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潜在能力
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「木本監督」
まどかの動きを食い入るように見つめる木本に、校長の佐藤が背後から声をかけた。
「あっ、校長先生」
「もうお加減はよろしいのですか?」
「ええ。おかげさまで
大変ご迷惑をおかけしました。」
「いやあ、新田さんは調子が良いようですね。
素人の私でもわかります。」
「ええ。
私が休んでる間に何かあったんですかね
見違えるようです。」
「木本監督、少しお時間をいただけますか」
佐藤が小さな声で言うと、木本も少し怪訝な顔をしながらも承知して、校長室について行った。
木本が校長室に入ると、例の如く高山がおり、見知らぬ男の同席に、彼女のその不信感はさらに増長した。
「早速ですが
木本監督、あなたが休んでいた間にあった事を少しお話しておこうと思いましてね。」
佐藤は着座するとすぐに本題に入った。
「どうしたんですか?」
「あー、すみません
ご紹介するのを忘れていました。
こちらはウチの大学から来ていただいた高山教授です。
高山先生、そして、こちらがバレー部監督の木本さんです。」
「高山です。
よろしくお願いします」
「木本です。
こちらこそよろしくお願いします。」
「ご紹介が済んだところで本題に入りたいと思いますが、ここからは高山先生にご説明いただいた方が良いかと思います。」
佐藤から言葉を引き取り、高山が説明を始めた。
そう、まどかに使用したあのクスリのことを
「えっ、そんなのダメに決まってるじゃないですか!」
木本も、当初のまどか同様、高山の話を真っ向から否定した。
「たしかに、そう思われるのは仕方ありません。
ですが、最初はあなたと同じように否定的だった新田さんも、最終的には私の話を理解して承諾してくれたんですよ。」
ここで佐藤も入ってきた。
「木本監督
あなたがプロを引退して我が校の監督に就任してくれてから、ウチのバレー部は飛躍的に強くなりました。
しかし、五年近く経過しても結局は紅陽の壁は乗り越えられなかった。
新田さんは十年に一人の逸材です。
彼女が三年になった今年がラストチャンスです。
今年無理なら、多分、我が校が全国へ行く事など二度と出来ないのではないでしょうか。」
「ええ、新田まどかは校長先生がおっしゃられたように十年に一人の逸材だと私も思います。
そんな訳の分からない薬を使わなくても、本来の実力だけで十分に戦えます。」
「ほう、紅陽にもですか?」
「もちろんです。」
「新田さんが十年に一人の逸材ならば、紅陽の古川選手は五十年に一人の天才です。
私にはとてもじゃないが彼女擁する紅陽にウチが勝てるとは思えないんですよ。」
「バレーボールは団体競技です。
一人だけが秀でていても意味がありません。」
「それでは、木本監督は新田さん以外のメンバーが紅陽の古川さん以外のメンバーよりも上だと言われるんですね。」
「それは…」
交わる事のない討論は、木本の完敗で終わった。
まどかの動きを食い入るように見つめる木本に、校長の佐藤が背後から声をかけた。
「あっ、校長先生」
「もうお加減はよろしいのですか?」
「ええ。おかげさまで
大変ご迷惑をおかけしました。」
「いやあ、新田さんは調子が良いようですね。
素人の私でもわかります。」
「ええ。
私が休んでる間に何かあったんですかね
見違えるようです。」
「木本監督、少しお時間をいただけますか」
佐藤が小さな声で言うと、木本も少し怪訝な顔をしながらも承知して、校長室について行った。
木本が校長室に入ると、例の如く高山がおり、見知らぬ男の同席に、彼女のその不信感はさらに増長した。
「早速ですが
木本監督、あなたが休んでいた間にあった事を少しお話しておこうと思いましてね。」
佐藤は着座するとすぐに本題に入った。
「どうしたんですか?」
「あー、すみません
ご紹介するのを忘れていました。
こちらはウチの大学から来ていただいた高山教授です。
高山先生、そして、こちらがバレー部監督の木本さんです。」
「高山です。
よろしくお願いします」
「木本です。
こちらこそよろしくお願いします。」
「ご紹介が済んだところで本題に入りたいと思いますが、ここからは高山先生にご説明いただいた方が良いかと思います。」
佐藤から言葉を引き取り、高山が説明を始めた。
そう、まどかに使用したあのクスリのことを
「えっ、そんなのダメに決まってるじゃないですか!」
木本も、当初のまどか同様、高山の話を真っ向から否定した。
「たしかに、そう思われるのは仕方ありません。
ですが、最初はあなたと同じように否定的だった新田さんも、最終的には私の話を理解して承諾してくれたんですよ。」
ここで佐藤も入ってきた。
「木本監督
あなたがプロを引退して我が校の監督に就任してくれてから、ウチのバレー部は飛躍的に強くなりました。
しかし、五年近く経過しても結局は紅陽の壁は乗り越えられなかった。
新田さんは十年に一人の逸材です。
彼女が三年になった今年がラストチャンスです。
今年無理なら、多分、我が校が全国へ行く事など二度と出来ないのではないでしょうか。」
「ええ、新田まどかは校長先生がおっしゃられたように十年に一人の逸材だと私も思います。
そんな訳の分からない薬を使わなくても、本来の実力だけで十分に戦えます。」
「ほう、紅陽にもですか?」
「もちろんです。」
「新田さんが十年に一人の逸材ならば、紅陽の古川選手は五十年に一人の天才です。
私にはとてもじゃないが彼女擁する紅陽にウチが勝てるとは思えないんですよ。」
「バレーボールは団体競技です。
一人だけが秀でていても意味がありません。」
「それでは、木本監督は新田さん以外のメンバーが紅陽の古川さん以外のメンバーよりも上だと言われるんですね。」
「それは…」
交わる事のない討論は、木本の完敗で終わった。
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