BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください

わさび

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第三十話

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最近、凄くイライラする。

唯兎が大原達と仲直り出来たのは凄く嬉しいことだと思う。
僕自身も嬉しくて泣きそうになったし、その後行った映画も凄く楽しかった。

あの時のチャット、実は八つ当たりが混じってた。
唯兎がせっかくみんなで見られるようにって選んでくれた映画に茶々入れて、それでも唯兎は優しく僕が好きそうな映画を探してくれていた。
子供っぽいな、なんて思わず失笑してしまう。

ぼくは、元々唯兎とこんなに仲良くなるつもりなんてなかった。
想い人である…七海照史先輩に近付くために唯兎の友達になろうと思って近付いたことが最初だ。
最初は唯兎にも、大原や桜野にも警戒されたけど素直に照史先輩を好きであることを伝えると逆に協力しようとしてくれて、そして照史先輩は『自分に好意を寄せる人を嫌がる』という情報も教えられた。

そんなのどうしたらいいんだ、と途方に暮れていると大原から『唯兎の友達になればあの人の警戒心薄くなるよ』なんて助言をもらう。しかも唯兎の隣で。
驚いて反応出来ずにいると唯兎も『そうだよ、俺と友達になって兄さんに顔と名前覚えてもらうところから始めよ』なんて笑いながら提案してくるからもうこの人たちの関係性がよくわからなくなった。

そんな変な始まりから今まで、ぼくは唯兎の友達としていろんな照史先輩を見てきた。

唯兎のために、とご飯を作っている照史先輩。
唯兎に怒られて落ち込んでる照史先輩。
唯兎と喧嘩して悲しそうな照史先輩。
唯兎と一緒にいられて嬉しそうな照史先輩。

全部全部、あの照史先輩がぼくの物だったらよかったのにと何度思ったことだろう。
あの笑顔も、あの涙も、あの表情全部ぼくのだったら幸せなのに。







「照史先輩、唯兎のことで報告が」

「うん、いつもありがとう」





この照史先輩は、ぼくに向けた照史先輩。
微笑みはしてくれるものの、上辺だけの微笑み。
唯兎に向けた時のような、蕩ける程の甘さはない。

きっと、照史先輩はぼくを《唯兎の友達》としては認識してくれているんだろう。
ただ、それだけ。

唯兎が照史先輩と距離を置くようになってから照史先輩と会話することが増えた。
唯兎の情報を渡すことをぼくが照史先輩に提案したからだ。
ぼくは、照史先輩と接する時間欲しさにその提案をした、そして照史先輩は唯兎の事が知られて嬉しい…win-winだと思った。

けど、そうじゃない。
ぼくが1人で照史先輩と接するたびに現実を突きつけられる。






「それで、唯兎は僕の事なんて言ってた?」

「…照史先輩の話をしようとすると遮られちゃって、昨日は全然話題にできませんでした」

「そう、じゃあもういいよ。ありがとう、またよろしくね」






それでぼく達の時間は終わる。
照史先輩は、唯兎が自分をどう感じてるのか。それが知りたい。
その話さえも出来ないなら、今日の会話はこれでおしまい。
そんな日が、ずっと続いていた。

そしてこの前、久しぶりに照史先輩が嬉しそうだったんだ。
話を聞くと、久しぶりに唯兎と会話ができたとあの《蕩けるほどの甘い笑顔》で話してくれた。

ぼくだと見られないその笑顔。
唯兎は、たった少しの会話で引き出してしまう…それがとても、胸に刺さった。

ぼくがどんなに努力をしてもあの笑顔は引き出せない。
唯兎が照史先輩の全てを持っていってしまう、ぼくが欲しい照史先輩を全部。

唯兎は何も悪くない、なのにぼくは八つ当たりのように唯兎に当たってしまいそうになる。
どうして、ぼくを見てくれないの?
こんなに頑張ってるのに。
照史先輩だけを見てるのに、どうして。






「皇、今日のバイトなんだけど…」

「……ごめん、体調悪いから今日休みたいかも」

「え、大丈夫?早退する…?」

「平気、でもバイトは無理そう」






そんなの嘘。
ただ、ぼくが唯兎といると当たってしまいそうで今は一緒にいたくないだけ。
凄く心配してくれる唯兎から顔を背けるように立ち上がり、バイト先に電話してくると伝えると着いてこようとする。
それを大丈夫だから、と拒否して廊下に出るとスマホを取り出して履歴からカフェの電話番号を探して通話ボタンを押す。





prrrrr...

prrrr....





