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2話
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「貴様に決闘を申し込む!!」
「え、唐突に何」
数ヶ月前、入学式初日の魔力測定後、突然サリナは告げられた。
相手は茶髪に緑目の小柄な青年で、何処か偉そうな雰囲気を持っていた。
「アルト殿下、おやめください!庶民に決闘を申し込むなど…」
「うるさい!こうでもしないと僕の気が収まらないんだ!!」
「アルト…って、王子様じゃん」
世間に疎いサリナでもその名に聞き覚えがあった。
魔法に長けた第三王子、それがアルト・エーデルスだ。
「知っているなら話が早い!僕と決闘しろ!ハイ以外の返答は許可しない!」
「……」
なんのメリットもない申し出にどうしたものか悩んだサリナは、ふとアルトの隣にいた、先ほどまで彼を止めてた側近らしき男を見る。
もう諦め気味の顔をしており、「お相手お願いします」と言いたげな動作をしていた。
「…分かった、やろう。その代わり、私が勝ったら言う事1つ聞いてよね」
「ふん!貴様が勝つことなど到底あるまい!」
そう言いながら2人はギャラリーに囲まれながら中庭に向かった。
「ルールは簡単。どちらかが戦闘不能になったら負けだ」
「シンプルだね。結構好きだよ、そういうの」
中庭にて、2人は対峙する。
周りがギャラリーに囲まれてる中、中央辺りでは先ほどまでアルトの側にいた男が立っていた。
「それでは…始め!」
男がそう告げると同時にアルトは手を前に突き出す。
「“氷よ!凍てつけ!!”」
そう言うと彼の周りに氷の柱が無数に出来、それが一斉にサリナへ向かう。
「流石に躱せまい!」
(氷…水属性か。確かにすごい量だ。けど…)
サリナは静かに手を前に突き出し、口を開く。
「“時よ、遡れ”」
そう言うと氷は反応するように震え、徐々に輪郭を失い、水へ変貌した。
「な!?」
「冷たっ!」
水になった氷はサリナに当たるがただそれだけで、全くダメージがなかった。
「時を操る魔法だと!?そんな高度な魔法、貴様がなぜ!?」
「次はこっちから行くよ~。“時よ、巻き戻せ”」
サリナの言葉に先ほど氷だった水が反応する。
水は地面から宙に浮き、徐々に輪郭を帯び氷の柱へ変貌した。
「な!?僕魔法を…!?」
「お返ししま…すっ!」
サリナが手を振り下ろすと、氷の柱は凄まじい勢いでアルトへ向かう。
アルトは間一髪の所で交わすがギリギリだったのか、頬に一筋の切傷が出来てしまう。
「この!調子に乗って…って、何処に行った!?」
「ここだよ」
前を見たアルトの視界にはサリナは居なく、一瞬戸惑うが声がする方を向けばすぐ真横にサリナがいた。
「なっ」
サリナはアルトの首根っこを掴み思いっきり振り返り、そして…。
「どっ…せい!!」
アルトの身体はその言葉と同時に宙を舞い、地面へと叩きつけられたのだった。
「私、魔法より体術の方が得意なの」
「頭は冷えましたか。アルト殿下」
「少しだけな…」
医務室のベッドの上でアルトは不貞腐れながら答える。
あの一戦のあとアルトは気を失ってしまい敗北、医務室へ運び込まれる事態になった。
「私が思いますに、彼女は中々手練れでしたね」
「そんなの、身をもって経験した…所であいつは?」
「教師に呼び出しされて席を外しました。何でも校則に則った決闘以外はご法度だとか…」
「後で貴方も怒られますよ」と言われ、アルトは何も言えなかった。
ガチャ
「あ、起きてる」
「貴様」
医務室のドアが開くとそこにはサリナが立っていた。
