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第十三章
長い夜
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大丈夫か、王国貴族。
それが報告を聞いた感想だ。
お騒がせなお馬鹿皇子やわがまま皇女に振り回された感が拭えない。
当初、皇子の交渉項目の一つに親父の解放が上がってたはず。そうお祖父ちゃんから聞いたよ。
だけど、蓋を開けて見れば、傍若無人の皇子達の尻拭い役を親父達は押しつけられた形だった。交渉力以前の話かとドッと疲れが出たわ。
だが、ホッとしたのも束の間。
親父や公爵家は新たな窮地に追い込まれたことをライオネルの報告で知った。
‥‥マジか! やってくれたな。
お祖父ちゃんの作戦を知っている俺は、表情を取り繕ったものの内心穏やかじゃない。お祖父ちゃんが奇襲を行えば、確実に公爵家は破滅だ。
「義祖父様の危惧した通りですね」
冷え切った声。あ、怒ってる。
「ホスト役と領地への招致はご当主様の申し出とされています。それこそ若君をダシに皇女殿下に領地へと誘ったと噂が。‥‥その出元はお茶席に参加した貴族なのですが、皇女殿下が誤解を招く言い方で誘導した模様です。行程の最後にザックバイヤーグラヤス公爵領に訪問、その後帰国。これが新たに決定された使節団の予定です」
「え? 使節団が領地に? 誘導って、皇女殿下は何を言い出したの?」
気まずそうにライオネルは言葉を繋ぐ。
「事の発端は皇女殿下がご出席なさったお茶席です。あるご令嬢が帝国学院の話題を口に。皇女殿下が、その‥‥当時、相当懇意だった若君の訃報を聞いて、悲しみに暮れたと話され‥‥あ、いえ、それはその皇女殿下の、願望ですが事情を知らないご令嬢が悲恋‥‥モゴモゴ…‥盛り上が‥‥ゲフンゲフン‥‥あー、まぁそういうわけです」
え? どういうわけ?
ライオネル、お腹を押さえて気の毒なほど蒼白。何となくこれ以上聞いちゃいけない気がした
「領地に、ですか」
思案するように黙り込んだ義兄。まあ考えるのは任すわ。
俺は他にも知りたいことがあったのでライオネルに尋ねた。
「お義兄様の事件に関して城内ではどのような扱いでしたの?」
そう。お祖父ちゃんが言及しなかった義兄の暗殺(仮?)事件。
こんな美味しい事案を皇帝が利用しないとは思えない。
義兄は帝国貴族籍を取得していた。
陛下や公爵たちの作戦を明かせないとしても囮役で収監していた公爵子息、しかも帝国貴族籍を持った魔道具技師が城内の牢で暗殺された事件。本人が生きていたとしても実際犯行はあった。
「それがその‥‥個人的に恨みを持った元貴族子息が凶行に至り、牢番を道連れに自死。犯人死亡で事件の捜査は終了です。その犯人も既に家門から放出された者でしたので生家はお咎めなしでした」
「それは、酷いわね‥‥。それで、その犯人の名は知っていて?」
「‥‥ミキール。ギャティギルソン侯爵家の次男だった男です」
「え…‥彼が? 元第一王子殿下の側近候補で第一王女殿下の元婚約者よ。そう、その彼が‥‥」
ホント酷い話。ヒロインと悪事に手を染めた結果、これか。レティエルと極力関りを持たせないよう振る舞ってたから、こいつのことはあまり知らない。でも、ちょっと、後味が悪いわ。
トカゲのしっぽ切りされたわけか。
義兄が狙われた理由は知らないけど、公爵家の敵に変わりないか。
そうだよ、この事件も黒幕が捕まってないよ。でもまぁ義兄が報復すると思う。
「使節団もこの件については口を噤んでます。とは言え皇女殿下は軽はずみでしたが。王国側も触れて欲しくない事件ですからね。遺族であるご当主様が王国の責となる発言をなさらないのを良い事に対応を丸投げしています」
「お父様も強くは出れませんもの。仕方ないわ」
クソだな、王国!
「若君は帝国と契約された魔道具技師です。本来ならば収監先の城内で起こった凶行ですので王国の不手際として賠償問題に発展してもおかしくないのですが‥‥」
探るような視線を向けられたが、これについては俺も口を噤む。
ちょっと本人生きてるからね、これ、取り上げられたら逆に不味くない?