『はい、深緑カフェ』

「ぁ…ぼく、皇です…。体調悪くて、今日休みたいんです…」

『そうか、こっちの事はいいから早く帰って寝ろ』

「はい、すみません…ありがとうございます」






そこで通話を切ろうとすると、電話口からまだ何か声がした。
再び耳に当ててみるといつものぶっきらぼうな声が耳に届く。






『お前さ、なに悩んでんのか知らねーけどしっかり前見ろよ』

「…え?」

『お前を見てくれてるやつの事、しっかり見てやれって言ってんだ。とりあえず今日はいいからしっかり休んでしっかり考えろ』






そのままブツッと切られた通話に困惑する。
あの人はぼくの何を知ってるんだ、どうして電話口でわかってしまうんだ。
口は悪くても優しいバイト先の先輩の言葉に唖然としていると、心配だったのか唯兎が静かに近付いてきた。








「皇、連絡出来た?大丈夫?」

「ぁ、うん。こっちはいいからしっかり休めって…」

「そっか、良かった…皇の分も俺頑張ってくるから!」







両手を握り気合を入れる唯兎は凄く友達思いで、凄くいい子。
なのにぼくはただの、醜い嫉妬をぶつけてるだけの…酷い奴。
体調悪くなったら言ってね、なんてぼくの背中を支えながら教室までエスコートしてくれてる唯兎に…ぼくは最低な事しか考えられないんだ。

そして放課後、唯兎はずっとぼくを心配してくれていた。
体調どう?
送らなくて大丈夫?
お母さん来るまで一緒にいようか?
寒くない?
そうやってぼくの身体をずっと心配して、寒いんじゃないかって自分の膝掛けを貸してくれたり…すごくいい子なのに、僕はその間も胸がモヤモヤして落ち着かない時間を過ごした。
唯兎に大丈夫だから、と早く帰ってバイトに備える事を伝えると心配そうにしながらもコクン、と小さく頷いた。
何かあったら絶対連絡してね、と最後までぼくの身体の心配をしながら帰っていく唯兎にヒラヒラと手を振ると自分の胸に手を当てふーー…と息を長めに吐いた。

ただ純粋に心配してくれている唯兎に対して冷たくして、適当にあしらって…本当ぼくって最低。
自己嫌悪に陥って顔をあげられずにいるとクラスの、ぼくのファンだという男達から声をかけられる。






「皇君、大丈夫?保健室まで送ろうか?」

「具合の悪そうな皇君を置いていくなんて、七海って性格最悪だな!」

「皇君の人気にあやかろうとして付き纏うくらいだ、そりゃ性格良いわけがないって」






コイツら…ぼくがいくらやめるように言っても唯兎に対する態度は何も変わらない。
むしろ、ぼくが苛立ち始めてから更に加速している気がする。





「ねぇ、いい加減に……っ」

「皇君だってそう思ってるんだよね!優しいから言わないだけで、本当はあんな奴消えてしまえって思ってるんだよね!」

「大丈夫だよ、俺らはちゃんとわかってるから」





消えて欲しい…?
何言ってるんだ、コイツらは。
いつものようにソイツらに怒ろうとして開いた口から声が出て来ない。

…だって、その言葉を聞いてスッと胸に入ってきてしまったんだ。
唯兎がいなくなったら、もしかしたら照史先輩はぼくを見てくれるかもしれない?
一番近くにいて、ずっと支えてあげられるぼくがあの笑顔を手に入れられる?

そこまで考え、大袈裟なほどに首を振る。
何バカな事考えてるんだよ、そもそもぼくは唯兎を傷付けてまで照史先輩に見て欲しい訳じゃない。
その筈なのに、悪い考えが脳から離れない。






「皇君も我慢しなくていいんだよ!俺ら皇君のためなら協力するし!」

「そうだよ、俺らに任せてよ!」





何も言わず、1人で思考の波に飲み込まれている間にコイツらは変な方向で勝手なまとめようとしてて慌てて机をバンッと叩いて視線を奪う。





「…勝手な事ばっかり言わないでよ、誰がそんな事頼んだ?唯兎はぼくの友達だって何度も言ってるのになんで理解できないの?」

「ぁ、いや…!だって…」

「ぇと…なぁ…?」






お互いの顔を見合わせ、気まずそうにしているのを横目にぼくは自分のカバンを持って教室から出た。

唯兎には体調悪いから母親が迎えに来るって伝えたけど、それは嘘。
そもそも仮病なんだから迎えに来られても困る。
クラスメイトへのイライラが収まらないままに靴箱まで来ると、中には一つの封筒が入っていた。