若干疲れの色が見えるが、至って平気そうだった。
「では、私はこれで。殿下、お話したいことがあるのでしょ?私は席を外しますので、存分に話されては?」
「うぐ…」
側近の男はそう言うとまっすぐドアへ向かい、退出する。
「で?話って何?」
サリナはベッドの側においてあった椅子に腰掛け、アルトを見る。
「…望みは何だ」
「はい?」
「だから!望みは何だと聞いている!金か!?宝石か!?ドレスか!?」
「…あぁ!決闘の報酬の話ね!」
「貴様、忘れていたのか!?」
「先生に怒られてすっかり頭から抜け落ちてたよ」
「あははっ」と笑うサリナに、アルトは呆れて物も言えなくなる。
「しかし、望みか………あ、じゃあさ」
サリナはスッとアルトに手を差し出す。
「友達になってよ」
「は?」
「だから、友達!私友達に憧れてたんだ~。ずっと森育ちだったから同じ年の友達に憧れてて」
ズイッと更にサリナは手を突き出す。
それに対してアルトは、何か言いたげな、何処かむず痒い様な仕草をして…。
「き、貴様がそこまで言うのであれば、なってやらなくもない!」
それに怖気づいているのか、アルトは恐る恐るというように手を伸ばす。
そして握手が交わされるとサリナは「あ」と声を上げる。
「私、“貴様”じゃなくてサリナだから!サリナ・スタインベック!」
「スタインベック…あの人と同じ家名だな」
「あの人?」
「僕の敬愛する方だ。実力、品行方正、人間性、おまけに蛇語を理解する知性…全てにおいて尊敬するに値する」
「ん?蛇語を理解する…しかも、スタインベック…。ねぇ、その人さ」
「ん?」
「カナリア・スタインベック?」
「!知っているのか!?自然管理科の大臣であるあの人を!」
「知ってるも何も………私のお母さん」
「は?」
「お母さん、です」
「……は!?」
「カナリア・スタインベックの娘!!!!!!?」
側近曰く、学校中に聞こえるような絶叫だったと言う。
「え、唐突に何」
数ヶ月前、入学式初日の魔力測定後、突然サリナは告げられた。
相手は茶髪に緑目の小柄な青年で、何処か偉そうな雰囲気を持っていた。
「アルト殿下、おやめください!庶民に決闘を申し込むなど…」
「うるさい!こうでもしないと僕の気が収まらないんだ!!」
「アルト…って、王子様じゃん」
世間に疎いサリナでもその名に聞き覚えがあった。
魔法に長けた第三王子、それがアルト・エーデルスだ。
「知っているなら話が早い!僕と決闘しろ!ハイ以外の返答は許可しない!」
「……」
なんのメリットもない申し出にどうしたものか悩んだサリナは、ふとアルトの隣にいた、先ほどまで彼を止めてた側近らしき男を見る。
もう諦め気味の顔をしており、「お相手お願いします」と言いたげな動作をしていた。
「…分かった、やろう。その代わり、私が勝ったら言う事1つ聞いてよね」
「ふん!貴様が勝つことなど到底あるまい!」
そう言いながら2人はギャラリーに囲まれながら中庭に向かった。
「ルールは簡単。どちらかが戦闘不能になったら負けだ」
「シンプルだね。結構好きだよ、そういうの」
中庭にて、2人は対峙する。
周りがギャラリーに囲まれてる中、中央辺りでは先ほどまでアルトの側にいた男が立っていた。
「それでは…始め!」
男がそう告げると同時にアルトは手を前に突き出す。
「“氷よ!凍てつけ!!”」
そう言うと彼の周りに氷の柱が無数に出来、それが一斉にサリナへ向かう。
「流石に躱せまい!」
(氷…水属性か。確かにすごい量だ。けど…)
サリナは静かに手を前に突き出し、口を開く。
「“時よ、遡れ”」
そう言うと氷は反応するように震え、徐々に輪郭を失い、水へ変貌した。
「な!?」
「冷たっ!」
