを、呼べないように。
 目が、あった。甲冑の姫騎士と。
 彼女は猿ぐつわのため、なにも言葉を発せない。
 胴当てを、装着していなかった。彼女は。氷姫たちと同様に。
 つまり、ヘソ出しルックだ。
 身につけているのは、銀板を張った革製胸当てと、銀板付き革製ミニスカート。
 いや、正確には、銀ではない。金と銀の合金、ホワイトゴールドだ。
 両腕と両足には、籠手こて具足ぐそくを装着している。それらの防具は、革の上にホワイトゴールドの板を張ったものだ。
 両腕は、胴体ごと、ロープでグルグル巻きに縛られている。
 両足首も、縛られている。具足を装着した状態で。
 上体を起こした。縛られたままの状態で。
 横座りとなって、見つめた。真っ直ぐに。毅然きぜんとした表情で。トッキロのことを。
 その両目に、強い意志を感じた。
 間違いない。この少女に。
 「救出に、まいりました。リリーシア王女殿下」
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