番とは呪いだと思いませんか―聖女だからと言ってツガイが五人も必要なのでしょうか―

白雲八鈴

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18章 一人の有意義な時間は

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「何も」

「嘘をおっしゃい。陛下をパシリに使ったのでしょ!あと、グレイシャルがいないですが、父に報告をしたのでしょうね。」

 シェリーの隣に座っていたマリアから指摘され、きちんと自分が言ったことをやったのかと確認された。

「シド総帥閣下に報告はしました。ラースとの契約についても解決済みです。それからグレイさんはダンジョンの掃除中です。」

 シェリーがそのように言うと、マリアは「あれね。大変だったわ。」と遠い目をして言葉が漏れた。マリアも経験したようだ。

「陛下のことはついでなので持っていって下さいとお願いをしただけです。」

 お願いというより弱りきったイーリスクロムに押し付けたと言っていいだろう。しかし、あくまでもお願いをしたとシェリーは言ったのに、目の前に座る狐獣人の女性はシェリーの手を取りキラキラした目で

「私とお友達になってください。」

 と言ってきた。

「は?」

「愚兄を殴ったという人は貴女ですよね。ぜひ私とお友達になって欲しいです。いつもいつも人に嫌がらせをするのが趣味と言っていい愚兄をきのこが生えるぐらい凹ました貴女とぜひ・・・つっ!」

 狐獣人の女性はシェリーの横から出てきた手に頭を叩かれていた。

「セーラ、落ち着きなさい。」

「はい。申し訳ございません。」

 涙目でセーラと呼ばれた女性はマリアに謝っていた。

「国王陛下から直接お言葉をいただくほどの御用なのね。すごいわね。」

 ユーフィアからそんな言葉を受けたが、それは凄いことなのだろうか。ただの嫌がらせにしかシェリーは思うことができない。

「凄いかどうかは知りませんが、私にとって良くないことで呼ばれたのでしょうね。それから、ユーフィアさんにこれを」

 そう言ってシェリーはユーフィアに小箱を手渡す。オーウィルディアから報酬としてもらった女神の涙と呼ばれるものだ。

「それを核として、携帯電話を作って下さい。」

 手渡された箱をユーフィアは受け取り、中を確認する。中を見たユーフィアはまるで子供のようにはしゃいでいる。

「なんて力強くて美しい魔石なんでしょう!こんな高魔力の塊の魔石なんてなかなかありません!これを使っていいのですか?ああ、世界にはこんなに素晴らしいものがまだあるのですね。」

「ちなみにそれは私の一族の者しか魔力発動しませんから、試験運用は別の魔石を使用してください。」

 ラースの血族のみが使える魔石。女神の涙いや、別の名をナディアの血と呼ばれる赤い神石。

「シェリーさんの一族?そんな魔石があるなんて凄いですね。「奥様。軍本部に到着しました。」」

 外にいる御者から声をかけられた。ユーフィアに渡すものは渡したので丁度いいタイミングだった。外から扉が開けられ、シェリーが降りようと思えば・・・目の前になぜか笑顔の第6師団長がいたので膝で飛び蹴りをかまして地面に降り立った。

「クスト!」
「師団長!」

「ユーフィアさん。ありがとうございました。取り引きの件お願いしますね。」

 シェリーはユーフィアに礼と念押しをして軍本部に入ろうとしたら目の前を遮られてしまった。

「なぜ、問題児がナヴァル家の馬車に乗っているのですか?」

 シェリーを遮ったのは第6副師団長のルジオーネだった。

「ユーフィアさんからのお誘いです。貴族であるユーフィアさんから誘われてしまえば、平民である私に断るすべはありません。」

 ルジオーネに身分というものを盾に断るすべはなかったと、しれっとシェリーはいうが、ルジオーネの目がピクリと動き

「平民はここまで入る許可は得られませんよ。」

 確かに身分を持たずに第一層に入ることのできる者は皆無と言っていいかもしれない。しかし、今回のシェリーは印籠代わりの封筒がある。それをルジオーネに見せながら

「平民に直接お声がかかることもあるみたいですね。帰ってもいいなら帰りますよ。」

 その封筒のサインを見たルジオーネはため息を吐き、シェリーに道を開けた。シェリーは開けれた道を進み、軍本部の扉のノブに手をかけたところでルジオーネに声をかけられる。

「もう幼子おさなごではないのですから、好き放題するのもいい加減にやめなさい。」

幼子おさなご?そんな時期など一時しかありませんでしたよ。私は私のすべきことをしているだけです。それを邪魔するのなら、誰であろうと刃を差し向けます。」

 全てを否定する視線をルジオーネに向け、扉の中にシェリーは入って行った。

「相変わらず、人を人として見ていないのですね。彼らが側に居れば少しは変わるかと思ったのですが、彼らはどうしたのでしょうね。」

「いっつ。本当に人族かと疑いたくなるよな。」

 鳩尾を押さえながらルジオーネの隣に第6師団長のクストが来た。

「師団長。扉から離れて下さいと忠告しましたよね。」

「まさか嬢ちゃんが乗ってるなんて思わないじゃないか。」

 確かに自分の家の馬車に全く関係がないシェリーが乗っているなんて想定外のことだろう。

「しかし、彼らがいないってことは何処かに捨てられたんじゃないのか?」

「Sランクの冒険者を?ラースの公子を?エルフの族長の息子を?ギランの傭兵団長を?何処に捨てるのですか?」

 ルジオーネは呆れたように言う。

「無理だな。」

 クストは秋の雲が流れる空を見上げながら、遠い目をして言った。
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