自慢ではないが、僕は可愛い。
それゆえに手紙を貰うこともよくあるため不思議ではないが、その手紙にはよく書いてあるような[皇くんへ]だったり[◯年◯組、◯◯より]と言ったような宛名や差出人の名前が書かれていなかった。

中に書いてあるのかな、なんて軽い気持ちで封を開けて中身を確認したところで息を飲む。
これは、いつも貰っているような手紙じゃ…ない。


『七海唯兎がいなくなれば七海照史はお前を見る』

『七海唯兎がいなくなって意気消沈している七海照史に寄り添えばお前だけを見る』

『屋上、左手側奥のフェンス』

『君の幸せを願っている』



そう、印字された冷たい文字はぼくの目を奪った。
何度も何度も、その文字を目が追う。
追うたびに心臓がバクバクと嫌な音を立てる。

違う。

そう、違う。

ぼくは唯兎を傷付けたくない。

それでもぼくの中にいるナニかが、唯兎が消えることを望んでいる。
違う筈なのに、望んでなんていないのに。

何度も何度も、目が文字を追う。
何度も何度も。



次の日、ぼくは学校を休んだ。
昨日見た手紙が忘れられず、誰もいない家の中手紙をジッと見つめ続けていた。

違うのに、ぼくは。

本当に?

違うよ、本当に。

本当に?

…違う。

本当に?

ぼくの中のナニにずっと『本当に?』と問われる。
照史先輩を悲しませてまで、あの人の笑顔を求めていない。

本当に?

あぁ…頭が痛い。
頭の中が、うるさい。

うるさくて、眠れない。
眠れないからまた、手紙を見る。
それを繰り返して学校を休み始めてから2日が経った。
唯兎と大原、桜野がお見舞いに来てくれた。







「皇、大丈夫?顔色悪いね」

「……うん、あまり眠れなくて」

「具合悪いのに来てごめん、すぐ帰るよ。これ、休んでる間に渡されたもの」

「……ありがとう、明日にはいくよ」






3人の顔を見るとなんとなくホッとして、少し眠気が出てきた事を感じる。
唯兎と2人だと自分の性格の悪さが浮き彫りになってしんどい気持ちが強くなるけど、大原と桜野がいるだけでかなり安定する。
2人が唯兎を絶対守ってくれるって安心してるからかもしれない。
今、自分の意思とは関係なく唯兎を傷付けそうになってるぼくから2人がしっかり守ってくれるから、安心できる。







『七海唯兎がいなくなれば』







ふと、その言葉が脳裏に浮かび胸が苦しくなる。
ぼくはそんな事、望んでいない筈なのに。








『七海照史はお前を見る』








「皇、大丈夫?具合悪い?」

「おばちゃん呼んでくっか?」







胸を抑えて疼くまる様子を見せたぼくに大原と桜野が声をかけてくる。
それに対して首を振る事で意思表示をして布団に横になると大きくため息をついた。







「……皇、俺たちそろそろ帰るね」

「早く元気になれよ!」

「また連絡する、じゃあね」






布団の中からごめんね、とだけ返して目を閉じた。
ゆっくりと閉じた扉の外では、唯兎がどんな表情をしていたのかぼくには全く想像もつかなかった。

次の日、いつものように学校へ行くと靴箱にはまた手紙が入っていた。
内容は前とほとんど変わらない、唯兎を消せば照史先輩を手に入れられるといったもの。
そしてまた聞こえ始める違う、という自分と本当に?と問うナニかの声。

グッ、と喉に何かが引っかかるような感覚をため息を吐く事で誤魔化して手紙を乱暴に鞄に入れた。
そしてクラスへ向かおうと足を動かし始めると少し遠くを歩く照史先輩。

照史先輩の隣には友人らしき人が立っており、その周りには照史先輩に見惚れる生徒。

(綺麗)
(素敵)
(話しかけたい)
(僕を見て)

そんな、表立って言われない言葉を周りの生徒は発している。
それを照史先輩は気付いているのかいないのか、全く反応を示さず友人との話を楽しんでいた。

ふ、と照史先輩が後ろを振り返るとなんとなくぼくと目があった気がした。
トクンとなる胸を押さえて軽く頭を下げてみるが、目があった事などなかったかのように目を逸らされ熱くなった胸が一気に冷える。

目があった、なんてそんなのぼくの気のせいだ。
たまたま後ろを振り返っただけで、誰かを見たわけじゃない。
ただの気のせい。

わかってる、わかっているのに(ここにいたのが唯兎だったら?)と考えてしまう。
唯兎なら照史先輩は嬉しそうに微笑んだだろう。
唯兎ならわざわざ近寄ってきて近くで名前を呼んだだろう。
唯兎なら、唯兎なら…。

