番とは呪いだと思いませんか―聖女だからと言ってツガイが五人も必要なのでしょうか―

白雲八鈴

文字の大きさ
287 / 894
22章 獣人たちの騒がしい大祭

276

しおりを挟む
「今日はどこもかしこも開店休業状態なのですよ」

「首都のお店がですか?」

 受付けの女性の言葉にシェリーは首を傾けながら尋ねる。冒険者ギルドがこの状態だということは、他の店もそうあり得ることではある。

「かわゆい……あ、いいえ、ギラン中です」

 ……おかしな事を言われた。一つの祭りで国中が?ああ、各地で一斉に祭りをするという事なのだろう。

「流石にミレーテでは10か所ほどありますけど、一般的には公園などの広場に集まって観戦していますから、よっぽどの事が無い限り、席は立たないですね」

 余計に言われている意味が分からなくなった。

「本当は私も見に行きたかったのですけど、流石にキルドを閉めるわけには行きませんからね。うふふふ、でもラース様とこうしてご一緒にお茶をすることが出来て幸せですぅ」

 凄くキラキラした目を向けられている。しかし、先程の言葉からすると、モニターか何かが全国各地にあって、今回の祭りを中継していると捉えられる。この世界にそのような物がるのは見たことはない。

 いや、もしかして、この国には在るのかもしれない。このパリの旧市街のような街並みの首都ミレーテを作り上げた天津ならそれらを作り上げることができたのかもしれない。

「祭りの様子が映し出される何かがあるのですか?」

 シェリーは聞いてみる。もしそのような物があるとなれば、色々使えそうだ。

「ええ、水晶球です。あ、このような物は他国にありませんでしたね。水晶球は英雄様の遺産になります」

 やはりそうだった。そうなれば、フェクト総統があのように言ったことは大げさではなかったのだろう。国の危機的状況とは言い難いが、国民の意を損なわないためには必要だったのだろう。

「今からご一緒に会場へ行きましょうか?ええ、そうしましょう。ご案内します。マスターから会場の席は確保してあると聞いていますので大丈夫です」

 受付けの女性は段々前のめりになりながら、シェリーに詰め寄ってきた。
 案内はどちらでもいいのだが、ここの受付けの人が居なくなるのは問題があるのではないのだろうか。

「行くのは明日だと言っていたはずだ」

 声のする方に視線を向ければ、女性の背後に女性の肩に手を置き、これ以上シェリーに近づかないように引き止めているオルクスがいた。

「この祝福って誰でもこうなるのか?」

 オルクスはシェリーと女性を交互に見て言葉を漏らす。その問いに答える前に女性が立ち上がり、頭を下げた。

「『王の嘆き』ダンジョンの攻略おめでとうございます。ギルドマスターから今回の報酬と明日の会場の座席券を渡すように言われておりますので、少々お待ち下さい」

 そう言って女性は席を離れ、2階受付けの席へと戻って行っている。オルクスの背後には女性に睨みつけるような視線を向けているリオンと、ニコニコとしながらシェリーの側に近寄って来るスーウェンと、とてつもなく疲れた様子のグレイがいた。
 どうやら、シェリーのツガイである5人が揃ったことで、祝福の効力が切れたようだ。

「で、この祝福どうにかならないのか?なんか凄く腹が立つなぁ」

 オルクスがシェリーの目の前に座りながら聞いてきた。

「神の祝福ですからね。我々では干渉のしようがありませんね」

 スーウェンがシェリーの隣に座りながら答える。正確にはカイルの横になるのだが。

「何か抜け道があるんじゃないのか?」

 オルクスは諦めきれないようだ。タダでさえ己の番には4人のツガイがいるのだ。他の者にも好意を持たれるのが我慢ならないらしい。

「オリバーさんは精神干渉に対する耐性があれば祝福の影響は受けないのではないのかと言っていたけど」

 カイルは以前オリバーが言っていた事を思い出し、口に出す。しかし、その答えにリオンがカイルの隣にドカリと座り、愚痴を吐く。

「そんなものを持っている奴がどれぐらいいるんだ?殆ど居ないだろう。あと、なんで50階層攻略したそっちの方が俺たちより早いんだ?」

 リオンは何かと己にはできないことを簡単にしてしまうカイルが気に入らないようだ。

「それはシェリーが攻略した時と同じ様にひたすら進んで、邪魔な目の前の魔物をだけを倒して行ったからかな?」

 まるで、普通に攻略したような言い方だ。それには疲れて項垂れているグレイが疑問に思いカイルに尋ねる。

「それって、無理じゃないのか?四方八方から魔物は来るし、罠が発動するし対処が追いつかったぞ」

「あれ知らなかったのか?それじゃ、時間がかかるのも頷ける。ここのダンジョンの罠がある道は間違っている道だと。正解の道を通ると罠はないと。有名だと聞いたんだけどなぁ?」

