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第17話 受け継がれる思い
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翌朝、リドールはデンケルよりも早く起きると、簡単な朝食の準備に取り掛かった。
ほどなく、デンケルが目を覚まし、杖をつきながら台所にやってきた。
「早いな、リド坊。出発の日に朝食まで、悪いな」
「おはようございます、叔父上。今日はお加減が良さそうですね」
「ああ、そうだな。昨晩は楽しかった。久しぶりによく寝られたよ。ありがとうな」
朝食の支度ができると、ふたりはテーブルを挟んで座った。
「叔父上、お願いがあります」
デンケルは、食事の手を止めてリドールを見た。
「やはり、私はここに留まり、魔法剣を学びたく思います」
「……その話は昨日済んだだろう?」
「叔父上、失礼ながら昨晩、手記を拝見いたしました」
デンケルは、黙ってリドールの話を聞いていた。
「残念ながら、読んだだけでは、魔法剣の詳細は理解できませんでした」
「……そうだろうな」
「しかし、ひとつ分かったことがあります」
リドールは、デンケルの目をまっすぐ見据えて言った。
「叔父上は、かなり早い段階で、魔法剣の行使には生命力の代償を伴うことを、気付いておられたのではないですか?」
「……」
「その上でなお研究を進めたのは、いつの日か王国のために、その力が必要になると考えてのことではないでしょうか」
「父上はよく、叔父上が無責任に王都を離れたとは考えられない、何か理由があってのことだろう、と言っておられました。私は正直、叔父上が身勝手に隠居されているとしか、思えませんでした」
「しかし、叔父上の手記を読んで分かりました」
「父上が正しかった。あなたは国を守るために、あえてひとりで……戦っておられたのですね……」
リドールは、泣いていた。
なぜもっと早くここを訪れなかったのか、自分が情けなく、どうしようもなく悔しかった。
長い沈黙が流れた。
デンケルは、大きく息を吐いて言った。
「しばらく見ない間に、大人になりやがって……」
そして、リドールの肩に、優しく手を置いた。
「もう少し、体がもってくれると思ったんだがな」
「叔父上、改めてお願いします。魔法剣を私に教えていただけませんか?」
「いや、しかし……お前の未来が……」
「私も、父上や叔父上と同じく、国の未来のために今を生きたいのです」
リドールは、しっかりとデンケルを見て言った。
「もしその未来に私がいなかったとしても、です」
デンケルは、しばらく無言でリドールの顔を見つめた。
そして、ふと表情を緩めて言った。
「……まったく、兄上の若い頃にそっくりだな……」
「え?」
「いや、何でもない」
デンケルは、目を閉じてしばらく思案した後、口を開いた。
「半年で、となるとかなり厳しい訓練になるぞ」
「……叔父上、それは……」
「それから、魔法剣の行使は最小限にしろ。いいな?」
「……はい!! ありがとうございます!」
ほどなく、デンケルが目を覚まし、杖をつきながら台所にやってきた。
「早いな、リド坊。出発の日に朝食まで、悪いな」
「おはようございます、叔父上。今日はお加減が良さそうですね」
「ああ、そうだな。昨晩は楽しかった。久しぶりによく寝られたよ。ありがとうな」
朝食の支度ができると、ふたりはテーブルを挟んで座った。
「叔父上、お願いがあります」
デンケルは、食事の手を止めてリドールを見た。
「やはり、私はここに留まり、魔法剣を学びたく思います」
「……その話は昨日済んだだろう?」
「叔父上、失礼ながら昨晩、手記を拝見いたしました」
デンケルは、黙ってリドールの話を聞いていた。
「残念ながら、読んだだけでは、魔法剣の詳細は理解できませんでした」
「……そうだろうな」
「しかし、ひとつ分かったことがあります」
リドールは、デンケルの目をまっすぐ見据えて言った。
「叔父上は、かなり早い段階で、魔法剣の行使には生命力の代償を伴うことを、気付いておられたのではないですか?」
「……」
「その上でなお研究を進めたのは、いつの日か王国のために、その力が必要になると考えてのことではないでしょうか」
「父上はよく、叔父上が無責任に王都を離れたとは考えられない、何か理由があってのことだろう、と言っておられました。私は正直、叔父上が身勝手に隠居されているとしか、思えませんでした」
「しかし、叔父上の手記を読んで分かりました」
「父上が正しかった。あなたは国を守るために、あえてひとりで……戦っておられたのですね……」
リドールは、泣いていた。
なぜもっと早くここを訪れなかったのか、自分が情けなく、どうしようもなく悔しかった。
長い沈黙が流れた。
デンケルは、大きく息を吐いて言った。
「しばらく見ない間に、大人になりやがって……」
そして、リドールの肩に、優しく手を置いた。
「もう少し、体がもってくれると思ったんだがな」
「叔父上、改めてお願いします。魔法剣を私に教えていただけませんか?」
「いや、しかし……お前の未来が……」
「私も、父上や叔父上と同じく、国の未来のために今を生きたいのです」
リドールは、しっかりとデンケルを見て言った。
「もしその未来に私がいなかったとしても、です」
デンケルは、しばらく無言でリドールの顔を見つめた。
そして、ふと表情を緩めて言った。
「……まったく、兄上の若い頃にそっくりだな……」
「え?」
「いや、何でもない」
デンケルは、目を閉じてしばらく思案した後、口を開いた。
「半年で、となるとかなり厳しい訓練になるぞ」
「……叔父上、それは……」
「それから、魔法剣の行使は最小限にしろ。いいな?」
「……はい!! ありがとうございます!」
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