目が覚めたら奇妙な同居生活が始まりました。気にしたら負けなのでこのまま生きます。

kei

文字の大きさ
53 / 71

変貌と終焉 【領主視点】

しおりを挟む

 アデレードの変容した姿に誰もが驚愕していた。
 足元に出現した魔法陣が何時の間にか彼女を取り込む檻の様に半円状の結界を形成していた。逃がさぬためか。
 籠の檻に閉じ込められた彼女の面貌は苦悶を浮かべ、それが酷く歪に見える。まるで醜悪な彼女の心がおもてに現れたのかと錯覚してしまう。

 檻の中の彼女は激しく悶え苦しみ、泣き叫ぶ。

 (一体、彼女の身に何が起こっているのだ‥‥あの苦しみ様は)
 
 目の前の出来事に理解が追い付かず、さりとて救出出来るはずもなく。
 私達に出来たことはその姿を目に焼き尽くすだけだった。

 「ふっははは! これで、ジョアンナ様や旦那様の仇は取った! ははは、後は魔力を集めれば」

 ラウル魔導士が恍惚の表情で手にした短剣を新たに懐から取り出した本に突き刺し呪文を唱える。

 私からは呪文の内容は聞き取れないが、ゾクリと背筋に冷たいものが走ったのだ。不吉な呪文なのか。
 ああ、あの短剣は先程アデレードの頬を傷つけた物であったな。
 彼女の血が付着した短剣を? 

 その意味を知るのは、彼女の身体から放出された魔力をラウル魔導士の手にした本に吸収されていく様子を目にして、あの本が魔道具だと気付いた時だ。

 魔力を抜き出す媒体として彼女の血を使ったのか?
 状況が把握出来ていない私ではラウル魔導士を止められない。
 
 「はっ、はは、こうも簡単に魔力が集まるとは。これで…」

 本の形態だがれっきとした魔道具に魔力が吸収されていく。その傍らでアデレードが力なく地に崩れ落ちた。容姿端麗の彼女の姿は見る影もなく老婆の如く皺枯れた姿へと変貌していったのだ。

 (なっ!! ア、アデレード!)

 愕然とした私達はラウル魔導士を見る目が恐怖へと変わる。その彼はこちらに関心がないのか、一心に魔道具を見つめていた。

 「はっ?! これは、どうしたのだ?! まっ、魔力が! くっ!」

 ラウル魔導士の手にある本が一瞬眩く光ったかと思うと、音を立てて亀裂が入り本が裂けた。と、同時に籠の檻であった結界も魔法陣も禍々しい邪気も、全てが消え去りその場に残ったのは老婆の姿となったアデレードと茫然自失のラウル魔導士。
 
 「な、何故だ‥‥何故なのだ、し、使徒さ…ま、私は言われた通りにし…」

 彼は目を見開き信じられないと言った顔で、何故だと言葉を零す。

 呆然と立ち尽くす彼の手から魔道具である裂傷した本がボロボロと指の間から零れ落ちていく。あっけなく彼の復讐は終わりを告げたのだ。

 「あ、あああ‥‥ああ、使徒様‥‥ジョアンナ様、旦那様‥…」

 涙を流し嘆く彼を漸く身体の自由を取り戻した騎士達が取り押さえ、アデレードの身柄も確保出来た。

 (これで‥‥終わったのだろうか‥‥)



 
 「こ、これは‥…遅かったか」

 
 客室から現れ呟くラグザスの声がやけに耳に残る。

 (ああ、終わったのだな)

 私は一度は死の影を感じたこの騒動が終わったのだと内心で安堵した。

 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました

okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。

転生したら、伯爵家の嫡子で勝ち組!だけど脳内に神様ぽいのが囁いて、色々依頼する。これって異世界ブラック企業?それとも社畜?誰か助けて

ゆうた
ファンタジー
森の国編 ヴェルトゥール王国戦記  大学2年生の誠一は、大学生活をまったりと過ごしていた。 それが何の因果か、異世界に突然、転生してしまった。  生まれも育ちも恵まれた環境の伯爵家の嫡男に転生したから、 まったりのんびりライフを楽しもうとしていた。  しかし、なぜか脳に直接、神様ぽいのから、四六時中、依頼がくる。 無視すると、身体中がキリキリと痛むし、うるさいしで、依頼をこなす。 これって異世界ブラック企業?神様の社畜的な感じ?  依頼をこなしてると、いつの間か英雄扱いで、 いろんな所から依頼がひっきりなし舞い込む。 誰かこの悪循環、何とかして! まったりどころか、ヘロヘロな毎日!誰か助けて

「俺が勇者一行に?嫌です」

東稔 雨紗霧
ファンタジー
異世界に転生したけれども特にチートも無く前世の知識を生かせる訳でも無く凡庸な人間として過ごしていたある日、魔王が現れたらしい。 物見遊山がてら勇者のお披露目式に行ってみると勇者と目が合った。 は?無理

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

【第2章完結】最強な精霊王に転生しました。のんびりライフを送りたかったのに、問題にばかり巻き込まれるのはなんで?

山咲莉亜
ファンタジー
 ある日、高校二年生だった桜井渚は魔法を扱うことができ、世界最強とされる精霊王に転生した。家族で海に遊びに行ったが遊んでいる最中に溺れた幼い弟を助け、代わりに自分が死んでしまったのだ。  だけど正直、俺は精霊王の立場に興味はない。精霊らしく、のんびり気楽に生きてみせるよ。  趣味の寝ることと読書だけをしてマイペースに生きるつもりだったナギサだが、優しく仲間思いな性格が災いして次々とトラブルに巻き込まれていく。果たしてナギサはそれらを乗り越えていくことができるのか。そして彼の行動原理とは……?  ロマンス、コメディ、シリアス───これは物語が進むにつれて露わになるナギサの闇やトラブルを共に乗り越えていく仲間達の物語。 ※HOT男性ランキング最高6位でした。ありがとうございました!

町工場の専務が異世界に転生しました。辺境伯の嫡男として生きて行きます!

トリガー
ファンタジー
町工場の専務が女神の力で異世界に転生します。剣や魔法を使い成長していく異世界ファンタジー

猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める

遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】 猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。 そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。 まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。

処理中です...