目が覚めたら奇妙な同居生活が始まりました。気にしたら負けなのでこのまま生きます。

kei

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変貌と終焉 【領主視点】

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 アデレードの変容した姿に誰もが驚愕していた。
 足元に出現した魔法陣が何時の間にか彼女を取り込む檻の様に半円状の結界を形成していた。逃がさぬためか。
 籠の檻に閉じ込められた彼女の面貌は苦悶を浮かべ、それが酷く歪に見える。まるで醜悪な彼女の心がおもてに現れたのかと錯覚してしまう。

 檻の中の彼女は激しく悶え苦しみ、泣き叫ぶ。

 (一体、彼女の身に何が起こっているのだ‥‥あの苦しみ様は)
 
 目の前の出来事に理解が追い付かず、さりとて救出出来るはずもなく。
 私達に出来たことはその姿を目に焼き尽くすだけだった。

 「ふっははは! これで、ジョアンナ様や旦那様の仇は取った! ははは、後は魔力を集めれば」

 ラウル魔導士が恍惚の表情で手にした短剣を新たに懐から取り出した本に突き刺し呪文を唱える。

 私からは呪文の内容は聞き取れないが、ゾクリと背筋に冷たいものが走ったのだ。不吉な呪文なのか。
 ああ、あの短剣は先程アデレードの頬を傷つけた物であったな。
 彼女の血が付着した短剣を? 

 その意味を知るのは、彼女の身体から放出された魔力をラウル魔導士の手にした本に吸収されていく様子を目にして、あの本が魔道具だと気付いた時だ。

 魔力を抜き出す媒体として彼女の血を使ったのか?
 状況が把握出来ていない私ではラウル魔導士を止められない。
 
 「はっ、はは、こうも簡単に魔力が集まるとは。これで…」

 本の形態だがれっきとした魔道具に魔力が吸収されていく。その傍らでアデレードが力なく地に崩れ落ちた。容姿端麗の彼女の姿は見る影もなく老婆の如く皺枯れた姿へと変貌していったのだ。

 (なっ!! ア、アデレード!)

 愕然とした私達はラウル魔導士を見る目が恐怖へと変わる。その彼はこちらに関心がないのか、一心に魔道具を見つめていた。

 「はっ?! これは、どうしたのだ?! まっ、魔力が! くっ!」

 ラウル魔導士の手にある本が一瞬眩く光ったかと思うと、音を立てて亀裂が入り本が裂けた。と、同時に籠の檻であった結界も魔法陣も禍々しい邪気も、全てが消え去りその場に残ったのは老婆の姿となったアデレードと茫然自失のラウル魔導士。
 
 「な、何故だ‥‥何故なのだ、し、使徒さ…ま、私は言われた通りにし…」

 彼は目を見開き信じられないと言った顔で、何故だと言葉を零す。

 呆然と立ち尽くす彼の手から魔道具である裂傷した本がボロボロと指の間から零れ落ちていく。あっけなく彼の復讐は終わりを告げたのだ。

 「あ、あああ‥‥ああ、使徒様‥‥ジョアンナ様、旦那様‥…」

 涙を流し嘆く彼を漸く身体の自由を取り戻した騎士達が取り押さえ、アデレードの身柄も確保出来た。

 (これで‥‥終わったのだろうか‥‥)



 
 「こ、これは‥…遅かったか」

 
 客室から現れ呟くラグザスの声がやけに耳に残る。

 (ああ、終わったのだな)

 私は一度は死の影を感じたこの騒動が終わったのだと内心で安堵した。

 
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