2 / 59
1話 不審な音
しおりを挟む
ドンッガタタッ
「っ⁉︎」
家の玄関扉に中かがぶつかった音がして、朝起きたばかりで、顔を洗っていたアイリスは、驚いてその場で固まってしまった——
家と言っても小屋のようなもので、部屋は寝室兼リビングにしている小さな部屋と、その隣は小さなテーブルセットが置いてあるキッチン、あとはその奥にバスルームがあるだけの本当に簡単な作りで、扉も簡素なものだから、少しの衝撃でも、ものすごい音がした。
人気のない森の奥で、今は誰にも頼れない一人暮らし中のアイリスは、恐いが自分で確かめるしかないと奮い立ち、扉を開けて外を見ようとした。
しかし、扉を開けようとしたが、何か重いものが支えていてぴくりとも開かない。
仕方なく窓から出て玄関の方へまわり込み、音を立てないように壁の影に隠れて、そっと扉の方を覗いた。
「‼︎」
(人⁉︎人が倒れてる⁇…追手かしら…でも…でも、倒れてる人を放ってなんておけないわ!)
アイリスは自分のことより人命の方が優先だと、迷いを捨て、急いで駆け寄り声をかける。
「だ、大丈夫ですかっ⁉︎あのっ、聞こえますかっ⁉︎大丈夫ですかっ⁉︎」
アイリスは必死で呼びかけた。
うつ伏せに倒れているが、顔だけ横を向けているので覗き込むと、18歳の自分より少し歳上に見える男性だった。
この森の中を駆けずり回ったのか、羽織っているローブはあちこち切り裂いたように破れて汚れている。
呼びかけに全く反応がないため、アイリスはもう一度、さらに耳の近くで呼びかける。
「あのっ!大丈夫ですかっ⁉︎あのっ!!」
「………」
「だめだわ…全然動かない…どうしよう…まさか死んだりしてないわよね…」
アイリスは人が今まさに目の前で死んだのかもしれないという得も言われぬ緊張感と、助けられない自分の力の無さに対する恐怖心で手が震え始めた。
ゆっくり耳をその男性の口元に持っていくと、恐る恐る呼吸をしているか確かめる。
「よかった!…はぁ…息はしてるわね…」
アイリスはひとまず生きていることが確認できて安堵はしたが、ローブの破れ方を見ると怪我がないか心配になったので、確認するため服をめくろうと手を伸ばした——
その時!
「っ⁉︎」
家の玄関扉に中かがぶつかった音がして、朝起きたばかりで、顔を洗っていたアイリスは、驚いてその場で固まってしまった——
家と言っても小屋のようなもので、部屋は寝室兼リビングにしている小さな部屋と、その隣は小さなテーブルセットが置いてあるキッチン、あとはその奥にバスルームがあるだけの本当に簡単な作りで、扉も簡素なものだから、少しの衝撃でも、ものすごい音がした。
人気のない森の奥で、今は誰にも頼れない一人暮らし中のアイリスは、恐いが自分で確かめるしかないと奮い立ち、扉を開けて外を見ようとした。
しかし、扉を開けようとしたが、何か重いものが支えていてぴくりとも開かない。
仕方なく窓から出て玄関の方へまわり込み、音を立てないように壁の影に隠れて、そっと扉の方を覗いた。
「‼︎」
(人⁉︎人が倒れてる⁇…追手かしら…でも…でも、倒れてる人を放ってなんておけないわ!)
アイリスは自分のことより人命の方が優先だと、迷いを捨て、急いで駆け寄り声をかける。
「だ、大丈夫ですかっ⁉︎あのっ、聞こえますかっ⁉︎大丈夫ですかっ⁉︎」
アイリスは必死で呼びかけた。
うつ伏せに倒れているが、顔だけ横を向けているので覗き込むと、18歳の自分より少し歳上に見える男性だった。
この森の中を駆けずり回ったのか、羽織っているローブはあちこち切り裂いたように破れて汚れている。
呼びかけに全く反応がないため、アイリスはもう一度、さらに耳の近くで呼びかける。
「あのっ!大丈夫ですかっ⁉︎あのっ!!」
「………」
「だめだわ…全然動かない…どうしよう…まさか死んだりしてないわよね…」
アイリスは人が今まさに目の前で死んだのかもしれないという得も言われぬ緊張感と、助けられない自分の力の無さに対する恐怖心で手が震え始めた。
ゆっくり耳をその男性の口元に持っていくと、恐る恐る呼吸をしているか確かめる。
「よかった!…はぁ…息はしてるわね…」
アイリスはひとまず生きていることが確認できて安堵はしたが、ローブの破れ方を見ると怪我がないか心配になったので、確認するため服をめくろうと手を伸ばした——
その時!
