BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください

わさび

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第十一話

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(俺はーーーー、またおいでね)

(ーーさん、ありがとうございます)





【ーーさんはね、照史が弟の誕生日プレゼントに用意した映画館のチケットを使用すると出会える攻略キャラなんだよー!】

【凄く優しい人なんだけど、ーーさんは照史より…】





そこで意識が浮上して目が覚める。
時計を見れば午前6時を差していて、そろそろ起きようと布団から抜け出るとヒヤリとした空気が身体を覆う。
フルっと身体を震わせながら椅子に掛けてたカーディガンを羽織って下に降りる。
兄さんはまだ寝てるのだろう、朝特有の静かな空気。
寒いとは思うが、そんな空気が好きな俺は1人なのをいい事にリビングの窓からサンダルを履いて外に出る。

こんな薄着で外に出たら兄さんに怒られるだろうことを予想するのは難しいことではない。
でも、夢の事を考えるのに頭を冷やしたかった。




「…あの人、だよな…映画館…」





今年の夏、俺が見たいとポソっと呟いただけなのにそれを兄さんが聞いていてわざわざチケットを買ってきてくれた。




































『ママ…ママ……』

『結衣ちゃん…!大丈夫よ、ママが一緒だからね!』





スクリーンに映される親子が抱き合って迫り来る恐怖に立ち向かう様子。
その姿を見て感動する人、怖がる人、あくびをする人、そもそも寝てる人…いろんな人がいる。

そう、ここは映画館。
今日は兄さんが俺の誕生日に見たがっていたチケットを買ってきたとの事で今話題のホラー映画を見に来ていた。
そのホラー映画は和風ホラーで、内容は

【古いマンションに引っ越してきた母子を襲う不可解な現象。
 急に流れ出す水。広がり続ける天井のシミ。眠っていると横に立つ見知らぬ幼い女の子。
 親子はこのマンションの謎を解き明かし、無事に出ることができるのか!?】

と言った感動あり、謎解きあり、ホラーありといろんな層を狙った作品となっていた。
話題になっていたこともあり席は満員で、中には子供と一緒に来て泣いてしまった子供を抱えて慌てて外に出る母親の姿もあった。
子供が見たら素直に怖く、大人が見たら感慨深さや感動を味わえると映画館を賑わせている作品だ。

今その映画はクライマックスを迎えていて、幽霊の女の子の謎を解き明かした母親が我が子を守るために自分を女の子に差し出すという母からしたら涙なしでは見られないというシーンに差し掛かっている。
実際、俺の隣で見ている年配の女の人はハンカチを手に涙を流して映像に夢中になっている。







『ママー!!』

『結衣ちゃん、愛してるわ…元気でね』





母親が幽霊の子供を抱きしめ、そのまま謎の一つであった大量の水に飲まれて映像は暗転する。

我が子を守るため、身を犠牲した母親。
その母親を忘れることができない娘は成長した姿で再登場し、事件のあった古いマンションを訪れた。
そこで母親の温もりを感じて涙を流し、スタッフロールが流れて映画は終わる。

スタッフロールが終わるまでは立ち上がらず、画面を見ているとこれで終わりとばかりに立ち上がり出口に向かう人がどんどんと出ていく。

ボケーっと画面を見ていると、何故だか母親というものについて頭が動き始める。

前世の母親は物腰がとても柔らかく、でもダメなことをしたら誰よりも怖く怒ってくれる人だった。
俺も妹も母親が大好きで、母の日には必ずお小遣いを出し合ってプレゼントを買ったりしたもんだ。

今世の母親は…ご存知の通り、とにかく父さんが大好きで…。
父さんが好きすぎて父さんに似なかった俺が大嫌いな人だった。
父さんが家にいる時は良い母親を演じ、仕事でいなかった時はいろんな嫌がらせという名の虐待を俺にしてきた。
ご飯を抜くのは通常運転、俺を置いて友達と買い物に行ったり、俺を押し入れに押し込んでイヤホンをして映画を観たり。
俺にかける言葉と言えば
「どうして似なかったの?」
「気持ち悪い」
「邪魔」
「消えて」
「死んで」
こんなもんだ。
普通ならグレたり、それこそ生きてる意味を失う事や自分自身がわからなくなって歪んでしまう事だってあるはず。
…ゲームの唯兎はそんな母親により歪んでしまったんだと思う。

