番とは呪いだと思いませんか―聖女だからと言ってツガイが五人も必要なのでしょうか―

白雲八鈴

文字の大きさ
171 / 894
14章 黒の国

161

しおりを挟む
 本当にこの世界の人達はツガイのことになると人が変わったようになるのは何とかならないものだろうかと、シェリーは頭が痛くなってきた。
 一番の課題は目の前の人物だ。一国の王太子という立場の人物に対してどう対処すべきか、とても悩むところだ。
 いざとなれば殴ってもいいだろうか。斬るよりはマシなはずだ。
 相変わらずシェリーの脳内は力のゴリ押しでなんとかしようという答えに行き着いた。シェリーは意を決して言葉を紡ぐ。

「王太子殿下に「リオンだと言っただろ?」ちっ。」

 意を決して話しだしたにも関わらず、王太子に邪魔をされたことに対して思わず舌打ちをしてしまった。

「リオン様にお話が「敬称もいらない呼び捨てでいい。」ギリッ。」

 呼び名如きで一々話を遮らないで欲しいと目の前の王太子を睨み付け、炎王を睨みつける。この王太子の横槍を入れさせないようにしろという意味を込めた視線だ。

「はぁ。リオン、黙って佐々木さんの話を聞きなさい。でないと佐々木さんが機嫌を損ねて帰ってしまうぞ。若しくは、刀の試し斬りで斬られるか、燃やされるか。」

 炎王は先程の憂さ晴らしの手合わせの嫌味だろうか。最後の言葉はいらないように思える。

「はい。」

 やはり、炎王の言葉は聞く耳を持つようだ。しかし、シェリーの帰りたいゲージは赤く点灯している。もしこれ以上話の腰を折るようなら自分だけ帰ろうと決意し、再び話し出す。

「リオン様にお話があります。一つはアフィーリア姫のツガイが私の弟だとわかりました。しかし、私はアフィーリア姫を弟とつがわす事には反対です。
 なぜなら、この国では金色の髪は異質であり、私が住んでいる国では黒髪が異質だからです。他国の黒に対しての異常なる態度は炎王もご存知なことなので、耳にしたことはあるかもしれません。
 ですので、アフィーリア姫には最低条件として一人で下町で暮らせるようにということを突きつけました。このことは炎王にも了承は得ていますので、それができるまで絶対にこの国から出さないようにお願いしたいのです。」

「確かに我々黒を持つ者たちは5千年前から白き神を崇める者たちから迫害され、この島国に逃げて来たと教えられたが、5千年も前のことだ。未だに黒が迫害されているというのか?」

「それはカウサ神教国のことですね。4千5百年前に滅びましたが、滅んだ原因が黒を纏う者たちであったため、未だに語り継がれている話になります。黒は魔人の色だと、そして悪災を招いた黒の悪魔の色であると。」

「だったら、アフィーリアと弟くんがここで暮らせ「リオン!それ以上は口にするな!死ぬぞ!」」

 炎王が慌てて王太子の言葉を止めた。王太子は炎王と同じ事を口にした。シェリーの怒りを買った同じ言葉を口にしてしまった。炎王は伺い見る。シェリーの目が揺らめいている事に危機感を覚え、炎王がシェリーを落ち着かせる言葉を必死でさがしていると隣に座ってる緑の白髪の女性が言葉を発した。

「王太子殿下。ラースをこの国に住まわす事に私は反対です。」

「ラース?」

 王太子は女性が言った言葉の意味がわからないようだ。

「ああ、ラースはこの国には来たことはありませんでしたね。そこのエンさんのお気に入りの少女以外は。
 そして、ラースは危険です。一人で十万の神兵を殺したそうですし、あの暴君レイアルティス王の猛攻も撃退したラースです。そんなラースをこの国に置くことはなりません。」

 きっと彼女はその話を耳にするほど長く生きており、ラースの一族の危険性というものを熟知しているのだろう。その時を生きた人物からの言葉は重い。

「ラースと言うのは国の話では無いのか?」

 この国から出ることのない王太子の知識にはラースという言葉は国の名前しか無いようだ。

「ラースと言うのはピンクの魔眼を持つ者たちの総称だ。やはり、この国から出ないと言うのは知識の偏りがみられるな。」

 炎王は王太子を見ながら他国との外交が極端に少ないこの国の欠点を述べる。炎王のその言葉に王太子はシェリーの揺らめく目を見る。

「魔眼。」

「と言うことですので、王太子の提案は却下します。」

 緑の白髪の女性がそう言葉を締めくくった。シェリーの魔眼が発動される危険性は去さったが、シェリーの苛つきは収まりそうにない。
 もう、帰ろう。王太子にツガイ云々の説明も面倒だ。どうして避けていたのに自らそんな事を言わなければならないのだ。
 シェリーは魔石をそっと取り出す。その行動にカイルは気がついているが、何も言わずにいる。
 そして、魔石を床に落としながら立ち上がり、シェリーは炎王に向かって言う。