1
あなたにおすすめの小説
【完結】好きでもない私とは婚約解消してください
里音
恋愛
騎士団にいる彼はとても一途で誠実な人物だ。初恋で恋人だった幼なじみが家のために他家へ嫁いで行ってもまだ彼女を思い新たな恋人を作ることをしないと有名だ。私も憧れていた1人だった。
そんな彼との婚約が成立した。それは彼の行動で私が傷を負ったからだ。傷は残らないのに責任感からの婚約ではあるが、彼はプロポーズをしてくれた。その瞬間憧れが好きになっていた。
婚約して6ヶ月、接点のほとんどない2人だが少しずつ距離も縮まり幸せな日々を送っていた。と思っていたのに、彼の元恋人が離婚をして帰ってくる話を聞いて彼が私との婚約を「最悪だ」と後悔しているのを聞いてしまった。
悪役令嬢、記憶をなくして辺境でカフェを開きます〜お忍びで通ってくる元婚約者の王子様、私はあなたのことなど知りません〜
咲月ねむと
恋愛
王子の婚約者だった公爵令嬢セレスティーナは、断罪イベントの最中、興奮のあまり階段から転げ落ち、頭を打ってしまう。目覚めた彼女は、なんと「悪役令嬢として生きてきた数年間」の記憶をすっぽりと失い、動物を愛する心優しくおっとりした本来の性格に戻っていた。
もはや王宮に居場所はないと、自ら婚約破棄を申し出て辺境の領地へ。そこで動物たちに異常に好かれる体質を活かし、もふもふの聖獣たちが集まるカフェを開店し、穏やかな日々を送り始める。
一方、セレスティーナの豹変ぶりが気になって仕方ない元婚約者の王子・アルフレッドは、身分を隠してお忍びでカフェを訪れる。別人になったかのような彼女に戸惑いながらも、次第に本当の彼女に惹かれていくが、セレスティーナは彼のことを全く覚えておらず…?
※これはかなり人を選ぶ作品です。
感想欄にもある通り、私自身も再度読み返してみて、皆様のおっしゃる通りもう少しプロットをしっかりしてればと。
それでも大丈夫って方は、ぜひ。
【完結】ずっと、ずっとあなたを愛していました 〜後悔も、懺悔も今更いりません〜
高瀬船
恋愛
リスティアナ・メイブルムには二歳年上の婚約者が居る。
婚約者は、国の王太子で穏やかで優しく、婚約は王命ではあったが仲睦まじく関係を築けていた。
それなのに、突然ある日婚約者である王太子からは土下座をされ、婚約を解消して欲しいと願われる。
何故、そんな事に。
優しく微笑むその笑顔を向ける先は確かに自分に向けられていたのに。
婚約者として確かに大切にされていたのに何故こうなってしまったのか。
リスティアナの思いとは裏腹に、ある時期からリスティアナに悪い噂が立ち始める。
悪い噂が立つ事など何もしていないのにも関わらず、リスティアナは次第に学園で、夜会で、孤立していく。
【完結】無口な旦那様は妻が可愛くて仕方ない
ベル
恋愛
旦那様とは政略結婚。
公爵家の次期当主であった旦那様と、領地の経営が悪化し、没落寸前の伯爵令嬢だった私。
旦那様と結婚したおかげで私の家は安定し、今では昔よりも裕福な暮らしができるようになりました。
そんな私は旦那様に感謝しています。
無口で何を考えているか分かりにくい方ですが、とてもお優しい方なのです。
そんな二人の日常を書いてみました。
お読みいただき本当にありがとうございますm(_ _)m
無事完結しました!
報われなかった姫君に、弔いの白い薔薇の花束を
さくたろう
恋愛
その国の王妃を決める舞踏会に招かれたロザリー・ベルトレードは、自分が当時の王子、そうして現王アルフォンスの婚約者であり、不遇の死を遂げた姫オフィーリアであったという前世を思い出す。
少しずつ蘇るオフィーリアの記憶に翻弄されながらも、17年前から今世まで続く因縁に、ロザリーは絡め取られていく。一方でアルフォンスもロザリーの存在から目が離せなくなり、やがて二人は再び惹かれ合うようになるが――。
20話です。小説家になろう様でも公開中です。
【完結】愛したあなたは本当に愛する人と幸せになって下さい
高瀬船
恋愛
伯爵家のティアーリア・クランディアは公爵家嫡男、クライヴ・ディー・アウサンドラと婚約秒読みの段階であった。
だが、ティアーリアはある日クライヴと彼の従者二人が話している所に出くわし、聞いてしまう。
クライヴが本当に婚約したかったのはティアーリアの妹のラティリナであったと。
ショックを受けるティアーリアだったが、愛する彼の為自分は身を引く事を決意した。
【誤字脱字のご報告ありがとうございます!小っ恥ずかしい誤字のご報告ありがとうございます!個別にご返信出来ておらず申し訳ございません( •́ •̀ )】
【完結】どうやら私は婚約破棄されるそうです。その前に舞台から消えたいと思います
りまり
恋愛
私の名前はアリスと言います。
伯爵家の娘ですが、今度妹ができるそうです。
母を亡くしてはや五年私も十歳になりましたし、いい加減お父様にもと思った時に後妻さんがいらっしゃったのです。
その方にも九歳になる娘がいるのですがとてもかわいいのです。
でもその方たちの名前を聞いた時ショックでした。
毎日見る夢に出てくる方だったのです。
婚約破棄までの七日間
たぬきち25番
恋愛
突然、乙女ゲームの中の悪役令嬢ロゼッタに転生したことに気付いた私。しかも、気付いたのが婚約破棄の七日前!! 七日前って、どうすればいいの?!
※少しだけ内容を変更いたしました!!
※他サイト様でも掲載始めました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる