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21話 アクアの記憶7 噂の真相
しおりを挟む心配だったカイルは、王宮にいても狼姿を見られるのはまずいし、どうせならアイリスの警備を兼ねてと思い、それから毎晩狼の姿でアイリスがいる山小屋の近くへ来ていた。
狼の姿をしているが、それが精霊だというのは本当のようで、走る速さも尋常ではなく、小屋への行き来は楽にできて助かった。
久しぶりに見たアイリスは、記憶の中の幼な子の姿はどこにもなく、美しい少女に成長していてさすがにカイルも驚いた。
アイリスは、山小屋生活で髪はいつも1つに束ねていたが、それでも艶のある黄金の髪と大きな緑の瞳を持つ美少女は、森の妖精のように見えた。
(こんなところまで逃げてくるなんて…危なすぎるだろ。何してるんだよ、アイリス。そんなに僕が嫌だったなんて…
自由にしてあげられなくて、すまない…)
カイルは王家と公爵家のしがらみを呪い、アイリスに申し訳なく思う毎日だったが、それでもアイリスを見ているのはいつも楽しかった。
夜が明けそうになるまでアイリスの山小屋周りを見張ったり魚や獣を狩って玄関先に置いたりした。
夜なので外には出てこないが、たまに窓の隙間から見えるアイリスはいつも楽しそうで、その日自分で採った山菜や、カイルが玄関先に置いた獲物を猟師がくれたのだと勘違いして料理する様は豪快で本当に面白かった。
(あの子は何も変わらないな)
と、カイルは微笑ましく思いながら見守っていた。
しばらく経った頃、第一王子は戦争から帰って羽を伸ばし、夜遊びばかりしているという噂が立ち始めたが、どのみちあと3年もせずに精霊になってここから消えると思うと、そんな噂はどうでもよく思えた…
その噂が婚約を嫌がられるきっかけの1つになっているとも知らずに…
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