喪女に悪役令嬢は無理がある!

夢呼

文字の大きさ
67 / 105

67.余計なお世話だとしても

しおりを挟む
(うーん、どうしたもんだか・・・)

じょうろで花壇に水をやりながら、椿は悶々と考えこんでいた。

(まさか、オフィーリア様の方から婚約解消を持ち掛けるなんて思ってなかった・・・)

昨夜のオフィーリアとのやり取りを思い出す。

『修道院送りも止めていただくようお願いしてみましたわ』

(でも、肝心なことをしっかりと申し出るところはさすがと言うべきなのか・・・交渉上手と言うべきなのか・・・)

「でも、このまま別れちゃうのって・・・いいのかな・・・」

チョロチョロとじょうろの口から流れる水をぼーっと眺め、考え込む。

「おーっす! 山田!」

そこにいつもの通り元気いっぱいの柳がやって来た。

「おはようございます・・・。柳君」

「あれ? なんだよ、山田。元気ねーじゃん、どうした?」

柳は首を傾げながら椿に近づいてきた。椿はじょうろを両手に持ち直して柳を迎えた。

「実は・・・、ショッキングなことがありまして・・・」

眉尻を下げ、困ったように柳を見上げる。

「オフィーリア様の方からセオドア様に婚約解消を申し込んでしまったんです」

「へえ! すげー、さっすがオフィーリア! 気強きぃつえ~! あはは!」

「え?」

椿と正反対に、カラカラと楽しそうに笑う柳に椿は目を丸めた。

「や、柳君、笑ってる場合じゃないですよ!」

「そうかぁ? だってさ、先にふっとけば向こうから婚約破棄を突き付けられることねーじゃん」

「そ、そうですけど・・・」

「破棄も言えねーのに、修道院行けなんてもっと言えねーんじゃね? それこそ、てめー何様だよ?って話だし。一安心じゃん」

「ま、まあ、そうなんですけど・・・」

「あはは! フラれてやんの~、セオドアの奴! ざまぁねーや!」

「・・・」

セオドアその人の姿をしてその本人を悪く言う光景はなかなかシュールなものがある。
椿はアングリと口を開けて柳を見ていたが、ハッと我に返りプルプルと頭を振った。

「で、でも! 本当は婚約解消なんて、オフィーリア様の本心じゃないんですよ! オフィーリア様はセオドア様の事が好きだから」

「うーん、どこがいいんだろうなぁ~、他の女に目移りする奴なんてよ。俺が女だったら即効別れるわ、そんな奴」

「・・・まあ、それが正論とは思いますけど・・・」

困った顔で柳を見る。
そんな椿の頭を柳はクシャっと撫でた。

「分かってるよ。山田はオフィーリアを応援したいんだろ? 誤解解消とか修道院送り回避だけじゃなくって、できたらくっ付いて欲しいんだろ?」

「はい・・・。だって、いい人なんですよ、オフィーリア様・・・。かなりツンデレのところがありますが・・・」

椿は俯いた。

「ふーん。でもさ、もし、このまま卒業しても俺達お互い戻れなかったら、それは自動的に叶うからそんなに心配しなくてもいいんじゃね?」

「は?」

椿は柳の言っている意味が分からず、顔を上げた。

「だってその時はもう俺達結婚しているわけだしさ」

「はい?!」

「元に戻った時には既に二人は夫婦。もう今更って感じ?」

「はあ・・・?」

「強行感否めねーけど、山田の希望通り二人はくっ付いてるってわけよ」

「・・・」

「ま、卒業前に元に戻っちまったとしても、オフィーリアの潔白を証明するものを残しておけば、セオドアも考え直すかもしれないぜ。寄りを戻して欲しいって奴から頭を下げるかも。そうなったら見ものだな」

