【完結】政略結婚はお断り致します!

かまり

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53話 幻聴?

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(なんでこうなる…やっと戦争が終わったのに…
なんで…なんのために…僕は殺しているんだ…
マクロスを殺せば終わるのか…?
そんなこと…できない…僕には…できない)

 カイルは哀しい目をして襲いかかる敵を斬り倒しながら、後方に下がり周りを固めているマクロスを視界に入れ続けていた。

 そこを抜いてマクロスを貫くことは、カイルの技量なら容易かった。

 しかし、できない。実の弟の命を奪うことなどカイルには到底できなかった。
 でも、それをしないのなら、全敵を倒さなければ終われなくなる。
 被害を最小限にするならマクロス1人を狙えばいい。わかっている。わかっているのに、鬼になれない自分を呪う。

(僕がマクロスをやれないなら、僕と王の2人さえ死ねば終われるのか?あとはみんな助かるのか?

しかし、人の命を命と思わない弟と、あの狡猾な女がこの国を守れるのか⁉︎

…わからない…わからない

でも殺せない…誰も殺したくない…助けて…アイリス…僕はどうすればいい?

君の声が聞きたい…
簡単に笑って決める君の力が欲しい…)

「アイリス…」 

 休むことなく襲いかかる敵を薙ぎ払いながら、思わず口にしてしまう。

 その頬には涙が伝っていた。



「やめて!!!」

 カイルは幻聴かと思った。頭でアイリスを呼んでいたら、ついに声まで聞こえてしまったのかと…

 しかし、声がした頭上を見ると、空に浮かぶ美しく大きな銀狼の上にアイリスが乗って叫んでいた。

 戦闘は止み、皆驚愕してその様子を見ていた。

「アイリス…フーラ?どうして君たちが一緒に…」

 思わずカイルは呟いた。

(また私の大好きな人を泣かせているの?
はぁ…本当に許せないわね、人間って)

「みんながそうじゃないですよ?」

 アイリスが小声で反論する。

(あなた誰の味方なのよ…あなたが連れて行けって騒ぐから来てあげたのに…)

「もちろん私はカイルの味方ですけど?」

 ふざけた会話だが、しかし精霊フーラの声はそこにいる全ての人間の頭に直接響き、空に浮かぶ巨大な狼と合わせて異常な事態に皆驚き恐怖した。

(…失礼ね。怯えないでよ。あなたたち人間の方がよっぽど野蛮なんだから…
でもそうね…カイル王子を泣かせるようなことする人間は、みんな砂に変えるわよ?)

「できるの⁉︎」

(当たり前でしょ?私精霊なのよ?人間を生かすも殺すも簡単なこと。普段は別に関係ないから関わらないけど、私の大好きなカイル王子を泣かされたとあっては放っておけないわ?

ねぇ、そこのあなたたち?聞こえた?

どうする?まだ続ける?
カイル王子は戦争が大嫌いなのよ?
それを続けるなら、私があなたたちを砂に変えるしかないわよね?

なんなら誰か一人砂にして証拠でも見せてあげましょうか?)

 ふわふわと浮かぶ巨大な狼に睨みつけられた兵士たちは叫び声を上げながら、敵も味方も関係なく逃げて行った。
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