「「「「は?」」」」

 当たり前のように言うカイルに4人の疑問の声が同時に発せられた。

「規模が相当広いダンジョンだけど、一番短距離の道を選択すると罠がないから、素材採取の為に寄り道をしなければ楽だって耳にしたんだけど?」

しおりを挟む
感想 49

あなたにおすすめの小説

二百年の眠り姫は、五人の薔薇騎士と龍に溺愛される

七海美桜
恋愛
旧タイトル:五人のイケメン薔薇騎士団団長に溺愛されて200年の眠りから覚めた聖女王女は困惑するばかりです! フーゲンベルク大陸で、長く大陸の大半を治めていたバッハシュタイン王国で、最後の古龍への生贄となった第三王女のヴェンデルガルト。しかしそれ以降古龍が亡くなり王国は滅びバルシュミーデ皇国の治世になり二百年後。封印されていたヴェンデルガルトが目覚めると、魔法は滅びた世で「治癒魔法」を使えるのは彼女だけ。亡き王国の王女という事で城に客人として滞在する事になるのだが、治癒魔法を使える上「金髪」である事から「黄金の魔女」と恐れられてしまう。しかしそんな中。五人の美青年騎士団長たちに溺愛されて、愛され過ぎて困惑する毎日。彼女を生涯の伴侶として愛する古龍・コンスタンティンは生まれ変わり彼女と出逢う事が出来るのか。龍と薔薇に愛されたヴェンデルガルトは、誰と結ばれるのか。 この作品は、小説家になろうにも掲載しています。

【完結】母になります。

たろ
恋愛
母親になった記憶はないのにわたしいつの間にか結婚して子供がいました。 この子、わたしの子供なの? 旦那様によく似ているし、もしかしたら、旦那様の隠し子なんじゃないのかしら? ふふっ、でも、可愛いわよね? わたしとお友達にならない? 事故で21歳から5年間の記憶を失くしたわたしは結婚したことも覚えていない。 ぶっきらぼうでムスッとした旦那様に愛情なんて湧かないわ! だけど何故かこの3歳の男の子はとても可愛いの。

ストーカー婚約者でしたが、転生者だったので経歴を身綺麗にしておく

犬野きらり
恋愛
リディア・ガルドニ(14)、本日誕生日で転生者として気付きました。私がつい先程までやっていた行動…それは、自分の婚約者に対して重い愛ではなく、ストーカー行為。 「絶対駄目ーー」 と前世の私が気づかせてくれ、そもそも何故こんな男にこだわっていたのかと目が覚めました。 何の物語かも乙女ゲームの中の人になったのかもわかりませんが、私の黒歴史は証拠隠滅、慰謝料ガッポリ、新たな出会い新たな人生に進みます。 募集 婿入り希望者 対象外は、嫡男、後継者、王族 目指せハッピーエンド(?)!! 全23話で完結です。 この作品を気に留めて下さりありがとうございます。感謝を込めて、その後(直後)2話追加しました。25話になりました。

脅迫して意中の相手と一夜を共にしたところ、逆にとっ捕まった挙げ句に逃げられなくなりました。

石河 翠
恋愛
失恋した女騎士のミリセントは、不眠症に陥っていた。 ある日彼女は、お気に入りの毛布によく似た大型犬を見かけ、偶然隠れ家的酒場を発見する。お目当てのわんこには出会えないものの、話の合う店長との時間は、彼女の心を少しずつ癒していく。 そんなある日、ミリセントは酒場からの帰り道、元カレから復縁を求められる。きっぱりと断るものの、引き下がらない元カレ。大好きな店長さんを巻き込むわけにはいかないと、ミリセントは覚悟を決める。実は店長さんにはとある秘密があって……。 真っ直ぐでちょっと思い込みの激しいヒロインと、わんこ系と見せかけて実は用意周到で腹黒なヒーローの恋物語。 ハッピーエンドです。 この作品は、他サイトにも投稿しております。 表紙絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品(写真のID:4274932)をお借りしております。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

召喚とか聖女とか、どうでもいいけど人の都合考えたことある?

浅海 景
恋愛
水谷 瑛莉桂(みずたに えりか)の目標は堅実な人生を送ること。その一歩となる社会人生活を踏み出した途端に異世界に召喚されてしまう。召喚成功に湧く周囲をよそに瑛莉桂は思った。 「聖女とか絶対ブラックだろう!断固拒否させてもらうから!」 ナルシストな王太子や欲深い神官長、腹黒騎士などを相手に主人公が幸せを勝ち取るため奮闘する物語です。

異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?

すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。 一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。 「俺とデートしない?」 「僕と一緒にいようよ。」 「俺だけがお前を守れる。」 (なんでそんなことを私にばっかり言うの!?) そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。 「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」 「・・・・へ!?」 『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!? ※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。 ※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。 ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。

疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!

ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。 退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた! 私を陥れようとする兄から逃れ、 不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。 逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋? 異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。 この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?

処理中です...