母さんからの愛は全て父さんに向けられたものであり、唯兎に向けられたものではなかった。
幼いながらに唯兎はそれを理解していて、なんとか母さんに愛されようと母さんへのアピールを続けた…それすらも母さんからしたら邪魔なものでしかなく、その気持ちを唯兎への虐待という最悪な形で表現を続けた。
唯兎は母さんに好かれないことを『自分のせい』だと思い、父さんと母さんが離婚する時も『俺のせいで父さんも母さんも離れちゃう』と思い込んでしまった。

そんな中、母親から愛を注がれて育った兄さんに出会い唯兎は完全に歪んでしまった。
「どうしてお前は愛されてる」
「どうして俺は愛されない」
「どうしてお前は全部持ってる」
「どうして俺には何もない」
そうやって歪んだ気持ちを抑えられなくなった結果、兄さんへの嫌がらせへと発展してしまう。

ゲームでの兄さんは沢山の嫌がらせを受けても唯兎の事を恨んではいなかった。
これは俺自身、兄さんと接してよくわかった事だが兄さんは本当に俺の事を愛してくれている。
兄として弟である俺をずっと大事にしようとしてくれている。

兄さんはブレる事なく、嫌がらせを受けても唯兎の事を弟として愛していたんだ。
唯兎はその愛に気付く事なく嫌がらせを続けた結果、エンディング次第では施設へ送られ…そこで…。





「唯兎、唯兎…?大丈夫?」





突然の兄さんの声にハッと頭が現実に引き戻される。
隣を見たら兄さんが心配そうにこちらを見ていて、更にはスタッフさんのような大人も2、3人集まっていた。





「唯兎、具合悪い?立てない?」

「ぇ、ぇ…?」

「おんぶするから、僕に乗れる?」




なんとなく頭が働かないながらも周りにお客さんが居なくなっていて俺たちが最後だってことに気付いた俺は慌てて立ち上がる。
…が、座っている時間が長かった中で急に立ち上がったからか立ち眩みを起こして身体が前に傾いてしまう。
そんな俺を周りの人が支えてくれてそのまま兄さんの背中に乗せる。
別に具合が悪い訳でもないのに心配かけて申し訳なくなって兄さんの背中に顔を埋める。





「館内の椅子を使っていいので少し休んで行ってくださいね」

「すみません、ありがとうございます」

「……ごめんなさい…」





スタッフさんの優しさに居た堪れなくなり、鼻がツンとして少し声が震えてしまう。
そんな俺を具合が悪いと勘違いしたのか、スタッフさんは優しく「お大事に」と見送ってくれる。

兄さんはなるべく邪魔にならないような館内の端っこにあるソファに俺を座らせると「待ってて」と声をかけてどこかに行ってしまった。
その姿を見送り、俺は自分の顔を手で覆う。

俺が母さんや唯兎の事を考えてるうちにエンディングが終わり、明るくなっても反応を示さない俺を兄さんが心配して大人を呼んでくれたんだろう。
幸いにも、俺がぼーっとしていた時間はそう長くはないらしくなんとか次の上映時間には間に合ったようだ。
それでも兄さんには無駄に心配かけたし、スタッフさんには無駄に時間を使わせてしまった。
申し訳ない気持ちで顔を上げる事が出来ないでいると、額にヒヤリとした手が当てられる。
ハッと顔を上げると心配そうに顔を覗き込む兄さんと目が合う。




「唯兎、具合どう?頭痛い?」

「ぁ、いや…ごめんなさい、大丈夫」

「熱は…なさそうかな、貧血?」




俺の額に手を当てて熱を確認し、今度は下瞼の裏を確認し始める。
慣れた手つきで俺の体調を確認していると、今買ってきたであろう飲み物を手渡された。





「とりあえず飲み物飲んで、ここは涼しくてもしっかり水分取らないと」

「ありがと…」




スポドリの蓋を開けて少し口にすると思ってたより喉が渇いていたのか頭が冴えていく感じがする。
ほ…と柔らかくため息を吐くと兄さんは安心したように俺の頭を撫でてもう少し休憩して行こう、と俺の隣に座る。
それに対して軽く頷くともう一口スポドリを口に含む。
ひんやりした飲み物がとても気持ちいい、蓋を閉めてペットボトルを首に当てるとぼーっとしていた頭に刺激になって良い。