水になった氷はサリナに当たるがただそれだけで、全くダメージがなかった。
「時を操る魔法だと!?そんな高度な魔法、貴様がなぜ!?」
「次はこっちから行くよ~。“時よ、巻き戻せ”」
サリナの言葉に先ほど氷だった水が反応する。
水は地面から宙に浮き、徐々に輪郭を帯び氷の柱へ変貌した。
「な!?僕魔法を…!?」
「お返ししま…すっ!」
サリナが手を振り下ろすと、氷の柱は凄まじい勢いでアルトへ向かう。
アルトは間一髪の所で交わすがギリギリだったのか、頬に一筋の切傷が出来てしまう。
「この!調子に乗って…って、何処に行った!?」
「ここだよ」
前を見たアルトの視界にはサリナは居なく、一瞬戸惑うが声がする方を向けばすぐ真横にサリナがいた。
「なっ」
サリナはアルトの首根っこを掴み思いっきり振り返り、そして…。
「どっ…せい!!」
アルトの身体はその言葉と同時に宙を舞い、地面へと叩きつけられたのだった。
「私、魔法より体術の方が得意なの」
「頭は冷えましたか。アルト殿下」
「少しだけな…」
医務室のベッドの上でアルトは不貞腐れながら答える。
あの一戦のあとアルトは気を失ってしまい敗北、医務室へ運び込まれる事態になった。
「私が思いますに、彼女は中々手練れでしたね」
「そんなの、身をもって経験した…所であいつは?」
「教師に呼び出しされて席を外しました。何でも校則に則った決闘以外はご法度だとか…」
「後で貴方も怒られますよ」と言われ、アルトは何も言えなかった。
ガチャ
「あ、起きてる」
「貴様」
医務室のドアが開くとそこにはサリナが立っていた。
若干疲れの色が見えるが、至って平気そうだった。
「では、私はこれで。殿下、お話したいことがあるのでしょ?私は席を外しますので、存分に話されては?」
「うぐ…」
側近の男はそう言うとまっすぐドアへ向かい、退出する。
「で?話って何?」
サリナはベッドの側においてあった椅子に腰掛け、アルトを見る。
「…望みは何だ」
「はい?」
「だから!望みは何だと聞いている!金か!?宝石か!?ドレスか!?」
「…あぁ!決闘の報酬の話ね!」
「貴様、忘れていたのか!?」
「先生に怒られてすっかり頭から抜け落ちてたよ」
「あははっ」と笑うサリナに、アルトは呆れて物も言えなくなる。
「しかし、望みか………あ、じゃあさ」
サリナはスッとアルトに手を差し出す。
「友達になってよ」
「は?」
「だから、友達!私友達に憧れてたんだ~。ずっと森育ちだったから同じ年の友達に憧れてて」
ズイッと更にサリナは手を突き出す。
それに対してアルトは、何か言いたげな、何処かむず痒い様な仕草をして…。
「き、貴様がそこまで言うのであれば、なってやらなくもない!」
それに怖気づいているのか、アルトは恐る恐るというように手を伸ばす。
そして握手が交わされるとサリナは「あ」と声を上げる。
「私、“貴様”じゃなくてサリナだから!サリナ・スタインベック!」
「スタインベック…あの人と同じ家名だな」
「あの人?」
「僕の敬愛する方だ。実力、品行方正、人間性、おまけに蛇語を理解する知性…全てにおいて尊敬するに値する」
「ん?蛇語を理解する…しかも、スタインベック…。ねぇ、その人さ」
「ん?」
「カナリア・スタインベック?」
「!知っているのか!?自然管理科の大臣であるあの人を!」
「知ってるも何も………私のお母さん」
「は?」
「お母さん、です」
「……は!?」
「カナリア・スタインベックの娘!!!!!!?」
側近曰く、学校中に聞こえるような絶叫だったと言う。
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