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第十四章 王が住まう場所
敵認定ー⑥
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第三王子をアウェイに送るに至った条件は何か。
あわよくば、交渉ネタをゲットしたい。俺の質問はそんな不純な動機からだ。
「おや、レティは政治に興味があったのかな?」
あからさまに。はぐらかす義兄。
これは、外交折衝は帝国が上手、単に、陛下が押し切られたと言いたいのか。
それとも、触れて欲しくないからか。
・・・外交折衝に関して省略は、妥当だな。うん、別にいいや。
俺が欲したのはもっと個人的なもの。
「お義兄様、白状しますわ。あわよくば弱みを掴みたいと思ったの。だって、いざという時に、交渉の手札は必要でしょ?」
・・・持ってて安心、交渉カード。
そんな打算な考えがひょっこりしたわけ。脅しと保身は大事でしょ?
「やはり、無謀なことを考えていましたか・・・」ぶつぶつと口の中で語る義兄の声は、聞き取れなかった。おまけにどこか遠くを見ている。
・・・おーい。無視かーい。
「はぁ。レティが陛下と直接交渉することはないからね? いいかい、相手は交渉の価値もないのだよ」
「えー、お義兄様って、辛辣ですわ」
・・・陛下、無価値だってさ。
辛口批評の義兄に驚かされたが、言いたいことは分かる気がした。
我が家に課せられた囮役も、中途半端感が酷い。あれでは、親父の監禁と公爵領へ踏み込むのが目的と勘繰られても仕方がない、やり方が鼻についたのだ。
「お義兄様がそこまで仰る理由は、何ですの?」
言葉が示した様に、義兄から見て陛下は無価値だそうだ。忠誠心の一欠けらも残っていないと判明した。
陛下の下へと父の補佐で義兄は何度も目通りが許された。恐らく為人を知る機会は多かったのだろう。
・・・二人の間に確執が・・・軋轢の方かな? はは、まさか。そんなわけないよ・・・ねぇ。
公爵家次期当主の立場でありながら謀略面を買われた。人目を忍び、闇に紛れて情報を抜く術を、生き抜く術を、幼少の頃から叩き込まれたのが義兄だ。勿論、我が家の当主教育である。
それに合わせ徹底的に主君に従うよう躾けられるという。恐らく血の盟約への抵抗感をなくすため――理解したくないのに、わかってしまった。
以前より疑問に思っていたが、義兄を見ていると、公爵家の暗部の者達よりも深い闇に潜っているのではと思えてしまう。とはいえ、本人が水を得た魚の様にイキイキと輝いたのでは、人格を疑って終わった。天職に出会えて何よりである。
本来、陛下へ捧げられるはずの忠誠心は親父に向いてしまった。全幅である。矯正不可らしく親父は匙を投げ・・・意思を尊重したのだと。
その忠誠心もレティエルへの家族愛も加わって、今や強火担。熱量が激ヤバ。
我が家への忠誠心が高まるのと反比例で王家への忠誠心が減った。今や塩漬け株。扱いに困る。
それだけのものを見せられたのだと思うが、ライムフォードに手を貸す気になったのは、陛下への叛意なのかも。
ホンの僅かな間、押し黙った義兄に添う。
「資質の問題だね。この一年ですっかり奸臣の意に従う愚王に成果てたのは残念だよ」
忌々しさを吐き出す義兄。心底嫌悪しているのが伝わってくる。
「だから、ライムフォード殿下を推して、陛下の早期退位を望むのですね。お義兄様」
俺の言葉に、パアっと晴れやかに応える義兄。
「ああ! レティは聡い子だ。ふふ、王家には期待していないが、道理が通じるお方は殿下ぐらいだからね。交渉の手札を揃えてあるよ」
「まあ! 流石はお義兄様! では、さっさとお父様の契約を解いて、交渉しましょう!」
・・・本題は忘れてないよ?
「そうだね。先ず、邸の掌握と襲撃犯の供述を終えてからにしようね? 契約内容も知りたいな。相手は、王族に近しい貴族の忠誠を、契約魔法で縛る卑劣な人物だ。血の盟約が本当に相互性があるのか調べてみたい。それに、契約者の不慮の死が与える影響も検証したいね。一人足りないが、まあ、試すに充分か。ふふ、レティ、そういうことだから、安全を確保するまで待って」
「あ、はい」
・・・えぐい。
「あ、待って待って、早まらないで!」
・・・おお、地の底から声が・・・ってか、ライムフォード、お前、起きてたの?!
どうやら息を潜めて盗み聞きしていたようだ。王子様が狸寝入りとは、姑息な。
薬の調合者である義兄は効果時間を熟知しているので、切れる頃合いを測っていたのだろう。介抱することもなく地べたに放置していたのは、ささやかな嫌がらせか。
因みに、他の皆さまは医療用魔道具や小型結界を使って睡眠中。結界の中で睡り薬で燻られる姿は、バル〇ン中みたい。
・・・あー、だから敢えて、陛下をディスったのかー。
聴こえるようにとは。抜け目のないオニイチャンに脱帽だ。
ライムフォードにつくと明言した上で交渉次第と釘をぶっすり刺したのは、やるねえ。
俺は心の中で拍手を送った。
今から交渉が始まるのかと思うと、ブルルっと身震いがした。義兄の放つ冷徹な視線と目の笑っていないイケメン王子様の仄暗い闇が真っ向からぶつかって、俺は腑抜けそうだ。
ここで、新たな策謀が生まれそうな予感。
ライムフォードの抱える問題が透けて見えそうだ。
・・・ヴァンダイグフ老を切り捨てようとした理由を聞かなきゃね。
あわよくば、交渉ネタをゲットしたい。俺の質問はそんな不純な動機からだ。
「おや、レティは政治に興味があったのかな?」
あからさまに。はぐらかす義兄。
これは、外交折衝は帝国が上手、単に、陛下が押し切られたと言いたいのか。
それとも、触れて欲しくないからか。
・・・外交折衝に関して省略は、妥当だな。うん、別にいいや。
俺が欲したのはもっと個人的なもの。
「お義兄様、白状しますわ。あわよくば弱みを掴みたいと思ったの。だって、いざという時に、交渉の手札は必要でしょ?」
・・・持ってて安心、交渉カード。
そんな打算な考えがひょっこりしたわけ。脅しと保身は大事でしょ?
