番とは呪いだと思いませんか―聖女だからと言ってツガイが五人も必要なのでしょうか―

白雲八鈴

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22章 獣人たちの騒がしい大祭

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 中央地区のフェクトス総統の職場である公舎を出ると、祭りの本祭であった武闘大会が終わったにも関わらず、騒がしかった。
 大通りの端には屋台が出ていたり、少し空間があるところではパフォーマンスが行われていたり、広場では透明な大きな板状の物が掲げられ、今回の大会のダイジェストが流れていた。

 そこでシェリーはふと足を止める。冒険者ギルドの女性が言っていた物はコレかと。これはパブリックビューイングではないかと、本当にこんな物がこの国に存在しているなんて、ギラン共和国はどうなっているのか。

 モニターに見入っていた人がこちらに気が付き、指をさしている者が出始めた。オルクスとリオンのことを指しているのだろう。騒ぎが大きくなる前にシェリーは足を進める。

「何か気になったのかな?」

 カイルがシェリーに聞いてきた。シェリーが足を止めたことを言っているのだろう。

「あの、モニ···」

 モニターと言ってもわからないか。あの女性は何と言っていただろうか。ああ。

「水晶球でしたか、あれがあれば、国として洗脳教育をするのにもってこいだと思いましたから」

「洗脳教育?」

「ええ、マルス帝国なら喜々として活用しそうです。くだらないことですが、国民の意志を一定の方向に向けさすにはいいものです」

「時々シェリーは恐ろしい事を平気な顔で言うよね。使い方によったら、国民を操る事ができると言っていない?」

「さぁ。そこまではどうですかね」

 そんなどうでもいい話をしながら歩いていく。どこに向かっているかと言えば、冒険者ギルドだった。そこの転移の間で転移を行うつもりだ。 

 ちらちらとこちらに視線を向けて来る者が増えてきた。中央地区から南地区に向かう大きな通りに出たことで、人通りが多くなったようだ。

 しかし、声を掛けようという者はいない。いや、シェリーの目の前に10歳ほどの少年が飴細工を持って立っていた。別に通行の邪魔をしているわけではないが、人通りの多い通りで、一人の少年が猫のような動物の顔を象った仮面を横に被って立っていた。

「ねぇ。楽しんでる?」

 そんな事をシェリーに問いかけた。シェリーは足を止め、その仮面を被った少年を視る。

「祭りに来たわけではありませんので」

「そう、もったいないね。楽しむ時は楽しまないと。ねぇ、そんな生き方息苦しくない?」

「以前も答えましたが、これが私の生き方です」

 少年は鳥を象った飴細工の鳥の羽を口に咥え、パキリと折る。

「そう、じゃこれをあげる」

 翼を広げた鳥の片翼が無くなった飴細工を渡された。渡した少年の口はモゴモゴと動いている。

「片翼の鳥がなにか?」

「ふふ、そのうちわかるよ」

 そう言って少年は人波の中に消えて行った。渡された飴細工を眺め、シェリーはため息を吐く。相変わらず意味がわからないと。

「シェリー。あの子供は」

 カイルがシェリーに声を掛けるが、シェリーは飴細工を亜空間収納の鞄に仕舞い歩き出した。そして、少年が消えた方に視線を向けながら答える。

「祭りを楽しんでいるのは何も人だけではないと言うことですよ」

人々が楽しそうにしている光景が目に映る。屋台で食べ物を買っている人、露天で商品を眺めている人、吟遊詩人の歌に耳を傾けている人。
 そして、親に手を繋がれてはしゃいでいる子供。シェリーの目にはここではない過去の風景と重なってしまう。

「え?あんなに普通に神と呼ばれる者が混じっているのか?」

 グレイが以外だと言わんばかりに言う。そんなグレイをシェリーは人々から視線を外し呆れるような視線を向けた。

「グレイさん。ナディア様もうろうろしていらっしゃるではないですか」

「え···あ、そうだった」

 幾度か自国の女神に遭遇している現実を突きつけられ、納得したようだ。

「あの鳥の意味は何だったのですか?」

 スーウェンは少年が意味深な感じで渡した飴細工が気になったようだ。

「知りませんよ。ただ単に飴を渡したかっただけなのか。意味があるのか考えるだけ無駄です」

 色々振り回されてきたシェリーはきちんと言葉にしない神の戯言は基本的に無視するようにしている。神と呼ばれる者たちの感覚と人であるシェリーの感覚は違うのだ。真剣に考えるだけ無駄と切り捨てる。

 楽しんでる···か。ルークと一緒なら楽しもうという気も起こるだろうが、そうでもないなら、シェリーにとって意味の無いものだ。

 人々のざわめきを背後にシェリーはギルドの扉を潜る。そこは普段と打って変わって、とても静かな空間だった。
 転移の間を使わせてもらう為に受付けに足を向けた。

 シェリーはギルドのタグを提示して、目の前の女性に声を掛ける。

「転移の間を使わせてもらえますか?」

 シェリーが声を掛けるも受付けの女性はシェリーの後ろに視線を向けて頬を染めている。シェリーの後ろ···5人だけだったと思うが、他に何かあるのだろうか。

「転移の間を使いたいのですが?」

 もう一度同じ事を言ってみるが反応がない。一階で声を掛けたのが間違いだったのだろうか。周りを見渡すが、開店休業と2階の女性が言っていたので職員の人数も減らされているのか、この場には彼女しか見られない。

「なぁ。転移の間は使えるのか使えないのかどっちなんだ?」

 今度はオルクスが受付けの女性に聞いている。

「ふぇ!あっ。どうぞ」

 なにか知らないが、女性は息を吹き返したようだ。シェリーは使用料をカウンターに置き、ここに来たときに出ていった扉の中に入って行った。

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補足
 シェリーは塩対応ですが、シェリーの後ろは皆、イケメンだったのです(笑)
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