鐘ヶ岡学園女子バレー部の秘密

もう一つの青春

古川恵美梨は、部員全員の前で号泣し、自分の不甲斐なさを恥じた。

そして、明日の決勝に向けて、強い意志を示した。


「みんな…

準決は、本当にごめんなさい…

足を引っ張ってばかりで…

決勝は、命を賭けてやるつもりなので、どうかよろしくお願いします。」

だが、キャプテンの磯畑華菜は、恵美梨の言葉の途中で引き取った。



「恵美梨、これがフツーのバレー部の姿よ。


バレーボールは団体競技で、個人の力はもちろん必要だけど、本当に大切なのはチームワークよ。

これまでは、あなたの個人の卓越した能力に頼り切って、私ら全員が甘えた部分てのがあったんだけど、準決でアンタの不調をみんなでフォローして、初めて一つになれた気がしたわ。」


「華菜…」


「これがあるべき姿であると思う。

明日の決勝で、恵美梨が復調して、さらに、私らがチームワークを発揮できたなら、もう何も怖いものはないわ。

だから、それぞれが明日の決勝で自分に出来ることをきっちり行い、ベストを尽くす。


いいわね？」



「はいっ！」


恵美梨も皆と同様に、大きな声で返事をした。



心なしか、準決勝の時に比べて体も軽くなっているような気がした恵美梨は、決勝に向け、闘志を燃やした。



両校の生徒、周りの大人達のそれぞれの思いを交錯させながら、ついに決勝の日を迎えた。


お互いにもう何も怖いものはない。


ただ、目の前の敵を倒す。







そして、ついに決勝が始まった…



ネット越しに睨み合う両校のメンバー達の頭上を、紅陽がサーブしたボールが通過していった。