鐘ヶ岡学園女子バレー部の秘密

奇跡への軌跡

「ホラっ

第一セットをウチが取りましたよ。」



高山の言葉に、佐藤は緊張しながら頷いた。


「25-23ですがね…」


薄氷を踏む先取であったが、1セットをもぎ取った事には変わりなく、波に乗る鐘ヶ岡、焦る紅陽という構図は、皆が予想する通りだった。


「新田さんの調子は本当に良いようですね。

脅威の決定率ですよ。」


「ですが、素人目に見ても、古川選手が、このセットの中でも徐々に復調している事がハッキリわかります。

これは、脅威ですよ、本当に。」


佐藤は、楽観的な高山を窘めるように言った。


紅葉ベンチも、佐藤と同じ見立てでいた。


監督の藤井は、まだまだ本調子ではない恵美梨に、手応えを感じていた。


「準決よりかなりいい。

しかも。試合の中でどんどん復調していってる。

このセットから、反撃だ。」


藤井の言葉通り、恵美梨のスパイクが完璧に決まり始めた。
そうなると、鐘ヶ岡のメンバーでは、ブロックする事も、拾う事もできず、相手側にボールがあるときには、ほぼ諦めなければならなかった。


しかし、まどかもまた自分に上げられたボールは、完璧に決め、このセットもまさに、一進一退の展開となった。