【完結】政略結婚はお断り致します!

かまり

文字の大きさ
56 / 59

55話 救世主は誰?

しおりを挟む
 その場にいる全員が公爵を見てきょとんとする。
 しかし、公爵は構わず話し出した。

「命の尊さを教えられる者など、私を置いて他におるまい?」

 そう言って自信満々に胸を反らす。

「お父様がマクロス殿下を弟子に迎えると言うことですか?」

 アイリスが不思議そうに聞くと、公爵は首を横に振った。

「いいや、私の子になって貰い性根から叩き直してやろう!」

 みんながぽかんとする中、公爵は一人目を輝かせていた。

「ごほんっ、つまりだな、アイリス?うちの子どもはお前一人。本来なら婿を貰うところだが、殿下相手ではそうもいかん。

もともとアイリスがカイル殿下のところへ嫁いだら養子を貰う予定だったんだ。

マクロス殿下も、いずれは公爵になる身。
ならば、うちの養子でも構わんだろう。

私が今からみっちり仕上げてやる!
人間はいつからでもやり直せるんだ!」

 前向きさがやはり親子だな、とカイルはおかしくなって、顔が綻ぶ。

(…ふーん…それもいいかもしれないわね。
カイル王子が笑ってるから、私は賛成よ?
でも、そしたらマリーサはどうするの?)

「婚約は解消し、2人は一度離れなさい!
マクロス殿下、あなたは今20歳だ。
カイル殿下は22歳で結婚されるのだから、同じ年齢まで1人でいなさい。

その後、どうしてもまだマリーサを忘れられないと言うなら、そしてその時まだマリーサが1人なら、またやり直すことも考えればいい。

その時は私がきっちりマリーサに目を光らせてやろう!」

 マリーサは公爵の眼光にビクッとなる。

「それから、精霊どの、ここはひとつ、カイル殿下の幸せに免じて、2人の処刑に繋がる行いをどうにか都合はつけてくれまいか?」

(…その言い方はずるくない?…)

 それを聞いて、フーラに乗り続けていたアイリスは、ぴょんと降りると、カイルに駆け寄って、腕を掴んだ。

「え?アイリス?」

「いいから、いいから、ちょっと来て?」

 そう言ってアイリスはカイルを引っ張って行くと、フーラの前に戻って来た。
 そこで、アイリスはカイルに耳打ちする。

「え?ほんとに?そんなことで?」

 こくこくと、アイリスは頷いた。

「…アイリスがそう言うなら…」

 そう言って、カイルはフーラに近づくと、フーラの首にしがみつき、顔をふわふわの毛の中に埋めた。

(あっ、ほんとだ…気持ちいい…)

(きゃっ、なっ、なっ、なにしてるの…⁉︎や、やめて…)

「あっ、ごめん、フーラ、あんまり君の毛が気持ち良くて」

 そう言いながらも、カイルはあまりの気持ち良さに離れようとしない。

(え…?そう?…この毛が好きなの?)

「うん、ふかふかであったかくて、このままずっと埋まってたくなるね?」

 カイルはアイリスが頭をぐりぐり擦り付ける気持ちが良く分かった。
 でもさすがに頭を擦り付けるのは申し訳ない気がして、そっと毛並みに沿って撫でてやる。

(………)

 フーラは黙っているが、尻尾は嘘を付けないようで、よっぽど嬉しいのかパタパタと振っている。
 アイリスはニヤリと微笑んだ。

(あー!もう!わかったわよ!やればいいんでしょ?アイリス!あなたの仕業ね?もう!しょうがないんだから!)

 と怒りつつも、カイルに撫でられ続けて尻尾のパタパタを止められないフーラだった。

 カイルは思った…

(アイリスってば、すごくふわふわの毛で気持ちいいから触ってみて?きっとうまくいくから…なんてよくわからないこと言ってたけど、ほんとだったな。アイリスってやっぱりすごい!僕の救世主だ!)

 …救世主は絶対的にフーラなのに、アイリス信者のカイルは盲目だった…
しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

【完結】好きでもない私とは婚約解消してください

里音
恋愛
騎士団にいる彼はとても一途で誠実な人物だ。初恋で恋人だった幼なじみが家のために他家へ嫁いで行ってもまだ彼女を思い新たな恋人を作ることをしないと有名だ。私も憧れていた1人だった。 そんな彼との婚約が成立した。それは彼の行動で私が傷を負ったからだ。傷は残らないのに責任感からの婚約ではあるが、彼はプロポーズをしてくれた。その瞬間憧れが好きになっていた。 婚約して6ヶ月、接点のほとんどない2人だが少しずつ距離も縮まり幸せな日々を送っていた。と思っていたのに、彼の元恋人が離婚をして帰ってくる話を聞いて彼が私との婚約を「最悪だ」と後悔しているのを聞いてしまった。

