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フロイライン

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Lesson1

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「なっちゃん
西川課長、何て?」


香菜子は少しイラついた口調で、事務員の福井菜摘に質問した。


「土曜日から咳が止まらなかったそうで、今朝熱を測ったら38℃あったそうです。」


「そう…

ありがとう」


香菜子はそう言うと、事務所から出ていった。



そして、廊下を挟んで向かい側にある社長室を訪れた香菜子は、ドアをノックすると、扉を開け、一礼して中に入った。

部屋の中で、新聞に目を通していた社長の田中は、新聞から目を外し、香菜子の姿を確認すると

「おはよう、山本部長」

と、言った。


「おはようございます。」

香菜子は再度一礼した。


「どうした?
何かあったのか」


「はい。
西川課長が発熱で、しばらく会社に来れないと連絡がありました。」   


「そうか。

あ、今日はコサインに行ってプレゼンするんじゃなかったっけ?」


「そうなんです。」


「まいったなあ

西川君が担当してたんだろ」


「はい。

私も元々同行するつもりでいましたし、資料は全て共有していますので、私一人で大丈夫です。」


「そうか。
すまんなあ…

だが、一人で行くのもアレだろう。
向こうからしたら、?ってならないか。

うん、誰か一緒に連れていけばいい。」


「いえ。
今日はみんな例のイベントで、不在です。

西川課長と私だけはプレゼンに行かなければなりませんでしたので、会社に出勤しましたが…」


「うーん。

あっ、だったら新人を連れて行きなさい。

荷物持ちくらいにはなるだろう。」


「新人…ですか」


「そう。
新開君ならガタイもいいし、見た目も爽やかだし、美人の山本君の横に立っててもサマになるよ。」


「いえ、私は…」


香菜子は顔を赤くして俯いた。

恥ずかしかったからではない。
いまだにルッキズムなど、世で言われるハラスメント行為に疎いこの会社の空気に憤りを感じたからである。

社長からして、ダメダメだが、そんなに大きくない会社はみんなこんなものかと、半ば諦めながら、社長室を後にする香菜子だった。
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