「貧血なら鉄分取らないとなぁ、ほうれん草…レバーの方が良いかな。帰りにスーパー寄って鉄分ヨーグルトもいくつか買って帰ろう…。あとはなんだろう、少し調べてみないとわからないな…」





俺の頭をゆっくり撫でながら俺の心配をして今晩の夕飯、貧血にいいものをぶつぶつと独り言で呟く兄さんに大袈裟、と伝えると何故だが兄さんはじとっと俺を睨む。





「大袈裟なんかじゃないよ、貧血だなんて1人の時になったら大変なんだよ。人によっては立てなくなって移動する事だって難しくなるんだから対策をしっかりやっていかないと。唯兎は自分のことを蔑ろにしすぎ、もう少し自分の身体を」

「わかった、ごめん!だからここでそんなどんどん捲し立てないで!」





大真面目に俺に身体を寄せて伝えてくる兄さんの身体を押し返してわかったから!と降参の意味で両手を上にあげる。
そんな俺に満足したのかまた頭を優しく撫で、ニコニコと笑顔を浮かべる兄さんはある意味強者だと思う。

そんなやりとりをしていると、1人のスタッフさんがこちらに歩いてくるのが見える。





「体調は大丈夫かな?」

「あ、すみません!もう大丈夫です」




慌てて立ち上がろうとする俺の肩を押さえてそのままでいいよ、と座ったまま話すことを促すスタッフのお兄さん。
お兄さんに言われた通り、座ったままお兄さんを見上げるとうんうん、と頷いて俺の顔をジッと見つめてくる。





「うん、さっきに比べて顔色も良さそうだ。でも急に立ち上がったらまた貧血になっちゃうかもしれないからゆっくり立ち上がるんだよ、さっきみたいに慌てて立とうとしたらダメだ」

「はい、ありがとうございます」

「そろそろ行こうと思っていたんです、本当にお世話になりました」




兄さんと一緒に頭を下げてお礼を言うとお兄さんは俺と兄さんの頭をぽんぽん、と撫でて気にしないでとニコリと笑う。
その笑顔を見てなんとなく引っ掛かりを覚える、こういう時の引っ掛かりは大体ゲーム関連だ。
失礼だとは思いながらネームプレートをジッと見てみるとそこには【栗河】の文字。
その名前を見ながら誰だっけ…と頭を悩ませてるとお兄さんに名前を見てることがバレてしまいネームプレートを外して俺に手渡される。





「俺の名前気になる?なんて書いてあるか読めるかな」

「え、と…くりかわさん…?」

「正解、小学生かな?それとも中学生?」

「中1です、兄さんは中3で」

「へぇ、中学1年にしては大人っぽいね」





栗河さんは俺の頭を軽く撫でてゆっくり立ち上がると手に持っていた袋を兄さんに手渡す。
その中にはスポドリが2本入っていて俺達が不思議そうに見ていると、その光景を見た栗河さんが苦笑する。





「君達に飲み物をあげようと思って持ってきたんだけど、お兄さんの方が買うの早かったみたいでね。俺はこんなに飲まないから君達持って行って」

「いえ、そんな申し訳ないです」






首を振って飲み物を返そうとする兄さんに栗河さんが何か考えた後、そうだ、と手をパンっと鳴らした。






「それならさ、それあげるからまた映画観に来てよ。俺はここでバイトしてるからその時俺を見かけたら声かけて」

「でもご迷惑をお掛けしたのに…」

「そんなの気にしない、困ったときはお互い様。むしろ貰ってくれないと困りまーす」






おちゃらけた様子でヘラっと笑った栗河さんに兄さんは少し複雑そうな顔をした後、それなら…と袋を受け取った。

その光景を座りながらずっと見てるだけだった俺に兄さんが大丈夫?と声をかけてくれる。
この人どこかで見た気がするんだけど…なんて考えてたらボケーっとしてしまっていたようだ、栗河さんも心配そうに見ている。
ただその顔もどこかで見た気が…と頭が記憶の中の違和感を探す事に集中してしまう。