悪役令嬢、記憶をなくして辺境でカフェを開きます〜お忍びで通ってくる元婚約者の王子様、私はあなたのことなど知りません〜

咲月ねむと
恋愛
王子の婚約者だった公爵令嬢セレスティーナは、断罪イベントの最中、興奮のあまり階段から転げ落ち、頭を打ってしまう。目覚めた彼女は、なんと「悪役令嬢として生きてきた数年間」の記憶をすっぽりと失い、動物を愛する心優しくおっとりした本来の性格に戻っていた。 もはや王宮に居場所はないと、自ら婚約破棄を申し出て辺境の領地へ。そこで動物たちに異常に好かれる体質を活かし、もふもふの聖獣たちが集まるカフェを開店し、穏やかな日々を送り始める。 一方、セレスティーナの豹変ぶりが気になって仕方ない元婚約者の王子・アルフレッドは、身分を隠してお忍びでカフェを訪れる。別人になったかのような彼女に戸惑いながらも、次第に本当の彼女に惹かれていくが、セレスティーナは彼のことを全く覚えておらず…? ※これはかなり人を選ぶ作品です。 感想欄にもある通り、私自身も再度読み返してみて、皆様のおっしゃる通りもう少しプロットをしっかりしてればと。 それでも大丈夫って方は、ぜひ。

【完結】ずっと、ずっとあなたを愛していました 〜後悔も、懺悔も今更いりません〜

高瀬船
恋愛
リスティアナ・メイブルムには二歳年上の婚約者が居る。 婚約者は、国の王太子で穏やかで優しく、婚約は王命ではあったが仲睦まじく関係を築けていた。 それなのに、突然ある日婚約者である王太子からは土下座をされ、婚約を解消して欲しいと願われる。 何故、そんな事に。 優しく微笑むその笑顔を向ける先は確かに自分に向けられていたのに。 婚約者として確かに大切にされていたのに何故こうなってしまったのか。 リスティアナの思いとは裏腹に、ある時期からリスティアナに悪い噂が立ち始める。 悪い噂が立つ事など何もしていないのにも関わらず、リスティアナは次第に学園で、夜会で、孤立していく。

【完結】どうやら私は婚約破棄されるそうです。その前に舞台から消えたいと思います

りまり
恋愛
 私の名前はアリスと言います。  伯爵家の娘ですが、今度妹ができるそうです。  母を亡くしてはや五年私も十歳になりましたし、いい加減お父様にもと思った時に後妻さんがいらっしゃったのです。  その方にも九歳になる娘がいるのですがとてもかわいいのです。  でもその方たちの名前を聞いた時ショックでした。  毎日見る夢に出てくる方だったのです。

報われなかった姫君に、弔いの白い薔薇の花束を

さくたろう
恋愛
 その国の王妃を決める舞踏会に招かれたロザリー・ベルトレードは、自分が当時の王子、そうして現王アルフォンスの婚約者であり、不遇の死を遂げた姫オフィーリアであったという前世を思い出す。  少しずつ蘇るオフィーリアの記憶に翻弄されながらも、17年前から今世まで続く因縁に、ロザリーは絡め取られていく。一方でアルフォンスもロザリーの存在から目が離せなくなり、やがて二人は再び惹かれ合うようになるが――。 20話です。小説家になろう様でも公開中です。

【完結】愛したあなたは本当に愛する人と幸せになって下さい

高瀬船
恋愛
伯爵家のティアーリア・クランディアは公爵家嫡男、クライヴ・ディー・アウサンドラと婚約秒読みの段階であった。 だが、ティアーリアはある日クライヴと彼の従者二人が話している所に出くわし、聞いてしまう。 クライヴが本当に婚約したかったのはティアーリアの妹のラティリナであったと。 ショックを受けるティアーリアだったが、愛する彼の為自分は身を引く事を決意した。 【誤字脱字のご報告ありがとうございます!小っ恥ずかしい誤字のご報告ありがとうございます!個別にご返信出来ておらず申し訳ございません( •́ •̀ )】

【完結】無口な旦那様は妻が可愛くて仕方ない

ベル
恋愛
旦那様とは政略結婚。 公爵家の次期当主であった旦那様と、領地の経営が悪化し、没落寸前の伯爵令嬢だった私。 旦那様と結婚したおかげで私の家は安定し、今では昔よりも裕福な暮らしができるようになりました。 そんな私は旦那様に感謝しています。 無口で何を考えているか分かりにくい方ですが、とてもお優しい方なのです。 そんな二人の日常を書いてみました。 お読みいただき本当にありがとうございますm(_ _)m 無事完結しました!

【完結】地味な私と公爵様

ベル
恋愛
ラエル公爵。この学園でこの名を知らない人はいないでしょう。 端正な顔立ちに甘く低い声、時折見せる少年のような笑顔。誰もがその美しさに魅了され、女性なら誰もがラエル様との結婚を夢見てしまう。 そんな方が、平凡...いや、かなり地味で目立たない伯爵令嬢である私の婚約者だなんて一体誰が信じるでしょうか。 ...正直私も信じていません。 ラエル様が、私を溺愛しているなんて。 きっと、きっと、夢に違いありません。 お読みいただきありがとうございます。短編のつもりで書き始めましたが、意外と話が増えて長編に変更し、無事完結しました(*´-`)

処理中です...