目が覚めたら奇妙な同居生活が始まりました。気にしたら負けなのでこのまま生きます。

kei

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ラグザス

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事件から数日後。

ラグザスは仲間の伝手を使って一人調査に赴く予定だったが、アイナの尋常じゃない魔力量を知って計画を変更しなければならなくなった。

(魔力があり過ぎるってのも、問題だな。制御が出来ないと魔力暴走を起こしかねない)

幼い子はどうしても精神が未熟で感情に左右され易い。昂ると早々抑え込むことができない。魔力は情動で簡単に溢れてしまう。と言えど該当するのは魔力量の多い子になる。

幸か不幸か。アイナは見た目に反して大人びた子だ。癇癪も起こさなければ我が儘も言わない。どちらかといえば大人の考えを読む聡さがある。ただ、ちょっと常識が足りない不思議な子だがと、ラグザスは目下の問題児、アイナを思い浮かべて溜息を吐く。

「はぁ~。あのガキ、どっかちぐはぐでおかしいんだよなぁ」

そうは言っても弟子にした以上、面倒は見なくてはいけない。勿論、最低限の。今必要なのは、魔力操作かと思考をグルグル巡らせアイナの様子を思い出していた。

(ああ、駄目だ。ちょっと説明したが理解しようとしていない。端から魔法を信じちゃいねえ。おかしいだろ?!)

この世界、魔法は人々の生活に根付いたものだ。平民でも少量だが魔力はある。魔石や魔道具を使えば火を起こしたり水を出したり、明かりを灯すこともできる。ただ、量が少ないと使える頻度が少ないので不便ではあるが。それを思うとアイナの全く信じていない言動が不思議で仕方がないとラグザスは頭を捻る。そんな幼女にどう魔力の扱いを教えればいいのかと頭をガシガシ掻いて気を逸らす。

(ちっ、めんどくせー)

考えるのが飽きたラグザスは、思考が適当になり始めた。

(あー何かなかったかな、おっ! あれがあった! 上手く出来りゃあ、いい小遣い稼ぎにもなるな!)

素晴らしい閃き。もしや自分は天才では? と自画自賛だ。内職を訓練に充てれば駄賃が入る。これはもう一石二鳥だとぬか喜びのラグザスである。

(屑魔石ってあったっけ?)

恐らくアイナがコレを知れば訓練じゃないんですか? と文句を言いそうだが師匠権限で黙らせればいいかと、最低な考えに染まっていた。師匠である自分に貢ぐのは弟子の役目と信じて疑わない。かなりゲスイ師匠である。メンドウクサイ手解きも酒になると思えば、憂鬱だった気持ちがカラっと晴れる。現金な男である。



妙案だ妙案だと内心で浮かれている間に呼び出された執務室に辿り着いた。ノックをして入室の許可を貰う。室内には恐らく文官と思われる男が一人。「お待ちしておりました」と迎え入れられた。

書類と奮闘していた領主が書き物の手を止め顔を上げた。碌に眠れていないのだろう、疲れた顔だ。目が合うと何とも情けない表情で「仕事が多い」と呟いた。

(まぁ確かになぁ)

普段の領地の執務に魔導士が興した事件。三年前の災厄の復興支援もある。
事の起こりは第二夫人と魔導士崩れがしでかした凶行。この領地にある結界に細工を施し魔物の侵入を許したことだ。
その動機が横恋慕となれば巻き込まれた者達は堪ったもんじゃないだろう。今回の事件で第二夫人は醜悪な老婆へと変貌した上に瀕死の状態だ。一命は取り留めたらしいがまだ予断を許さないという。
死ねばいいとは思わないが同情する気にもなれない。だが天に裁かれるだろうとは思っている。
まだ事件の全貌は不明。迂闊なことは言えないが、一人の女の執着が引き起こした過去は消えない。友の心に深い爪痕を刻みつけた。

(あの女も本望だろうよ。憎しみであれ後悔であれ、あいつの心にてめえを植え付けたんだからな)

友が自分自身もあの女のことも許すとは思えない。悪夢に苛まれるのだろうとソファに座るよう招く友を見ながらラグザスは心で悲しんだ。



「ラグザスよ、私は王都に向かうがお前はどうする? 以前、王宮図書館の利用を望んでいたが、私の口利きであれば入室の許可が下りるだろう」

一瞬、何を呑気に? と呆れたが、事情聴取かと思い直す。凄惨な事件は容疑者の不審死という何とも歯痒くスッキリしない終わりを見せた。それに第二夫人の罪と実家の悪事の件もある。

(これからが正念場か…‥)

三年前の厄災の傷跡が深く領地は疲労したまま。そして今回の事件。第二夫人の実家の援助で凌ぎを削っている現状、今以上に領地が困窮しそうだ。

「どうした? 気が進まないのか?」

つい、逸れてしまう思考を戻し、王都への同行を逡巡する。

事件を思えば調べ足りない不満が残るが一旦ここを離れるのもありかも知れないと、考えに余裕を持たせた。頭の角に、だがしっかり存在を示す幼女の生意気な姿を思い浮かべ(ああ、クソガキ、どうしよう)と扱いに困惑した。

(置いて行ってもいいが‥‥いや、一度呪いを受けた身だ。不運を招き易くなっている可能性を‥‥)

今回の王都は諦めるべきかと少々残念な気持ちに支配されかかっていた。
崩壊した呪術具と魔法陣は気になる。なるのだが呪具にされかかった幼女をこの地に放置するのは流石に不味いだろうと、怠惰なラグザスでもそれぐらいの分別はつく。

(さて、どうしたもんか)

「ああ、あの幼子のことが気になるのか。心配なら連れて行けば良いではないか? お主の子と名乗らせればこれ以上の身元の確かさはないぞ?」

クックックと噛み殺して笑うのは友のクルクカーン領主

「ほざくな。俺の弟子でいだろうよ。あーそうだな連れて行くか」
「ではしっかりと娘の世話をするように。よいなラグザス…‥ブフゥ」

自分が言い出したのに吹きだしたクルクカーンを恨みがましく睨むラグザス。

そんな彼だが実利に関しては切り替えの早い男だ。既に意識は王都の馴染みの女に向いている。幼女には仕事‥‥訓練をさせておけば手が掛からないだろう。世話は女友達に任せればいいかと早速育児放棄だ。

面倒見は悪くはないが、無責任な男である。
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