【完結】番である私の旦那様

しつこい男は嫌われますよ？

　ランチは私の手作り料理、今日は野菜いっぱいのシチューと柔らかいパン！
　きっと驚くだろうな。
　その驚く顔と『美味しい』と言って笑顔になってもらえるのが嬉しい。
　デザートはプリン、飲み物は温かいミルクティー！


「「「「おはようございます」」」」

　私達は顔を見るなり同時に挨拶をしていた。
　笑い合っている時だった、またですか。
　
「ちょっと！
　いつもいつもオールとジンに無理矢理送ってもらうのは止めてよ！
　オールとジンは私に会いに来てくれてるのに、２人で横取りして……酷い……クスン」

　馬鹿な女、早く１日が終わらないかな。って思っているとダーティー様がジーナ様の腕を掴もうとして手を伸ばしたが私が阻止して、手を叩き落とした。

「いてっっ！」
「あらっ、ごめんなさい……うるさいハエと間違えましたわ。
　女性に触れて良いのは危険から助ける時と緊急時、そして婚約者だけです。ご存知ですよね？
　ご存知無いのでしたら、ご両親に聞くか勉強をして来て下さい！」
「ば、馬鹿にするなっ！
　そんな事、子供でも知ってる！！」

　子供でも知ってる事をしようとしたんだ、この人達って貴族だよね？
　異世界から来た私でも出来るのになんで簡単なマナー、礼儀作法が出来ないんだろ？
　一番出来てないのがルリナ様だよね、もう公爵を剥奪されるんだろうけど、どうやって生きていくんだろう？
　
　そんな事よりダーティー様よ！

「では、その子供でも出来るマナーを実行して下さい！」
「ジーナ、俺はまだ婚約破棄を受け入れてないからな！」
「……わたくしの事は放っておいて下さい……。
　もうダーティー様を想っていた気持ちが冷めてしまったんです。
　わたくしは……ジン様が……大好きなのです！」

　真っ赤な顔を扇子で隠すジーナ様が可愛すぎて『キュンキュン』しちゃったわ。
　もうやだ、この子ってば守ってあげたくなっちゃうくらい胸が熱くなってくるわ！
　
「そんな野獣みたいなのが好きって……お前は俺が好きだったろうが！
　なんで急に婚約破棄なんだよ！！
　俺はルリナ様が一番だがジーナ、お前は二番目なんだ嬉しいだろ？」
「わたくしだけを想ってくれるジン様が愛おしすぎて、ダーティー様が入る隙間は……ありませんわ」
「俺はお前を二番目に……」

　ジーナ様の両肩を掴み、血走った目を見開き怒鳴るかの様に吠えているので、片手を掴みダーティー様の背後へ腕を捻り上げた。
　女性に触れてはいけないと忠告したにも関わらず肩を鷲掴みですか、ジンに報告案件だね。
　私はか弱い女性、背後からヨーシュア様に大きめの花瓶を背中に投げつけられ、床に落ちて割れたのと同時に痛みで顔を歪ませた。
　私が守ってあげないと、背中が痛い……オール……フェン。

「……いっ（痛い）……女性に暴力ですか？
　本当に救いようが無い人達ですわね」
「お前が悪いんだ、お前のせいで俺の婚約相手がババアなんだからな！
　３５歳のババアと俺は……ハーティー、俺ともう一度婚約を……」
「わたくしは騎士副団長グレン・カーデル侯爵様の婚約者です！
　ヨーシュア様に対する気持ちは冷めました。
　わたくしに話しかけないで下さい！！」

　背中が痛くてズキズキしているが、今はジーナ様を守る事が優先よ。ジーナ様を背で庇い、ハーティー様にも私の後ろへ下がってもらった。
　怒った男は何をするか分からないからだ。

「レイン、お前は俺の事が好きだよな？」
「いいえ、嫌いですわ。
　わたくしが好きなのは、騎士団長アーロン・ルガレート侯爵様だけですわ！」
「……俺と婚約しよう、まだ間に合うから。
　俺の今度の相手……４０代なんだ、俺を助けると言ってくれよ！」
「なんと言われても返事は『いいえ！』ですわ」

　なんかヤバいかも！
　彼等の血走った目……怖い……怖い！
「フェン！
　オール……オール助けて！！」

　学園へ通うようになって初めて悲鳴に近い声で助けを呼んでいた。