64 / 190
本領発揮
しおりを挟む
ミカは、一瞬気を失ったが、すぐに我に返り、状況を把握した。
そして、体を回転させてリング下に降りると、首を左右に振りながら回復に努めた。
レフェリーがカウントを取る中、ミカは歩きながら、リング上の熊子を見上げた。
熊子は場外乱闘をするかと思いきや、手招きしてミカにリング上で勝負する事を求めたのだった。
実のところ、熊子は若干の焦りを感じていた。
ブックなしで自分の体重の半分しかない相手と対戦した事など一度もない。
こんな組み合わせもニューハーフプロレスならではの事だ。
しかし、実際に投げ技を出すと、異常な威力を示してしまい、さっきのバックドロップは、ミカが受け身を取り損なった事も相俟って、一瞬本当に殺してしまったかと思ったくらいの手応えがあった。
だが、なんとか事なきを得て、リング下で自分を見つめるミカの目が、まだ闘志に包まれている事を確認し、安心したのだった。
ミカは、リングに戻ろうとする際、太ももの辺りを触られ、視線をそのその方向に向けた。
「ミカちゃん…」
自分を泣きそうな顔で見つめているサオリの姿が目に入ってきた。
ミカは、サオリと目を合わせると、深く一度頷き、リングに戻っていった。
ミカの後ろ姿を見つめながら、サオリは団体の旗揚げに向けて切磋琢磨していた時のことを思い出していた。
「ウチのような団体は、イロモノとして扱われる事も多々あるだろうから、とんでもない相手と戦う事も覚悟してないといけない。」
コーチをする山本は、ミカ達にそのような話をよくしていた。
「先生、大きな相手と戦う場合、どういった戦法がいいんですか?」
ミカが質問すると、山本は
「そうだな。
先ず、デカい相手っていうのは、体重はもちろん、リーチ、筋力は比べものにならんくらいの差がある。
逆にミカのように小さい者は、俊敏さ、技を出したり動きの回転数が全く違う。
あとは、打撃技は組んだり投げたりする事に比べたらそこまでの差はない。
狙いはそこだろうな。」
「そうですね。
ワタシもそう考えてて、如恵留と理亜夢に空手を教えてもらってるんですけど。」
ミカがそう言うと、山本は、近くで練習をしていたサオリを指差して
「サオリのサンボも有効だよ。」
と、言った。
「サンボですか?」
「ああ。
関節は鍛えられない事もないが、完全に極めてしまえば、その効果は絶大だ。
サオリのお父さんはサンボはサンボでもコンバットサンボをマスターしていたんだ。
アレなんて相手を骨折させるための技ばっかりだからな。」
山本の言葉に、ミカの目が輝いた。
サオリは、熱い視線を感じ取り
「えっ、何?
怖い…」
と、気味悪がった。
そして、体を回転させてリング下に降りると、首を左右に振りながら回復に努めた。
レフェリーがカウントを取る中、ミカは歩きながら、リング上の熊子を見上げた。
熊子は場外乱闘をするかと思いきや、手招きしてミカにリング上で勝負する事を求めたのだった。
実のところ、熊子は若干の焦りを感じていた。
ブックなしで自分の体重の半分しかない相手と対戦した事など一度もない。
こんな組み合わせもニューハーフプロレスならではの事だ。
しかし、実際に投げ技を出すと、異常な威力を示してしまい、さっきのバックドロップは、ミカが受け身を取り損なった事も相俟って、一瞬本当に殺してしまったかと思ったくらいの手応えがあった。
だが、なんとか事なきを得て、リング下で自分を見つめるミカの目が、まだ闘志に包まれている事を確認し、安心したのだった。
ミカは、リングに戻ろうとする際、太ももの辺りを触られ、視線をそのその方向に向けた。
「ミカちゃん…」
自分を泣きそうな顔で見つめているサオリの姿が目に入ってきた。
ミカは、サオリと目を合わせると、深く一度頷き、リングに戻っていった。
ミカの後ろ姿を見つめながら、サオリは団体の旗揚げに向けて切磋琢磨していた時のことを思い出していた。
「ウチのような団体は、イロモノとして扱われる事も多々あるだろうから、とんでもない相手と戦う事も覚悟してないといけない。」
コーチをする山本は、ミカ達にそのような話をよくしていた。
「先生、大きな相手と戦う場合、どういった戦法がいいんですか?」
ミカが質問すると、山本は
「そうだな。
先ず、デカい相手っていうのは、体重はもちろん、リーチ、筋力は比べものにならんくらいの差がある。
逆にミカのように小さい者は、俊敏さ、技を出したり動きの回転数が全く違う。
あとは、打撃技は組んだり投げたりする事に比べたらそこまでの差はない。
狙いはそこだろうな。」
「そうですね。
ワタシもそう考えてて、如恵留と理亜夢に空手を教えてもらってるんですけど。」
ミカがそう言うと、山本は、近くで練習をしていたサオリを指差して
「サオリのサンボも有効だよ。」
と、言った。
「サンボですか?」
「ああ。
関節は鍛えられない事もないが、完全に極めてしまえば、その効果は絶大だ。
サオリのお父さんはサンボはサンボでもコンバットサンボをマスターしていたんだ。
アレなんて相手を骨折させるための技ばっかりだからな。」
山本の言葉に、ミカの目が輝いた。
サオリは、熱い視線を感じ取り
「えっ、何?
怖い…」
と、気味悪がった。
3
あなたにおすすめの小説
世界の終わりにキミと
フロイライン
エッセイ・ノンフィクション
毎日を惰性で生きる桐野渚は、高級クラブの黒服を生業としていた。
そんなある日、驚くほどの美女ヒカルが入店してくる。
しかし、ヒカルは影のある女性で、彼女の見た目と内面のギャップに、いつしか桐野は惹かれていくが…
月弥総合病院
僕君☾☾
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。
また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。
(小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!
あなたの人生 高価買取します
フロイライン
ミステリー
社会の底辺の俺には、何の希望もない。日々を惰性で生きるだけのクズ人間だ。
そんな俺は、ある日、ふとした事から、人生をやり直すチャンスをもらうが…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる