「貴女じゃ彼に不釣りあいだから別れて」と言われたので別れたのですが、呪われた上に子供まで出来てて一大事です!?

綾織季蝶

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1話

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 数カ月後、カナリアは禁断の森の自宅のソファで手紙を読んでいた。
 時折診察のため父親が来るが基本は穏やかな一人暮らしを送っていた。

「サリナ、王子様とお友達になったんだ…」


 手紙には愛娘から送られてきた学校での日々が綴られていた。
 何でも入学式初日に文句をつけられ決闘を申し込まれ、見事勝利したとのこと。
 それから交流を重ね、今では良き学友として日々競ってるらしい。

「あんなに小さかった子が、王子様とお友達になるなんてね~」

 しみじみと感動しているカナリアだが、手紙の最後に書かれていた言葉を見て「ん?」となってしまう。

『追伸、お母さんに会わせたい人がいるから近々帰るね』

「会わせたい人…?お友達でも連れてくるのかな?」

 カナリアはソファから立ち上がるとキッチンへ向かい、戸棚を漁り始める。

「う~ん。王子様をもてなすにはあんまり材料無いな…。今度父さんに買ってきてもらうか」

 などと考えていたカナリアは知らなかった。
 娘が連れてくるのが友達ではないことに。


 数日後、サリナが禁断の森へ帰ってくる日になった。
 カナリアは彼女の好物であるパウンドケーキを作って帰りを待っていた。

「そろそろ帰ってくるだろうけど…」

 カナリアは鏡の前で自身の姿を念入りに確認する。
 包帯やガーゼまみれでとても怪我人にしか見えない姿であるが、鱗は全て隠されていた。

 コンコンッ

「お母さーん、ただいまー」
「あ、はーい」

 玄関先から声がして、カナリアは急いで玄関へ向う。

「おかえりなさい、サリ…」
「お母さん、会わせたかった人連れてきたよ」
「久しぶりだな、カナリア」

 ガチャリと扉を開き、カナリアは硬直する。
 そこにいたのは愛する娘と、かつて愛した男の姿があったのだ。

「っ!」

 カナリアは急いで扉を閉めようとするが、男に、ロナルドにそれを阻止される。

「16年ぶりの再会なのに酷いじゃないか」
「私は!会いたくなかった!」
「俺は会いたかった」
「っ!」

 なんの恥ずかしげもなく言うロナルドに戸惑いの色を見せるカナリア。

「それにそのガーゼに包帯はどうした?怪我でもしたのか、お前の父は何をしている」
「か、関係ないでしょ!」

 ギリギリと扉を引っ張り合う2人。
 そんな2人を見てサリナはため息1つ付き、2人に手を向ける。

「“時よ、戸惑え”」

 そう言うと2人の時は魔法によって、まるでスローモーションの様になる。
 突然動きが遅くなったことに戸惑う2人は手にしていた扉から力が抜ける。
 その隙を見てサリナは扉を開き、ロナルドの背中を押し中へ押し込む。

「え、ちょ!?」

 カナリアはサリナの魔法が解け、バランスを崩し更にロナルドが彼女を押し倒すような格好になってしまう。

「あとはごゆっくり~」
「ちょ、サリナ!?」

 サリナはそう言うと扉を素早く閉め、ガチャッと外から鍵をかける。
 ロナルドに押し倒される形になってるカナリアは深呼吸し、口を開く。

「どいて、くれる?」
「断る」

 ロナルドは間を空けずに言うとそのままカナリアを抱きしめる。

「え、あの」
「カナリア、あぁ、本物なんだな…」

 彼の腕の力は徐々に籠っていく。
 だんだんと苦しくなり、カナリアはバシバシと彼の腕を叩く。

「ちょっと!所帯持ちがこんな事していいの!?」
「所帯持ち?何のことだ。俺は独身だぞ」
「えっ、ローゼン男爵令嬢とお見合いしてくっついたんじゃないの!?」
「お前以外娶る気はない」
「え、えぇ?」

 困惑の色を見せるカナリアに、ロナルドはため息を付き自身の頭をガシガシかく。

「どうやら、情報のすれ違いがあるようだな。まずはそれらをすり合わせしよう。その上で、色々問いたい」
「あ、うん。あ、そうだ、パウンドケーキあるんだ。サリナの好物なんだけど…食べる?」
「……頂こう」

 16年ぶりの再会は、なんとも言えない空気になっていた。
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