柳はセオドアの顔で意地悪そうにニッと笑った。やっぱり何度見ても自分で自分をディスる構図はシュールだ。

「とにかく、オフィーリアが悪者にならないように下地だけは作ってやろうぜ。二人が仲良くなるかどうかは本人たち次第だしさ。オフィーリアだってそんなにセオドアの奴が好きなら、悲劇のヒロインぶってねーで理解してもらうように努力するべきだ。あ、ヒロインじゃなくて悪役令嬢か?」

(き、厳しい・・・柳君・・・)

「な? 何も山田だけが頭を悩ます必要ねーよ」

柳はもう一度椿の頭をクシャっと撫でた。相変わらずニッと笑っているが、今度は意地悪な顔じゃなくて優しい笑顔だ。

「はい」

柳の言葉は本当に力強い。いつも励まされる。お陰で気持ちが軽くなった。

「そうですね。最終的にはお二人に理解し合ってもらうしかないのですから。それでもできる限りの事はしてあげたいです。余計なお世話と怒られるかもしれないけど」

椿は柳に小さくガッツポーズして見せた。
しおりを挟む
感想 54

あなたにおすすめの小説

【完結済】破棄とか面倒じゃないですか、ですので婚約拒否でお願いします

恋愛
水不足に喘ぐ貧困侯爵家の次女エリルシアは、父親からの手紙で王都に向かう。 王子の婚約者選定に関して、白羽の矢が立ったのだが、どうやらその王子には恋人がいる…らしい? つまりエリルシアが悪役令嬢ポジなのか!? そんな役どころなんて御免被りたいが、王サマからの提案が魅力的過ぎて、王宮滞在を了承してしまう。 報酬に目が眩んだエリルシアだが、無事王宮を脱出出来るのか。 王子サマと恋人(もしかしてヒロイン?)の未来はどうなるのか。 2025年10月06日、初HOTランキング入りです! 本当にありがとうございます!!(2位だなんて……いやいや、ありえないと言うか…本気で夢でも見ているのではないでしょーか……) ∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽ ※小説家になろう様にも掲載させていただいています。 ※作者創作の世界観です。史実等とは合致しない部分、異なる部分が多数あります。 ※この物語はフィクションです。実在の人物・団体等とは一切関係がありません。 ※実際に用いられる事のない表現や造語が出てきますが、御容赦ください。 ※リアル都合等により不定期、且つまったり進行となっております。 ※上記同理由で、予告等なしに更新停滞する事もあります。 ※まだまだ至らなかったり稚拙だったりしますが、生暖かくお許しいただければ幸いです。 ※御都合主義がそこかしに顔出しします。設定が掌ドリルにならないように気を付けていますが、もし大ボケしてたらお許しください。 ※誤字脱字等々、標準てんこ盛り搭載となっている作者です。気づけば適宜修正等していきます…御迷惑おかけしますが、お許しください。

魔法学園の悪役令嬢、破局の未来を知って推し変したら捨てた王子が溺愛に目覚めたようで!?

朱音ゆうひ@11/5受賞作が発売されます
恋愛
『完璧な王太子』アトレインの婚約者パメラは、自分が小説の悪役令嬢に転生していると気づく。 このままでは破滅まっしぐら。アトレインとは破局する。でも最推しは別にいる! それは、悪役教授ネクロセフ。 顔が良くて、知性紳士で、献身的で愛情深い人物だ。 「アトレイン殿下とは円満に別れて、推し活して幸せになります!」 ……のはずが。 「夢小説とは何だ?」 「殿下、私の夢小説を読まないでください!」 完璧を演じ続けてきた王太子×悪役を押し付けられた推し活令嬢。 破滅回避から始まる、魔法学園・溺愛・逆転ラブコメディ! 小説家になろうでも同時更新しています(https://ncode.syosetu.com/n5963lh/)。

婚約破棄で悪役令嬢を辞めたので、今日から素で生きます。

黒猫かの
恋愛
「エリー・オルブライト! 貴様との婚約を破棄する!」 豪華絢爛な夜会で、ウィルフレッド王子から突きつけられた非情な宣告。 しかし、公爵令嬢エリーの心境は……「よっしゃあ! やっと喋れるわ!!」だった。