「炎王。そういうことなんで帰ります。」

「え?佐々木さん、待ってくれ肝心な事を言ってくれていない。」

「は?なぜ?私には必要の無いことですが?それで・・ちっ!『転移!』」

 シェリーはメイルーンの家のリビングに戻ってきていた。しかし、シェリーの視界には黒い前髪が映り込んでいた。





しおりを挟む
感想 49

あなたにおすすめの小説

二百年の眠り姫は、五人の薔薇騎士と龍に溺愛される

七海美桜
恋愛
旧タイトル:五人のイケメン薔薇騎士団団長に溺愛されて200年の眠りから覚めた聖女王女は困惑するばかりです! フーゲンベルク大陸で、長く大陸の大半を治めていたバッハシュタイン王国で、最後の古龍への生贄となった第三王女のヴェンデルガルト。しかしそれ以降古龍が亡くなり王国は滅びバルシュミーデ皇国の治世になり二百年後。封印されていたヴェンデルガルトが目覚めると、魔法は滅びた世で「治癒魔法」を使えるのは彼女だけ。亡き王国の王女という事で城に客人として滞在する事になるのだが、治癒魔法を使える上「金髪」である事から「黄金の魔女」と恐れられてしまう。しかしそんな中。五人の美青年騎士団長たちに溺愛されて、愛され過ぎて困惑する毎日。彼女を生涯の伴侶として愛する古龍・コンスタンティンは生まれ変わり彼女と出逢う事が出来るのか。龍と薔薇に愛されたヴェンデルガルトは、誰と結ばれるのか。 この作品は、小説家になろうにも掲載しています。

【完結】母になります。

たろ
恋愛
母親になった記憶はないのにわたしいつの間にか結婚して子供がいました。 この子、わたしの子供なの? 旦那様によく似ているし、もしかしたら、旦那様の隠し子なんじゃないのかしら? ふふっ、でも、可愛いわよね? わたしとお友達にならない? 事故で21歳から5年間の記憶を失くしたわたしは結婚したことも覚えていない。 ぶっきらぼうでムスッとした旦那様に愛情なんて湧かないわ! だけど何故かこの3歳の男の子はとても可愛いの。

ストーカー婚約者でしたが、転生者だったので経歴を身綺麗にしておく

犬野きらり
恋愛
リディア・ガルドニ(14)、本日誕生日で転生者として気付きました。私がつい先程までやっていた行動…それは、自分の婚約者に対して重い愛ではなく、ストーカー行為。 「絶対駄目ーー」 と前世の私が気づかせてくれ、そもそも何故こんな男にこだわっていたのかと目が覚めました。 何の物語かも乙女ゲームの中の人になったのかもわかりませんが、私の黒歴史は証拠隠滅、慰謝料ガッポリ、新たな出会い新たな人生に進みます。 募集 婿入り希望者 対象外は、嫡男、後継者、王族 目指せハッピーエンド(?)!! 全23話で完結です。 この作品を気に留めて下さりありがとうございます。感謝を込めて、その後(直後)2話追加しました。25話になりました。

脅迫して意中の相手と一夜を共にしたところ、逆にとっ捕まった挙げ句に逃げられなくなりました。

石河 翠
恋愛
失恋した女騎士のミリセントは、不眠症に陥っていた。 ある日彼女は、お気に入りの毛布によく似た大型犬を見かけ、偶然隠れ家的酒場を発見する。お目当てのわんこには出会えないものの、話の合う店長との時間は、彼女の心を少しずつ癒していく。 そんなある日、ミリセントは酒場からの帰り道、元カレから復縁を求められる。きっぱりと断るものの、引き下がらない元カレ。大好きな店長さんを巻き込むわけにはいかないと、ミリセントは覚悟を決める。実は店長さんにはとある秘密があって……。 真っ直ぐでちょっと思い込みの激しいヒロインと、わんこ系と見せかけて実は用意周到で腹黒なヒーローの恋物語。 ハッピーエンドです。 この作品は、他サイトにも投稿しております。 表紙絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品(写真のID:4274932)をお借りしております。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

召喚とか聖女とか、どうでもいいけど人の都合考えたことある?

浅海 景
恋愛
水谷 瑛莉桂(みずたに えりか)の目標は堅実な人生を送ること。その一歩となる社会人生活を踏み出した途端に異世界に召喚されてしまう。召喚成功に湧く周囲をよそに瑛莉桂は思った。 「聖女とか絶対ブラックだろう!断固拒否させてもらうから!」 ナルシストな王太子や欲深い神官長、腹黒騎士などを相手に主人公が幸せを勝ち取るため奮闘する物語です。

異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?

すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。 一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。 「俺とデートしない?」 「僕と一緒にいようよ。」 「俺だけがお前を守れる。」 (なんでそんなことを私にばっかり言うの!?) そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。 「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」 「・・・・へ!?」 『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!? ※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。 ※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。 ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。

疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!

ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。 退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた! 私を陥れようとする兄から逃れ、 不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。 逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋? 異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。 この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?

処理中です...