「この子はまだ本調子じゃなさそうだね、帰れそう?」

「大丈夫です、タクシーで帰ります」

「そっか、じゃあ俺は休憩終わるから戻るけど気をつけて帰ってね」






兄さんと一言二言話した栗河さんが手をヒラヒラと振って仕事に戻っていくのを見送る兄さんに慌てて立ち上がった。






「あの、ありがとうございました…っ」






俺の声が聞こえて嬉しそうに再び手をヒラヒラと振って去って行った栗河さん。
お礼を言えて満足した俺は急に立ち上がったせいでまた立ちくらみに襲われ兄さんの身体に捕まった。






「唯兎、早く帰ろう…タクシー呼ぶから、ね」

「うん…ごめんなさい」






今日は暑さにやられたのか頭がうまく働いてくれていない自覚があり大人しく兄さんのいうことに従ってタクシーで家に帰った。

家に帰ると兄さんは俺をソファに横にさせると冷房とテレビ、すぐ飲めるように氷の入ったピッチャーにスポドリを入れてテーブルの上に置く。
目の前でテキパキと動き回る兄さんに呆気に取られていると満足したらしい兄さんは俺の頭を優しく撫でる。





「いい?僕は夕飯の買い物に行ってくるけど唯兎はここで横になってて。飲み物はここから飲んで、急に体調悪くなったらすぐに連絡して」

「う、うん…ありがとう」

「必ず、体調悪くなったら、連絡すること。約束だよ」






俺に顔を近付けて言葉を区切って伝えてくる兄さんに圧倒された俺は何度も首を上下に振る。
そんな俺に満足したのか兄さんは行ってくるね、とまた俺の頭を軽く撫でてから外に出ていく。





冷房を付けたことで涼しくなった部屋にホッと安心して目を閉じる。
思ってたより貧血に体力を持っていかれたのか、俺はすぐに眠りに入り兄さんが買い物から帰ってきても暫く起きずに眠り続けた。


























「唯兎!」






寒空の中記憶の中に潜り込んでいた俺の思考は兄さんの鋭い声で呼び戻された。

そういえば寝起きのままの格好で窓から外に出てきたんだっけ、と今更ながらに寒さを感じてフルっと体を震わせた。
すると家の中から兄さんが毛布を抱えて裸足のまま外に出てきてギョッとする。




「兄さん!裸足はダメだって、なにしてんの!」

「それはこっちの台詞だよ!そんな薄着で外に出て、風邪ひいたらどうするんだ!」





普段俺に対して怒りはするものの本気で怒らない兄さんが明らかにキレてる。
口調が荒くなっているところがその証拠、兄さんはキレると口調が荒々しくなるしとにかく相手に対して容赦なく言葉で責めてくる。
それは元々妹からの情報ではあるが、実際女の子に対して口調が荒くなっているところを何度か見ているから事実なのは確かだ。

口調が荒くなり、俺の腕を無理やり掴んで部屋の中に引き摺り込む。
部屋の中は俺も兄さんも暖房を付けていなかったからかまだ寒く、兄さんがエアコンのリモコンをピッと押したことでようやく暖房がやる気を出し始めた。

ソファに座らされ、毛布で包まれながらキレてる兄さんを見てみるといつもは優しく俺を見てくれている瞳が怒りで吊り上がってしまっている。




「唯兎、なにしてるの?こんな寒空の中寝巻きの薄着のまま外に出て、かなり冷えてる自覚ある?どうしてこんな格好のまま外に出たんだ、風邪引くとか考えなかったのか」

「いや、風邪引くとか考えてなくて…ただ外の空気を吸いたいなって…」

「外の空気吸うだけならそんな冷えるまで外に出なくてもよかったよね、何してるの?本当に…風邪引いて困るの唯兎だろ。いい加減身体の事を第一に考えて行動出来るようになってくれよ」