断罪中、味方が多すぎて王子が孤立している件について

夏乃みのり
恋愛
バーンスタイン伯爵家の令嬢ラミリアは、魔力も剣の才能もない「ごく普通」の地味な女性。 ある日のパーティーで、婚約者であるジェラルド第二王子から「地味で無能で嫉妬深い」と罵られ、身に覚えのない罪で婚約破棄を突きつけられてしまう。 しかし、断罪劇は予想外の展開へ。

婚約破棄だ!と言われ実家に帰ったら、最推しに餌付けされます

黒猫かの
恋愛
王国の第一王子クレイスから、衆人環視の中 で婚約破棄を言い渡されたローゼン侯爵令嬢ノエル。

転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど⁉︎

水月華
恋愛
ヘンリエッタ・スタンホープは8歳の時に前世の記憶を思い出す。最初は混乱したが、じきに貴族生活に順応し始める。・・・が、ある時気づく。 もしかして‘’私‘’って悪役令嬢ポジションでは?整った容姿。申し分ない身分。・・・だけなら疑わなかったが、ある時ふと言われたのである。「昔のヘンリエッタは我儘だったのにこんなに立派になって」と。 振り返れば記憶が戻る前は嫌いな食べ物が出ると癇癪を起こし、着たいドレスがないと癇癪を起こし…。私めっちゃ性格悪かった!! え?記憶戻らなかったらそのままだった=悪役令嬢!?いやいや確かに前世では転生して悪役令嬢とか流行ってたけどまさか自分が!? でもヘンリエッタ・スタンホープなんて知らないし、私どうすればいいのー!? と、とにかく攻略対象者候補たちには必要以上に近づかない様にしよう! 前世の記憶のせいで恋愛なんて面倒くさいし、政略結婚じゃないなら出来れば避けたい! だからこっちに熱い眼差しを送らないで! 答えられないんです! これは悪役令嬢(?)の侯爵令嬢があるかもしれない破滅フラグを手探りで回避しようとするお話。 または前世の記憶から臆病になっている彼女が再び大切な人を見つけるお話。 小説家になろうでも投稿してます。 こちらは全話投稿してますので、先を読みたいと思ってくださればそちらからもよろしくお願いします。

前世の記憶を取り戻した元クズ令嬢は毎日が楽しくてたまりません

Karamimi
恋愛
公爵令嬢のソフィーナは、非常に我が儘で傲慢で、どしうようもないクズ令嬢だった。そんなソフィーナだったが、事故の影響で前世の記憶をとり戻す。 前世では体が弱く、やりたい事も何もできずに短い生涯を終えた彼女は、過去の自分の行いを恥、真面目に生きるとともに前世でできなかったと事を目いっぱい楽しもうと、新たな人生を歩み始めた。 外を出て美味しい空気を吸う、綺麗な花々を見る、些細な事でも幸せを感じるソフィーナは、険悪だった兄との関係もあっという間に改善させた。 もちろん、本人にはそんな自覚はない。ただ、今までの行いを詫びただけだ。そう、なぜか彼女には、人を魅了させる力を持っていたのだ。 そんな中、この国の王太子でもあるファラオ殿下の15歳のお誕生日パーティに参加する事になったソフィーナは… どうしようもないクズだった令嬢が、前世の記憶を取り戻し、次々と周りを虜にしながら本当の幸せを掴むまでのお話しです。 カクヨムでも同時連載してます。 よろしくお願いします。

婚約破棄に、承知いたしました。と返したら爆笑されました。

パリパリかぷちーの
恋愛
公爵令嬢カルルは、ある夜会で王太子ジェラールから婚約破棄を言い渡される。しかし、カルルは泣くどころか、これまで立て替えていた経費や労働対価の「莫大な請求書」をその場で叩きつけた。

処理中です...