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第16話 剣聖デンケル
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――叔父上……。一体、何が……。
「まあ、座れ。長旅疲れただろう」
リドールは黙って頷き、テーブルの丸椅子に腰掛けた。
「色々と、聞きたいこともあるだろうな」
デンケルは、肩掛けを羽織りながら言った。
「だが、まずこちらから聞かせてくれ。リド坊、何をしにこんな山奥まで来た? 物見遊山でもあるまい」
リドールは、魔族の襲来のこと、防護結界のこと、そして銀髪の一族のこと、包み隠さず説明した。
「私は、仲間と共に外界に出ます。そのためには、魔族に対抗し得る力が欲しいのです」
「なるほどな、それで魔法剣を、か……」
「リド坊、すまないが、俺は魔法剣を教えるつもりはない」
「なぜですか、叔父上? お身体がすぐれぬなら、私がお世話いたします。口頭でご指南いただけるだけでも有難いのですが……」
デンケルは、力なく首を振り言った。
「そうではないんだ、リド坊。魔法剣そのものが、体を蝕むんだ」
「……それはどういう……」
「魔法剣は、人に扱える代物ではない、ということだ」
デンケルは暖炉に薪をくべながら続けた。
「リド坊、お前はそもそも魔法剣について、どこまで理解している?」
「魔力によって、剣を顕現させる魔法である、と。現在使用できるのは、叔父上だけだと聞いています」
「少し訂正しようか。魔法剣は、魔力だけでなく己の生命力を消費する」
「え!?……それはまさか……」
「使用者の寿命を代償とするんだ」
リドールは言葉を失っていた。
デンケルは、静かに続けた。
「俺は、魔法剣の研究の過程でそのことに気がついた。いわゆる、禁呪の類の魔法体系だと。文献すらほとんど残っていないのは、そのためだろうな」
「リド坊、俺は兄上の大切な跡取りに、禁呪を教えるわけにはいかんよ。わかってくれ」
◇◆◇◆
日も落ちてしまったため、リドールはデンケルの山小屋で夜を明かし、明朝出発することにした。
夕食を終え、暖炉の前で叔父と甥は、王族としてではなく親族として、言葉を交わし合った。
おそらくこれが最後の機会になるのだろうとふたりとも思ってはいたが、口にはしなかった。
兄上には内緒だぞ、とデンケルは、ラウルスの子どもの頃の事なども話して聞かせた。
楽しいひとときを過ごし、ふたりは床についた。
しかし、リドールはなかなか寝つけなかった。
デンケルが穏やかな寝息を立て始めた頃、リドールは静かにベッドを抜け出し、表に出た。
頭上には、満天の星が煌めいていた。
リドールは地面に寝転がり、夜空を眺めた。
――叔父上は、何を思い、ここで研究を続けたのだろう……。
山小屋に戻ったリドールは、ふと本棚に置かれた古い冊子が目に入った。
リドールは、何気なくそれを手に取り、開いてみた。
そこには、デンケルの研究の記録が記されていた。
「まあ、座れ。長旅疲れただろう」
リドールは黙って頷き、テーブルの丸椅子に腰掛けた。
「色々と、聞きたいこともあるだろうな」
デンケルは、肩掛けを羽織りながら言った。
「だが、まずこちらから聞かせてくれ。リド坊、何をしにこんな山奥まで来た? 物見遊山でもあるまい」
リドールは、魔族の襲来のこと、防護結界のこと、そして銀髪の一族のこと、包み隠さず説明した。
「私は、仲間と共に外界に出ます。そのためには、魔族に対抗し得る力が欲しいのです」
「なるほどな、それで魔法剣を、か……」
「リド坊、すまないが、俺は魔法剣を教えるつもりはない」
「なぜですか、叔父上? お身体がすぐれぬなら、私がお世話いたします。口頭でご指南いただけるだけでも有難いのですが……」
デンケルは、力なく首を振り言った。
「そうではないんだ、リド坊。魔法剣そのものが、体を蝕むんだ」
「……それはどういう……」
「魔法剣は、人に扱える代物ではない、ということだ」
デンケルは暖炉に薪をくべながら続けた。
「リド坊、お前はそもそも魔法剣について、どこまで理解している?」
「魔力によって、剣を顕現させる魔法である、と。現在使用できるのは、叔父上だけだと聞いています」
「少し訂正しようか。魔法剣は、魔力だけでなく己の生命力を消費する」
「え!?……それはまさか……」
「使用者の寿命を代償とするんだ」
リドールは言葉を失っていた。
デンケルは、静かに続けた。
「俺は、魔法剣の研究の過程でそのことに気がついた。いわゆる、禁呪の類の魔法体系だと。文献すらほとんど残っていないのは、そのためだろうな」
「リド坊、俺は兄上の大切な跡取りに、禁呪を教えるわけにはいかんよ。わかってくれ」
◇◆◇◆
日も落ちてしまったため、リドールはデンケルの山小屋で夜を明かし、明朝出発することにした。
夕食を終え、暖炉の前で叔父と甥は、王族としてではなく親族として、言葉を交わし合った。
おそらくこれが最後の機会になるのだろうとふたりとも思ってはいたが、口にはしなかった。
兄上には内緒だぞ、とデンケルは、ラウルスの子どもの頃の事なども話して聞かせた。
楽しいひとときを過ごし、ふたりは床についた。
しかし、リドールはなかなか寝つけなかった。
デンケルが穏やかな寝息を立て始めた頃、リドールは静かにベッドを抜け出し、表に出た。
頭上には、満天の星が煌めいていた。
リドールは地面に寝転がり、夜空を眺めた。
――叔父上は、何を思い、ここで研究を続けたのだろう……。
山小屋に戻ったリドールは、ふと本棚に置かれた古い冊子が目に入った。
リドールは、何気なくそれを手に取り、開いてみた。
そこには、デンケルの研究の記録が記されていた。
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