冷え切った頭がぼくの脳内で叫び声を上げる。
それはなんの役にも立たない、ただの鳴き声。
それでもきっと、ぼくのソレは最後のSOSだったんだ…と思う。
ぼくは、唯兎を傷つけたくない。

『本当に?』

傷つけたくない、筈なのに。

『本当に?』








「皇、おはよ」




後ろからの声に振り返ると、優しく微笑んだ唯兎が立っていた。
唯兎はいつものようにぼくの隣に立つと、クラス行こ。と声をかけてくる。





「……おはよう、唯兎」






ぼくは、笑えているだろうか。





















いつも通りに授業が終わり、帰り支度をしている唯兎に近付くと鞄の中にノート等をしまっている唯兎は僕に気付くと帰る?と無警戒に微笑む。
あぁ…どうしてこんなにもぼくを信頼してくれているこの子に対して苛立ちを抱いてしまうんだ。

ポケットにしまってあるのは朝靴箱に入れてあったぐしゃぐしゃになった手紙。
右手をポケットにつっこみ、その手紙を更にぐしゃっと握りしめると震える口をゆっくりと開き声を出す。






「皇、ちょっと屋上行かない?」

「…ぇ、」






ぼくが声を出した、と思っていた。
けれどもぼくより先に唯兎が声を出していて…それも、ぼくが言おうとしていた言葉を。

屋上は基本的に立ち入り禁止だ。
ただ、抜け道はある。
あの扉は古くて少し乱暴に押すと鍵が外れるようになっている、そして戻すときも同様に乱暴に引けば元に戻る。
でも、それを知っているのはここの卒業生か、ヤンチャな人達でぼくだってあの手紙がなければ行けるなんて知らなかった。

唯兎がその事を知ってるとは思えなくて戸惑いながらもコクンとうなずいた。
多分扉のことなんか知らなくて、行ったらアワアワするんだ。
屋上に行こうと誘ったのもその時の気分で特に理由はないんじゃないかな、なんて唯兎の後をついていく形で屋上に通じる扉の前まで来た。

唯兎はドアノブをガチャガチャ、と音を鳴らしてから勢いよく扉を開いた。






「ゆ、唯兎…ここの開け方知ってたの?」

「ちょっと知り合いが話してたのを覚えててね」


ヘラっと笑いながら答える唯兎にどこか違和感を覚える。
確かに照史先輩はここの3年生だ。
その友人や、クラスメイトの話を耳にして情報を仕入れた可能性はある…が、真面目な唯兎がそれを利用してわざわざ屋上に来るとは思えない。

誰かに何か言われたのかもしれない。

そこまで考えてハッと気付く。
ぼくだって、あの手紙で知ったんだ。
唯兎も手紙をもらっている可能性だって、ないわけじゃない。
ぼくが受け取った手紙は『唯兎を消せば…』って書いてあった。その反対なら…。
そこまで考えて唯兎を睨むように見てみると、思考が停止した。

唯兎は、手紙に書いてあったフェンスの前で微笑んで立っていた。






「……皇さ、今何か大きい悩みあるでしょ」

「………」

「俺なんとなくわかるんだよ、何で悩んでるのかまではわからないにしても…俺も同じだから」





同じ?
ということはやっぱり唯兎も手紙を…と考えたがそうじゃないらしい。
唯兎は壊れかけのフェンスに手をかけ、かしゃかしゃと音を鳴らしながらぼくに振り返る。






「俺、兄さんの事とか…大原や桜野の事とかしんどくなると胸が苦しくなってしんどかった。そんな時はやっぱり胸をつい押さえちゃうんだよね、この前の皇みたいに」

「…ぁっ」

「皇の悩みの相手はきっと兄さん。そして、皇にとって邪魔な存在って俺でしょ?」






少し寂しそうに話す唯兎にチクンと胸が痛む。
違う、ぼくは唯兎にそんな顔してほしいわけじゃない。
唯兎に酷いことしたいわけじゃない。

でも、それならぼくはどうして唯兎をここに連れてこようとした?
手紙に書いてあった通りにしたら、唯兎は…。






カシャンッ

「俺は、皇には笑っていてほしい。沢山助けてもらったから、今度は俺も皇を助けたい」

カシャンッ

「でも、もし皇がどうしてもって言うなら…」

カシャンッ

「押して、いいよ」






ぼくに背を向けてフェンスを弄る唯兎の表情は見えなくなってしまっていて、何をどう考えているのかわからない。

でも唯兎はぼくに何をさせようとしてる?
押していい?だって、そこから押したら…。

『でも元々それが狙いだったじゃん』

違う、

『今更仲良く屋上で話したかっただけ、なんて通用すると思う?』

うるさい

『少し押すだけだよ、そうしたらぼくの思うまま』














『唯兎を消したいんでしょ?』





























「ちがうっ!!!」





カシャカシャとフェンスを弄りながら皇の反応を待っていると、後ろから皇の悲鳴のような声が聞こえて振り返る。
後ろには自分を守るように身体を抱えて唸りながら涙を流している皇がいて、俺は少しだけ戸惑ってしまった。