「ご、ごめんなさい…」







本気で怒っている兄さんにどう説明したらいいかわからなくなり、つい毛布で顔を隠して謝ってしまう。
そんな俺を見て反省したと判断したらしい兄さんはふぅ…と小さくため息をついて俺の隣に座る。







「僕は唯兎が風邪引いたら悲しいよ。苦しそうな唯兎なんて見たくない、だから自分の身体のことをもっと大事にして欲しいんだ」

「…うん、ごめんなさい…」

「いい子、じゃあ次からは身体を第一に考えるって約束ね。今あったかいもの持ってくるから少しここで身体暖めてて」





説教タイムが終わったことにホッとして無意識に力の入っていた身体をソファに沈ませる。
怒った兄さん怖い、間違ったことは何も言ってないし口調も怒鳴ることなく静かに問い詰めてくるだけなんだけどそれがまた怖い。

毛布に包まりながらソファの上で横に寝転がるとフワフワと心地の良い感覚に襲われる。
あ、これは寝そうだぞ…と目を閉じて身体を襲う眠気に身を委ねようとした時コツン、と頭を軽くノックされる。
それにより意識が浮上して上を見上げると兄さんがマグカップを持って困ったように笑っていた。







「ほら、寒い中外にいたから身体が疲れてるでしょ。あったかいココア作ってきたよ」

「んん、ありがとう…」






しょぼしょぼする目を擦りながら起き上がると兄さんはマグカップを俺に手渡してから隣に座り何気なくテレビをつけた。

暖かいココアに口を付けると程良い甘さが口の中に広がり身体を温めてくれる。
一口飲んでホッ、と小さくため息を吐くとクスクスと笑いながら俺の頭を撫でる兄さん。

頭を撫でられる感覚に甘えながらも先程付けたテレビに目を向けると、丁度新作映画の特集が組まれていた。
そういえば、今上映してる映画で観たいやつあるんだよな…人間vsアンドロイドの大戦争の話なんだけど、主人公と1体のアンドロイドが元々兄弟のように育った間柄で……。






「兄さん、映画観に行きたい」

「あ、人間とアンドロイドが戦うやつ?あれって結構前に上映始まったからそろそろ無くなっちゃいそうだよね」





なんて言いながらスマホで近くの上映状況を調べてくれる兄さん、流石です。
一番近くの映画館では残念なことに上映されていないらしく、少し離れた場所を調べていると1箇所だけまだ上映されている場所があった。





「ここって、唯兎が具合悪くなっちゃったところだよね」






少し乗り気ではないような反応の兄さんに首を傾げながらそうだね、と返す。

あの時はたまたまかなり暑い日で俺も映画が楽しみであまり寝られていなかったこともあり少し貧血を起こしてしまっただけなのだが、兄さんは何が引っ掛かるというのだろうか。





「そういえば、栗河さんまだいるかな?約束もあるし、そこ行こうよ」

「………んん……」





栗河さんの名前を出した瞬間兄さんの表情が少し曇る。
夢で見たが、栗河さんはゲームの攻略キャラなのだ。
どういったキャラなのかまでは思い出せないでいるが、攻略キャラということは兄さんとかなり近しい存在になり得るわけで…
もしかして、兄さんもう栗河さんと何かあった…!?

俺も兄さんの行動全てを把握しているわけではなく、勿論まだ一緒に行動することは多いが休みの日なんかは兄さんも出掛けることもあるし、俺も俺で桜野や大原となら一緒に出かける事を許可されている事もあり3人で遊ぶ事もある。

俺がいないところで栗河さんと進展してて、それを弟である俺に気付かれたくないのだとしたら渋るのも納得だ。
だとしたら映画も1人で観に行きたい…?






「兄さん、俺大原と桜野と映画観に行こうか?」

「え、なんで」

「いや、兄さん1人で観に行きたいのかなって」

「違うよ」






即答で否定されてしまった。
しかし、まだ唸ってスマホを睨み付けてる兄さんを見ていると何か問題があるようにしか見えない。

何が問題なんだろう、と唸る兄さんを見ていると兄さんは何か諦めたかのようにはぁ…と溜め息を吐いて俺を見つめた。






「よし、あの映画館に観に行こう唯兎」















珍しく次回へ続きます。

…続き、ます…?




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