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55話 救世主は誰?
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その場にいる全員が公爵を見てきょとんとする。
しかし、公爵は構わず話し出した。
「命の尊さを教えられる者など、私を置いて他におるまい?」
そう言って自信満々に胸を反らす。
「お父様がマクロス殿下を弟子に迎えると言うことですか?」
アイリスが不思議そうに聞くと、公爵は首を横に振った。
「いいや、私の子になって貰い性根から叩き直してやろう!」
みんながぽかんとする中、公爵は一人目を輝かせていた。
「ごほんっ、つまりだな、アイリス?うちの子どもはお前一人。本来なら婿を貰うところだが、殿下相手ではそうもいかん。
もともとアイリスがカイル殿下のところへ嫁いだら養子を貰う予定だったんだ。
マクロス殿下も、いずれは公爵になる身。
ならば、うちの養子でも構わんだろう。
私が今からみっちり仕上げてやる!
人間はいつからでもやり直せるんだ!」
前向きさがやはり親子だな、とカイルはおかしくなって、顔が綻ぶ。
(…ふーん…それもいいかもしれないわね。
カイル王子が笑ってるから、私は賛成よ?
でも、そしたらマリーサはどうするの?)
「婚約は解消し、2人は一度離れなさい!
マクロス殿下、あなたは今20歳だ。
カイル殿下は22歳で結婚されるのだから、同じ年齢まで1人でいなさい。
その後、どうしてもまだマリーサを忘れられないと言うなら、そしてその時まだマリーサが1人なら、またやり直すことも考えればいい。
その時は私がきっちりマリーサに目を光らせてやろう!」
マリーサは公爵の眼光にビクッとなる。
「それから、精霊どの、ここはひとつ、カイル殿下の幸せに免じて、2人の処刑に繋がる行いをどうにか都合はつけてくれまいか?」
(…その言い方はずるくない?…)
それを聞いて、フーラに乗り続けていたアイリスは、ぴょんと降りると、カイルに駆け寄って、腕を掴んだ。
「え?アイリス?」
「いいから、いいから、ちょっと来て?」
そう言ってアイリスはカイルを引っ張って行くと、フーラの前に戻って来た。
そこで、アイリスはカイルに耳打ちする。
「え?ほんとに?そんなことで?」
こくこくと、アイリスは頷いた。
「…アイリスがそう言うなら…」
そう言って、カイルはフーラに近づくと、フーラの首にしがみつき、顔をふわふわの毛の中に埋めた。
(あっ、ほんとだ…気持ちいい…)
(きゃっ、なっ、なっ、なにしてるの…⁉︎や、やめて…)
「あっ、ごめん、フーラ、あんまり君の毛が気持ち良くて」
そう言いながらも、カイルはあまりの気持ち良さに離れようとしない。
(え…?そう?…この毛が好きなの?)
「うん、ふかふかであったかくて、このままずっと埋まってたくなるね?」
カイルはアイリスが頭をぐりぐり擦り付ける気持ちが良く分かった。
でもさすがに頭を擦り付けるのは申し訳ない気がして、そっと毛並みに沿って撫でてやる。
(………)
フーラは黙っているが、尻尾は嘘を付けないようで、よっぽど嬉しいのかパタパタと振っている。
アイリスはニヤリと微笑んだ。
(あー!もう!わかったわよ!やればいいんでしょ?アイリス!あなたの仕業ね?もう!しょうがないんだから!)
と怒りつつも、カイルに撫でられ続けて尻尾のパタパタを止められないフーラだった。
カイルは思った…
(アイリスってば、すごくふわふわの毛で気持ちいいから触ってみて?きっとうまくいくから…なんてよくわからないこと言ってたけど、ほんとだったな。アイリスってやっぱりすごい!僕の救世主だ!)
…救世主は絶対的にフーラなのに、アイリス信者のカイルは盲目だった…
しかし、公爵は構わず話し出した。
「命の尊さを教えられる者など、私を置いて他におるまい?」
そう言って自信満々に胸を反らす。
「お父様がマクロス殿下を弟子に迎えると言うことですか?」
アイリスが不思議そうに聞くと、公爵は首を横に振った。
「いいや、私の子になって貰い性根から叩き直してやろう!」
みんながぽかんとする中、公爵は一人目を輝かせていた。
「ごほんっ、つまりだな、アイリス?うちの子どもはお前一人。本来なら婿を貰うところだが、殿下相手ではそうもいかん。
もともとアイリスがカイル殿下のところへ嫁いだら養子を貰う予定だったんだ。
マクロス殿下も、いずれは公爵になる身。
ならば、うちの養子でも構わんだろう。
私が今からみっちり仕上げてやる!
人間はいつからでもやり直せるんだ!」
前向きさがやはり親子だな、とカイルはおかしくなって、顔が綻ぶ。
(…ふーん…それもいいかもしれないわね。
カイル王子が笑ってるから、私は賛成よ?
でも、そしたらマリーサはどうするの?)
「婚約は解消し、2人は一度離れなさい!
マクロス殿下、あなたは今20歳だ。
カイル殿下は22歳で結婚されるのだから、同じ年齢まで1人でいなさい。
その後、どうしてもまだマリーサを忘れられないと言うなら、そしてその時まだマリーサが1人なら、またやり直すことも考えればいい。
その時は私がきっちりマリーサに目を光らせてやろう!」
マリーサは公爵の眼光にビクッとなる。
「それから、精霊どの、ここはひとつ、カイル殿下の幸せに免じて、2人の処刑に繋がる行いをどうにか都合はつけてくれまいか?」
(…その言い方はずるくない?…)
それを聞いて、フーラに乗り続けていたアイリスは、ぴょんと降りると、カイルに駆け寄って、腕を掴んだ。
「え?アイリス?」
「いいから、いいから、ちょっと来て?」
そう言ってアイリスはカイルを引っ張って行くと、フーラの前に戻って来た。
そこで、アイリスはカイルに耳打ちする。
「え?ほんとに?そんなことで?」
こくこくと、アイリスは頷いた。
「…アイリスがそう言うなら…」
そう言って、カイルはフーラに近づくと、フーラの首にしがみつき、顔をふわふわの毛の中に埋めた。
(あっ、ほんとだ…気持ちいい…)
(きゃっ、なっ、なっ、なにしてるの…⁉︎や、やめて…)
「あっ、ごめん、フーラ、あんまり君の毛が気持ち良くて」
そう言いながらも、カイルはあまりの気持ち良さに離れようとしない。
(え…?そう?…この毛が好きなの?)
「うん、ふかふかであったかくて、このままずっと埋まってたくなるね?」
カイルはアイリスが頭をぐりぐり擦り付ける気持ちが良く分かった。
でもさすがに頭を擦り付けるのは申し訳ない気がして、そっと毛並みに沿って撫でてやる。
(………)
フーラは黙っているが、尻尾は嘘を付けないようで、よっぽど嬉しいのかパタパタと振っている。
アイリスはニヤリと微笑んだ。
(あー!もう!わかったわよ!やればいいんでしょ?アイリス!あなたの仕業ね?もう!しょうがないんだから!)
と怒りつつも、カイルに撫でられ続けて尻尾のパタパタを止められないフーラだった。
カイルは思った…
(アイリスってば、すごくふわふわの毛で気持ちいいから触ってみて?きっとうまくいくから…なんてよくわからないこと言ってたけど、ほんとだったな。アイリスってやっぱりすごい!僕の救世主だ!)
…救世主は絶対的にフーラなのに、アイリス信者のカイルは盲目だった…
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