俺が皇の様子に気付いたのは教室で体調が悪いと言われた時。
皇の目が、兄さんに惚れた女子達が俺に向ける目と同じ色をしていた。
それを見て、なんとなく察した…皇は、俺のことが邪魔だと感じているんだと言うことに。

それでも俺はなんとか皇に元気になって欲しくて大原と桜野に声をかけて皇の家にお見舞い行った。
その時に皇が見せた俺を見つめる揺らいだ瞳。
そして、その後すぐに胸を押さえる姿。

皇は、俺と同じことで悩んでる。
自分の意思と、欲が喧嘩していて苦しんでる。

だから俺は考えた。
妹の言葉を、沢山思い出しながらどうすればいいか悩んだ。

『屋上のフェンスが壊れてて…』

『唯兎を消して照史を自分が支えたいって…』

『唯兎は死ななかったよ』

『その後の皇きゅんは照史と…』

もちろん全部なんて思い出せないが、所々の妹の言葉を結び付けて結論を出した。
俺は死なないのであれば、兄さんと繋がりたい皇に託そうと。

託して、皇と兄さんの仲が良くなるのであればその方が俺はいい。
それに、高城郁真にも狙われてる以上…俺が幸せになれる道は限りなく少ない。
それなら俺の分も、俺を助けてくれた皇に幸せになってほしい。

だから、と思って壊れかけたフェンスの前に立ち皇に託した結果…皇は崩れ落ちた。






「ちが、…っ!ちがぅぅっ!!」

「す、皇…?」

「ぼくは、唯兎にいなくなって欲しくない…っ!唯兎もいて、照史先輩も…大原も桜野もいて…そうじゃなきゃぼくは嫌なのに…っ!」






慌てて皇に駆け寄ると、皇は俺の胸に飛び込んできて力強くギュッと抱きしめられる。
泣きじゃくりながら違う、と繰り返す皇の涙は止まることを忘れたかのように流れ続けていた。






「唯兎ぉ…ぼく、ごめ…っ!唯兎も一緒じゃないと嫌なのにぃ…っ、ぼく…ひどいことしようと…っ!」

「皇、大丈夫。大丈夫だから、俺何もされてないし俺から言い出したことだから…俺の方こそごめん」

「ちがうっ!!ぼくが…っ、唯兎が言い出さなくてもぼくから誘って、屋上連れてきた…っ!手紙のまま、ぼく…うぁぁっ」






手紙?
その手紙は一体なんなのか、それを聞く余裕もないまま皇は泣き崩れてしまい俺を離そうともしてくれない。
ただ、皇が自分の意思と欲が通じ合わなくなったのは兄さんと…そしてその手紙が原因のようだ。

手紙の事は、また落ち着いた時にでも聞くとして…兄さんの事は早急に対処。

…けどまずは。






「ゆいおぉぉ…ごめ、ごめんん…っ!ぼく、ゆいとにひどい、ことぉ…っ!」







皇を落ち着かせないと…。























『皇きゅんのルートなんだけどねぇ、可哀想なのもあるんだよ』

『ゲーム自体は照史視点だから後日談としての話なんだけどね』

『照史が皇を邪険に扱い続けると、皇きゅん専用バッドエンドに進むんだ』

『それはね、とある人の手紙が皇きゅんを苦しめるんだよ』

『唯兎を消せば照史が皇きゅんを見てくれるってね』

『屋上のフェンスが壊れててね、そこから唯兎を落として唯兎を消せってね』

『でも唯兎は死ななかったよ。植物状態になったの』

『その姿を見て皇きゅんは壊れちゃった』

『その後皇きゅんと照史との仲は良くなるどころか、皇きゅんが壊れちゃった事によって全部無くなっちゃったんだよね』

『結果その後を誰が狙ったと思う?』

『高城郁真だよ、皇きゅんも高城郁真の捨て駒になったってわけ!』

『皇きゅん推しとしては高城郁真は許せないんだよね、本当にもう!イケメンだからって許される事と許されないことあるんだからなっ!』







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