「やはり、無謀なことを考えていましたか・・・」ぶつぶつと口の中で語る義兄の声は、聞き取れなかった。おまけにどこか遠くを見ている。
・・・おーい。無視かーい。
「はぁ。レティが陛下と直接交渉することはないからね? いいかい、相手は交渉の価値もないのだよ」
「えー、お義兄様って、辛辣ですわ」
・・・陛下、無価値だってさ。
辛口批評の義兄に驚かされたが、言いたいことは分かる気がした。
我が家に課せられた囮役も、中途半端感が酷い。あれでは、親父の監禁と公爵領へ踏み込むのが目的と勘繰られても仕方がない、やり方が鼻についたのだ。
「お義兄様がそこまで仰る理由は、何ですの?」
言葉が示した様に、義兄から見て陛下は無価値だそうだ。忠誠心の一欠けらも残っていないと判明した。
陛下の下へと父の補佐で義兄は何度も目通りが許された。恐らく為人を知る機会は多かったのだろう。
・・・二人の間に確執が・・・軋轢の方かな? はは、まさか。そんなわけないよ・・・ねぇ。
公爵家次期当主の立場でありながら謀略面を買われた。人目を忍び、闇に紛れて情報を抜く術を、生き抜く術を、幼少の頃から叩き込まれたのが義兄だ。勿論、我が家の当主教育である。
それに合わせ徹底的に主君に従うよう躾けられるという。恐らく血の盟約への抵抗感をなくすため――理解したくないのに、わかってしまった。
以前より疑問に思っていたが、義兄を見ていると、公爵家の暗部の者達よりも深い闇に潜っているのではと思えてしまう。とはいえ、本人が水を得た魚の様にイキイキと輝いたのでは、人格を疑って終わった。天職に出会えて何よりである。
本来、陛下へ捧げられるはずの忠誠心は親父に向いてしまった。全幅である。矯正不可らしく親父は匙を投げ・・・意思を尊重したのだと。
その忠誠心もレティエルへの家族愛も加わって、今や強火担。熱量が激ヤバ。
我が家への忠誠心が高まるのと反比例で王家への忠誠心が減った。今や塩漬け株。扱いに困る。
それだけのものを見せられたのだと思うが、ライムフォードに手を貸す気になったのは、陛下への叛意なのかも。
ホンの僅かな間、押し黙った義兄に添う。
「資質の問題だね。この一年ですっかり奸臣の意に従う愚王に成果てたのは残念だよ」
忌々しさを吐き出す義兄。心底嫌悪しているのが伝わってくる。
「だから、ライムフォード殿下を推して、陛下の早期退位を望むのですね。お義兄様」
俺の言葉に、パアっと晴れやかに応える義兄。
「ああ! レティは聡い子だ。ふふ、王家には期待していないが、道理が通じるお方は殿下ぐらいだからね。交渉の手札を揃えてあるよ」
「まあ! 流石はお義兄様! では、さっさとお父様の契約を解いて、交渉しましょう!」
・・・本題は忘れてないよ?
「そうだね。先ず、邸の掌握と襲撃犯の供述を終えてからにしようね? 契約内容も知りたいな。相手は、王族に近しい貴族の忠誠を、契約魔法で縛る卑劣な人物だ。血の盟約が本当に相互性があるのか調べてみたい。それに、契約者の不慮の死が与える影響も検証したいね。一人足りないが、まあ、試すに充分か。ふふ、レティ、そういうことだから、安全を確保するまで待って」
「あ、はい」
・・・えぐい。
「あ、待って待って、早まらないで!」
・・・おお、地の底から声が・・・ってか、ライムフォード、お前、起きてたの?!
どうやら息を潜めて盗み聞きしていたようだ。王子様が狸寝入りとは、姑息な。
薬の調合者である義兄は効果時間を熟知しているので、切れる頃合いを測っていたのだろう。介抱することもなく地べたに放置していたのは、ささやかな嫌がらせか。
因みに、他の皆さまは医療用魔道具や小型結界を使って睡眠中。結界の中で睡り薬で燻られる姿は、バル〇ン中みたい。
・・・あー、だから敢えて、陛下をディスったのかー。
聴こえるようにとは。抜け目のないオニイチャンに脱帽だ。
ライムフォードにつくと明言した上で交渉次第と釘をぶっすり刺したのは、やるねえ。
俺は心の中で拍手を送った。
今から交渉が始まるのかと思うと、ブルルっと身震いがした。義兄の放つ冷徹な視線と目の笑っていないイケメン王子様の仄暗い闇が真っ向からぶつかって、俺は腑抜けそうだ。
ここで、新たな策謀が生まれそうな予感。
ライムフォードの抱える問題が透けて見えそうだ。
・・・ヴァンダイグフ老を切り捨てようとした理由を聞かなきゃね。
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