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フロイライン

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Lesson2

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山本香菜子は大学を卒業し、新卒でこのグロウスター社に入社してから、この四月で丸二十三年が経過した。

四月生まれの香菜子は今月四十六歳になった。
さすがにこの歳になると、四月生まれってのはキツイと思う今日この頃…

そんな思いに包まれるのは、香菜子が独身の仕事人間だからだ。

決して容姿が悪いわけではなく、むしろ美人の部類に入るルックスをしていた。
結婚も出産もしていない分、同年代の友人に比べると若々しく、知らない人が見たら同い年には見えないと、誰もが口を揃えて言った。
だが、いくら美人であっても結婚というのは縁であり、タイミングである。
あとはその人から出る雰囲気、空気感みたいなものが大切だ。
香菜子の場合、男に負けまいと仕事に没頭するあまり、変なオーラが出てしまい、周りの男達は皆敬遠してしまった。

香菜子もそんな事は二十代の頃はあまり気にしておらず、意識もしなかった。

三十を過ぎると、同級生達は、みんな結婚して子供を産み、専業主婦になる者が増えてきた。
ようやく焦りを感じ始めた香菜子は、婚活に乗り出し、婚活パーティーや結婚相談所にも足を運ぶようになったが、何故か上手く行かなかった。
それどころか、そういうところに通う男達がバカに見えて、自分もその同類かと思うと虫唾が走ったのだった。

そして、四十を過ぎると、既に結婚願望も消失し、再び仕事に人生を捧げる事を誓ったのだ。

こんな人生をつまらないという者がいたら、別にかまわない。
言わせとけばいい

達観してしまった香菜子に、もう怖いものはなかった。

そう、この日までは…




「新開君
おはよう」

香菜子は三週間前に入社したばかりの新開優斗に声をかけた。


「おはようございます」

いつも自分に見向きもしない香菜子がわざわざ声をかけてきた事に、優斗は少し怪訝な表情を浮かべた。


「新開君
今日ね西川課長がお休みなの。

悪いけど、午後からちょっと付き合ってくれるかな。」


「えっ、どこ行くんすか」


「得意先へのプレゼンでね。

説明とかは全部、私がするから、あなたは、アシスタントとして付いてきて欲しいの。」


香菜子は入社して間もない若者のやる気を削いではならないと、優しげな口調で言った。

しかし、優斗は

「えっ、行かなきゃなんないんすか?

自分、まだ新人ですし行きたくありません」

と、ダルそうな表情で香菜子に言った。
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