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56話 その後
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フーラによって、この紛争は初めからなかったことになった。
死者の魂は戻され、傷ついた者も元通りの生活を送っている。
これまでの記憶は王、ジルコニア公爵、カイル、アイリス、マクロス、マリーサにのみ残され、他の者たちの記憶は全て改竄されていた。
そして、マクロスとマリーサは最初から婚約などしていないと人々の記憶には植え付けられ、あの騒動から2年が過ぎた———
「わぁ、いつ乗っても気持ちいいわねー」
「あっ、アイリス、しっかり掴まってないと落ちちゃうよ!」
「大丈夫、大丈夫、ね?フーラ」
(はいはい…落としたりしないわよ)
アイリスとカイルはフーラに乗って、あの山小屋へと向かっていた。
「あっ、ほらっ!見えてきたわよ!わぁ、懐かしい」
「ほんとに、あそこに住んでた頃もあったなぁ」
(降りるわよ?しっかり掴まってて)
「はーい!」
アイリスは元気よく返事をすると、フーラの毛にしっかりしがみついた。
カイルはアイリスが落ちないように、その上から覆い被さる。
フーラは死者まで生き返らせたのだから、自分の言う事も何か聞いてもらわないと割に合わないと言って、カイルのそばにずっといることを代償とした。
アイリスとカイルがあの数ヶ月後に結婚し、一緒に王宮で過ごすようになると、アイリスがフーラにくっついてくっついて離れないので、フーラはとうとうアイリスのペットのようになってしまっていた。
そんなカイルとアイリスは精霊の加護を受けている稀有な王子と妃として瞬く間に評判になった。
それと同じくして、『戦争嫌いな王子を悲しませるようなことをして精霊を怒らせた者は砂になる』という噂をフーラはいつの間にか広めていた。
争いを恐れた貴族たちは慌てて派閥を無くすことにした。
マクロス殿下が降下した元第一王子派ジルコニア公爵家を派閥融合のシンボルとして、そこを筆頭に貴族が1つにまとまったタイミングで、王はカイルに王位を継承させた。
精霊の加護を受ける王と王妃は国のシンボルとなり、国民に喜ばれた。
最近アイリスはもっぱらフーラの背に乗っていて、地面に下りている方が少ないくらい、まるで椅子がわりにしていたが、フーラももうアイリスが無くてはならない存在になりつつあった。
王宮では実はカイルよりアイリスの方が加護を受けているのでは?と思われるほどだ。
フーラは空から眼下に見える小屋に向かってふわりふわりと降りて行く。
「えー!いつももっと早く降りてくれるのに!」
アイリスが急降下好きなのは知っているが、フーラはゆっくり降りて行く。
(何言ってるの、アイリス…ほんとにあなたって子は)
呆れたように言うフーラに、
「同感だ」
とカイルも言った。
「はぁ…はいはい、わかりましたよーだ」
と拗ねたように言うアイリスを見て、カイルはふふっと笑みを漏らすと、手が離せないので代わりに頬を寄せて、えらいえらい、と褒める。
子ども扱いされて余計に怒って頬を膨らませた。
(お二人さん?着いたわよ?)
「ありがとう、フーラ」
そう言ってカイルは先に降りると、アイリスをそっと抱いて下ろしてやる。
「ありがとう、フーラ、カイル。わぁ…ほんとに懐かしいわね」
「ああ…本当に…」
目の前のあの小屋を見て懐かしんだ2人は、感嘆の声を上げた。
「じゃあ行きましょうか?」
「ああ」
カイルはそう言うと、あの懐かしい戸をノックした。
死者の魂は戻され、傷ついた者も元通りの生活を送っている。
これまでの記憶は王、ジルコニア公爵、カイル、アイリス、マクロス、マリーサにのみ残され、他の者たちの記憶は全て改竄されていた。
そして、マクロスとマリーサは最初から婚約などしていないと人々の記憶には植え付けられ、あの騒動から2年が過ぎた———
「わぁ、いつ乗っても気持ちいいわねー」
「あっ、アイリス、しっかり掴まってないと落ちちゃうよ!」
「大丈夫、大丈夫、ね?フーラ」
(はいはい…落としたりしないわよ)
アイリスとカイルはフーラに乗って、あの山小屋へと向かっていた。
「あっ、ほらっ!見えてきたわよ!わぁ、懐かしい」
「ほんとに、あそこに住んでた頃もあったなぁ」
(降りるわよ?しっかり掴まってて)
「はーい!」
アイリスは元気よく返事をすると、フーラの毛にしっかりしがみついた。
カイルはアイリスが落ちないように、その上から覆い被さる。
フーラは死者まで生き返らせたのだから、自分の言う事も何か聞いてもらわないと割に合わないと言って、カイルのそばにずっといることを代償とした。
アイリスとカイルがあの数ヶ月後に結婚し、一緒に王宮で過ごすようになると、アイリスがフーラにくっついてくっついて離れないので、フーラはとうとうアイリスのペットのようになってしまっていた。
そんなカイルとアイリスは精霊の加護を受けている稀有な王子と妃として瞬く間に評判になった。
それと同じくして、『戦争嫌いな王子を悲しませるようなことをして精霊を怒らせた者は砂になる』という噂をフーラはいつの間にか広めていた。
争いを恐れた貴族たちは慌てて派閥を無くすことにした。
マクロス殿下が降下した元第一王子派ジルコニア公爵家を派閥融合のシンボルとして、そこを筆頭に貴族が1つにまとまったタイミングで、王はカイルに王位を継承させた。
精霊の加護を受ける王と王妃は国のシンボルとなり、国民に喜ばれた。
最近アイリスはもっぱらフーラの背に乗っていて、地面に下りている方が少ないくらい、まるで椅子がわりにしていたが、フーラももうアイリスが無くてはならない存在になりつつあった。
王宮では実はカイルよりアイリスの方が加護を受けているのでは?と思われるほどだ。
フーラは空から眼下に見える小屋に向かってふわりふわりと降りて行く。
「えー!いつももっと早く降りてくれるのに!」
アイリスが急降下好きなのは知っているが、フーラはゆっくり降りて行く。
(何言ってるの、アイリス…ほんとにあなたって子は)
呆れたように言うフーラに、
「同感だ」
とカイルも言った。
「はぁ…はいはい、わかりましたよーだ」
と拗ねたように言うアイリスを見て、カイルはふふっと笑みを漏らすと、手が離せないので代わりに頬を寄せて、えらいえらい、と褒める。
子ども扱いされて余計に怒って頬を膨らませた。
(お二人さん?着いたわよ?)
「ありがとう、フーラ」
そう言ってカイルは先に降りると、アイリスをそっと抱いて下ろしてやる。
「ありがとう、フーラ、カイル。わぁ…ほんとに懐かしいわね」
「ああ…本当に…」
目の前のあの小屋を見て懐かしんだ2人は、感嘆の声を上げた。
「じゃあ行きましょうか?」
「ああ」
カイルはそう言うと、あの懐かしい戸をノックした。
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