ーーーーーーーーー
報告を済ませた護衛達を下がらせ、義兄と二人、危機的状況に陥った親父達をどう助けるかを話し合う。
「お父様とお母様を使節団から引き離すのは無理なのね‥‥」
「そうだね。やられたよ。恐らく皇子が義父上の件を持ち出したことで、名目が立った。皇子の意向に沿う形で義父上の排斥を狙ったんだろう。義祖父様が義母上を連れて帰りたいと仰ったのはこのことを予想してか、もしくは何かを仄めかされたのか。どちらにしろ義祖父様に計画を見直してもらうしかないね」
「‥‥それってお祖父様に手を引けってこと? でもそうすると今度はお祖父様や叔父様が…」
重い沈黙。
義兄も言葉にするのを躊躇ってるのがよくわかる。
でもこのままだと、両方とも共倒れになっちゃう。それだけは避けたい。
だんまりの時間が刻々と過ぎて行く。
そうするうちに義兄が重い口を開ける。
「国内で両殿下を死なすわけにはいかなくなったね」
使節団への強襲を阻止すれば親父達は助かる。だが今度はお祖父ちゃんやファーレン家が煽りを食う。
‥‥おおう、四面楚歌じゃん。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ミキール・ギャティギルソン、第二王女殿下の元婚約者です。
申し訳ございません、記載ミスです。
第一王女から第二王女に訂正しました。(12/12)
それが報告を聞いた感想だ。
お騒がせなお馬鹿皇子やわがまま皇女に振り回された感が拭えない。
当初、皇子の交渉項目の一つに親父の解放が上がってたはず。そうお祖父ちゃんから聞いたよ。
だけど、蓋を開けて見れば、傍若無人の皇子達の尻拭い役を親父達は押しつけられた形だった。交渉力以前の話かとドッと疲れが出たわ。
だが、ホッとしたのも束の間。
親父や公爵家は新たな窮地に追い込まれたことをライオネルの報告で知った。
‥‥マジか! やってくれたな。
お祖父ちゃんの作戦を知っている俺は、表情を取り繕ったものの内心穏やかじゃない。お祖父ちゃんが奇襲を行えば、確実に公爵家は破滅だ。
「義祖父様の危惧した通りですね」
冷え切った声。あ、怒ってる。
「ホスト役と領地への招致はご当主様の申し出とされています。それこそ若君をダシに皇女殿下に領地へと誘ったと噂が。‥‥その出元はお茶席に参加した貴族なのですが、皇女殿下が誤解を招く言い方で誘導した模様です。行程の最後にザックバイヤーグラヤス公爵領に訪問、その後帰国。これが新たに決定された使節団の予定です」
「え? 使節団が領地に? 誘導って、皇女殿下は何を言い出したの?」
気まずそうにライオネルは言葉を繋ぐ。
「事の発端は皇女殿下がご出席なさったお茶席です。あるご令嬢が帝国学院の話題を口に。皇女殿下が、その‥‥当時、相当懇意だった若君の訃報を聞いて、悲しみに暮れたと話され‥‥あ、いえ、それはその皇女殿下の、願望ですが事情を知らないご令嬢が悲恋‥‥モゴモゴ…‥盛り上が‥‥ゲフンゲフン‥‥あー、まぁそういうわけです」
え? どういうわけ?
ライオネル、お腹を押さえて気の毒なほど蒼白。何となくこれ以上聞いちゃいけない気がした
「領地に、ですか」
思案するように黙り込んだ義兄。まあ考えるのは任すわ。
俺は他にも知りたいことがあったのでライオネルに尋ねた。
「お義兄様の事件に関して城内ではどのような扱いでしたの?」
そう。お祖父ちゃんが言及しなかった義兄の暗殺(仮?)事件。
こんな美味しい事案を皇帝が利用しないとは思えない。
義兄は帝国貴族籍を取得していた。
陛下や公爵たちの作戦を明かせないとしても囮役で収監していた公爵子息、しかも帝国貴族籍を持った魔道具技師が城内の牢で暗殺された事件。本人が生きていたとしても実際犯行はあった。
「それがその‥‥個人的に恨みを持った元貴族子息が凶行に至り、牢番を道連れに自死。犯人死亡で事件の捜査は終了です。その犯人も既に家門から放出された者でしたので生家はお咎めなしでした」
「それは、酷いわね‥‥。それで、その犯人の名は知っていて?」
「‥‥ミキール。ギャティギルソン侯爵家の次男だった男です」
「え…‥彼が? 元第一王子殿下の側近候補で第一王女殿下の元婚約者よ。そう、その彼が‥‥」
ホント酷い話。ヒロインと悪事に手を染めた結果、これか。レティエルと極力関りを持たせないよう振る舞ってたから、こいつのことはあまり知らない。でも、ちょっと、後味が悪いわ。
トカゲのしっぽ切りされたわけか。
義兄が狙われた理由は知らないけど、公爵家の敵に変わりないか。
そうだよ、この事件も黒幕が捕まってないよ。でもまぁ義兄が報復すると思う。
「使節団もこの件については口を噤んでます。とは言え皇女殿下は軽はずみでしたが。王国側も触れて欲しくない事件ですからね。遺族であるご当主様が王国の責となる発言をなさらないのを良い事に対応を丸投げしています」
「お父様も強くは出れませんもの。仕方ないわ」
クソだな、王国!
「若君は帝国と契約された魔道具技師です。本来ならば収監先の城内で起こった凶行ですので王国の不手際として賠償問題に発展してもおかしくないのですが‥‥」
探るような視線を向けられたが、これについては俺も口を噤む。
ちょっと本人生きてるからね、これ、取り上げられたら逆に不味くない?
ーーーーーーーーー
報告を済ませた護衛達を下がらせ、義兄と二人、危機的状況に陥った親父達をどう助けるかを話し合う。
「お父様とお母様を使節団から引き離すのは無理なのね‥‥」
「そうだね。やられたよ。恐らく皇子が義父上の件を持ち出したことで、名目が立った。皇子の意向に沿う形で義父上の排斥を狙ったんだろう。義祖父様が義母上を連れて帰りたいと仰ったのはこのことを予想してか、もしくは何かを仄めかされたのか。どちらにしろ義祖父様に計画を見直してもらうしかないね」
「‥‥それってお祖父様に手を引けってこと? でもそうすると今度はお祖父様や叔父様が…」
重い沈黙。
義兄も言葉にするのを躊躇ってるのがよくわかる。
でもこのままだと、両方とも共倒れになっちゃう。それだけは避けたい。
だんまりの時間が刻々と過ぎて行く。
そうするうちに義兄が重い口を開ける。
「国内で両殿下を死なすわけにはいかなくなったね」
使節団への強襲を阻止すれば親父達は助かる。だが今度はお祖父ちゃんやファーレン家が煽りを食う。
‥‥おおう、四面楚歌じゃん。
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ミキール・ギャティギルソン、第二王女殿下の元婚約者です。
申し訳ございません、記載ミスです。
第一王女から第二王女に訂正しました。(12/12)
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