目が覚めたら奇妙な同居生活が始まりました。気にしたら負けなのでこのまま生きます。

kei

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負の感情 【領主視点】

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 「もう‥‥遅いんですよ領主様」

 「な、何を‥…」


 ラウル魔導士の追い詰められた表情に彼の本気さが見て取れた。
 彼は、アデレードを許す気はないのか‥…
 私は彼の話を鵜呑みには出来ないと思うも、もしもあの話が真実ならばと自分に迷いが生じるのを止められない。

 (ああ、私はアデレードを許すことは出来ないだろう‥…)

  仮に罪を犯したとしても私の取る行動は法の裁きを受けさすことだ。領地内の犯罪としても事が事なだけに王都で裁かれることは分かる。その時、私は、正気でいられるのか?

 真実を詳らかに。公の元、正義の鉄槌を下すべきだ。そう頭では理解しているが、私はアデレードの死を、いやこの手で殺してやりたいと、願うだろう。

 ああ、何故私は、この手で仇を打つことが叶わないのか‥‥

 私は負の感情に呑まれ沸々と憎しみが湧き出す。
 
 (この女がジョアンナを、息子を、皆を殺したのか‥‥ゆ、許せるものか)

 「領主様、導師様が神官をお呼びです」
 
 私は後方から来た騎士の声ではっと正気に返った。

 (わ、私は今何を、考えたのだ‥…)

 自分の殺意にゾッとした。




 そうだ、ラグザスは動けないのだ。
 だが私達もこの場から動けない‥‥


 「『呪縛』我が願いを聞き給え。今ここに供物を捧げる。我が望みを叶え給え。この女の罪は貪欲さだ! こいつの命を捧げて一族全員を呪ってやる。誰一人逃がしやしない! こいつは供物だ。ふっははは」
 「キャア! や、止めて! ああぁぁ痛いっ! 顔が、顔が…わたくしの顔に傷が! い、いやあ!」

 ラウル魔導士が手にした短剣でアデレードの頬を切った。狂気の沙汰の彼は狂喜の声で『発動』と呪文を唱えた。


 「領主様! ここは危険です、お逃げ下さい!」
 「お前達、領主様をお守りしろ!」
 「アデレード様! 早くお助けするぞ!」

 
 気が付けば私は騎士達に囲まれ守られていた。剣を構え対峙するも魔導士相手では分が悪かろう。彼は遠隔で攻撃が出来るのだ。近接戦の騎士では立ち向かえない。だからこの場は硬直した状態だ。

 だが、
 
 「い、いやあ! あああ、助けて‥‥」

 アデレードの絶望した声だ。

 彼女とラウル魔導士の足元に突如として現れた魔法陣が青白く光る。何か術を発動させたのか。
 魔法陣に立ち上る赤黒い靄が彼女の身体に纏わりつく。まるで意志を持つ生き物の様に蠢く禍々しさに我等は言葉を失った。
 靄は彼女を逃がさないとばかりに憑りつく。
 目にした光景を疑いたくなる。
 私達は恐怖で身体が硬直し声も発せず、ただただ目線だけを動かす。

 圧倒的な負の感情が押し寄せる。屈強さを誇っていた騎士達も声を出すことも動くことも出来ず人外ならぬモノがアデレードの身体を蝕み始めた。


 「ぎゃっ、がっ、がぁ、あがっが」


 叫び声かうめき声か、彼女の口から漏れ出る声は本当に彼女が発したのか。苦しみのた打ち出す彼女の姿が異常だ。


 彼女の身体に禍々しい邪気が集まり出しその姿は変貌していく。

 (な、何だアレは、悍ましい‥…アレがアデレードだと?)

 人の姿を辛うじて保ているが顔や肌の見える箇所に紋様なものが見える。
 あれは‥‥ラグザスが言っていた呪紋か?

 
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