13 / 190
何も残らない
しおりを挟む
「珀クン
田舎に帰って、何をするの?」
久美子が質問をすると、珀は答えに窮した。
高校を中退し、東京に出ると決めた日から、何があっても帰ってこないと誓っていた。
それは、レスラーになるため、不退転の決意を改めてした事は勿論、性同一性障害という誰にも知られていない、自身の悩みを抱えたまま地元に帰ってきた時、次はバレてしまうのではないかと考えていたからだった。
もし、レスラーがダメなら、誰も知り合いがいない東京で、カミングアウトする事なくニューハーフになるのもいいという考えが、ほんの少しだけ、頭をよぎっていたのだった。
だが、実際にレスラーになる夢が断たれてみると、未練が消えず、ニューハーフとして生きる勇気もなく…と、いう中途半端な思いに駆られていた。
それ故に久美子の質問に、何も答えられず、ただ沈黙する珀だったが…
「あの、友谷社長…
ミカさん…」
「ん、どうしたの?」
「すいません。
もう一度道場にお邪魔して、見学させていただいてもよろしいですか?」
「そんなの、勿論じゃない。
いつでも来て。」
久美子がそう言うと、ミカも笑顔で頷いた。
「いつ来る?
ウチらはいつでもいいわよ。今からでも。」
「あの、今日はまだバイトなので、よろしければ明日にでも。」
「明日は合同練習で全員朝から来てるから、何時でもいいわよ。」
「ありがとうございます。」
珀は、二人に深々と頭を下げた。
こうしてまた、ニューハーフプロレスを見学する事になった珀だったが、最初に行った時のように偏見に満ちた目ではなく、フラットな気持ちで見学したいと心から思うのだった。
田舎に帰って、何をするの?」
久美子が質問をすると、珀は答えに窮した。
高校を中退し、東京に出ると決めた日から、何があっても帰ってこないと誓っていた。
それは、レスラーになるため、不退転の決意を改めてした事は勿論、性同一性障害という誰にも知られていない、自身の悩みを抱えたまま地元に帰ってきた時、次はバレてしまうのではないかと考えていたからだった。
もし、レスラーがダメなら、誰も知り合いがいない東京で、カミングアウトする事なくニューハーフになるのもいいという考えが、ほんの少しだけ、頭をよぎっていたのだった。
だが、実際にレスラーになる夢が断たれてみると、未練が消えず、ニューハーフとして生きる勇気もなく…と、いう中途半端な思いに駆られていた。
それ故に久美子の質問に、何も答えられず、ただ沈黙する珀だったが…
「あの、友谷社長…
ミカさん…」
「ん、どうしたの?」
「すいません。
もう一度道場にお邪魔して、見学させていただいてもよろしいですか?」
「そんなの、勿論じゃない。
いつでも来て。」
久美子がそう言うと、ミカも笑顔で頷いた。
「いつ来る?
ウチらはいつでもいいわよ。今からでも。」
「あの、今日はまだバイトなので、よろしければ明日にでも。」
「明日は合同練習で全員朝から来てるから、何時でもいいわよ。」
「ありがとうございます。」
珀は、二人に深々と頭を下げた。
こうしてまた、ニューハーフプロレスを見学する事になった珀だったが、最初に行った時のように偏見に満ちた目ではなく、フラットな気持ちで見学したいと心から思うのだった。
3
あなたにおすすめの小説
世界の終わりにキミと
フロイライン
エッセイ・ノンフィクション
毎日を惰性で生きる桐野渚は、高級クラブの黒服を生業としていた。
そんなある日、驚くほどの美女ヒカルが入店してくる。
しかし、ヒカルは影のある女性で、彼女の見た目と内面のギャップに、いつしか桐野は惹かれていくが…
月弥総合病院
僕君☾☾
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。
また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。
(小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!
あなたの人生 高価買取します
フロイライン
ミステリー
社会の底辺の俺には、何の希望もない。日々を惰性で生きるだけのクズ人間だ。
そんな俺は、ある日、ふとした事から、人生をやり直すチャンスをもらうが…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる