330 / 894
24章-1 魔の大陸-魔女への依頼
319
しおりを挟む
シェリーの前にはニコニコと笑っているカイルがいる。そして、シェリーはスーウェンの膝の上に座らされていた。
この状況は何かと言われれば、シェリーに剣を与えて貰えなかった二人からの要望で、裏庭で3人でお茶をしているのだった。
他のグレイとオルクスとリオンはと言うと、スーウェンが張った結界の中で、黒狼クロードと手合わせをしていた。しかし、双剣を手にしたグレイも雷電を扱うことができるようになったオルクスも天津の技を使えるようになったリオンもすでに地に伏していた。
「三人を相手にして息も乱さずにいるクロードは流石と言っていいのでしょうか」
膝の上にいるシェリーの手を握っているスーウェンが言った。
「やっぱり実戦経験があるのと無いのとでは違うよね」
経験値の差ではないかと、シェリーの口元にクッキーを差し出しているカイルが言った。
「カイルさん、胸がいっぱいなのですが?」
そんな二人に挟まれたシェリーはクッキーはいらないと言葉にする。
「じゃ、お茶にする?」
今度はティーカップを差し出すカイル。そんなカイルにシェリーは腐った魚のような目を向ける。
「おい!結界を解くか、俺を戻せ!」
三人が再起不能になった事で、すべきことは終わったとばかりに結界の内側から声が掛けられた。
「スーウェンさん結界を解いてください。カイルさんはそのクッキーをクロードさんに渡してください」
シェリーは横にのけられているクッキーを指し示す。これは今回のお礼だ。クロードに報酬は何がいいと聞いたところ『カントリー○アム』と言われたので、以前炎王からの取引で得たお菓子をシェリーはクロードの報酬として出したのだ。
「思ったより保たなかったね」
シェリーとの時間を邪魔された事で、若干カイルの機嫌が悪くなった。クロードも炎王と同じ感じがするため、なるべくシェリーに近づけたくないのだ。
結界を解かれたクロードは苛立った雰囲気を醸しながら近づいてきた。そして、ぞんざいに椅子を引き、ドカリと腰を下ろす。
「おい!あの不出来な奴らはなんだ?」
あの3人の事だろう。シェリーは腐った魚の目のままクロードを見て答える。
「ですから、クロードさんに頼んだのですよ。変革者であるクロードさんに」
「俺に死んだような目を向けるな!気味が悪い」
そう言いながらクロードは己が要望したカントリー○アムを口にする。その時ふっと頬が緩んだ。きっと何か思い出の食べ物なのだろう。
「変革者?ああ、称号のことか。いや、関係ないだろ?っていうか、あいつらだ!不出来すぎるぞ。餓鬼に切れ味のいい包丁だけを与えて、全く使いこなせていない」
ファブロの危険極まりない剣を扱いきれていない事を言っているのだろうが、先日手に入れたばかりなのでそれは難しいのではないのだろうか。
「その辺りは同じ匠の刀を持っているクロードさんが鍛えてあげてください」
「いや、刀のこともそうだが、技も荒すぎる。それも使いこなせていない。あの豹獣人はまだ矯正することは可能だ。だが、あの鬼人の技は駄目だ。どうみても制御も何もあったものじゃない。力の暴力だ」
天津の『龍の咆哮』の事を言っているのだろう。それは天津に任せるべきか。いや、天津も制御をしている風ではなかった。力の全てをその拳に込めて打ち放つ。それが『龍の咆哮』だ。
しかし、シェリーが魔力圧縮をしても制御はできる。だから、問題はリオンが己の魔力を扱いきれていない事にあるのではないのかとシェリーは結論づけた。
シェリーは後ろに振り向き見上げる。
「スーウェンさん、リオンさんに魔力の扱い方を教えてあげてもらえません?」
そうシェリーから言われたスーウェンは『うっ』っと声を漏らして横を向いてしまった。エルフの特徴的な長い耳まで真っ赤になっていた。
「何処に照れる要素があるんだ?そんな死んだ目で頼み事をされて」
呆れるようなクロードの声が耳に入ってきた。シェリーはその目のままクロードの方に向く。
「だからコエーって」
そのクロードは口をもごもごさせている。
「さっきからシェリーの事、悪く言ってるのが腹立つんだけど?」
シェリーとのお茶を邪魔され、己の番を貶す言葉を放つ目の前の黒狼を射殺さんばかりに視線を向けているカイルがユラリと立ち上がる。
「べ、別にあんたの事を悪く言ってないだろ?」
そう、言いながら椅子を引き、クロードは逃げ腰だ。
「そう言う事を言っているわけじゃない」
カイルはクロードの首根っこをガシリと掴み、引きずって庭の中央まで歩いて行く。
クロードは引きずられながら『獣人が竜人に敵うはずないだろ!』と叫んでいる。
「あーあ、クロワンコくん。竜の兄ちゃんを怒らせてしまったんだ」
いつの間にか陽子がクロードが座っていた椅子に現れ、お菓子を貪っていた。陽子の仕事は終わったのだろうか。
この状況は何かと言われれば、シェリーに剣を与えて貰えなかった二人からの要望で、裏庭で3人でお茶をしているのだった。
他のグレイとオルクスとリオンはと言うと、スーウェンが張った結界の中で、黒狼クロードと手合わせをしていた。しかし、双剣を手にしたグレイも雷電を扱うことができるようになったオルクスも天津の技を使えるようになったリオンもすでに地に伏していた。
「三人を相手にして息も乱さずにいるクロードは流石と言っていいのでしょうか」
膝の上にいるシェリーの手を握っているスーウェンが言った。
「やっぱり実戦経験があるのと無いのとでは違うよね」
経験値の差ではないかと、シェリーの口元にクッキーを差し出しているカイルが言った。
「カイルさん、胸がいっぱいなのですが?」
そんな二人に挟まれたシェリーはクッキーはいらないと言葉にする。
「じゃ、お茶にする?」
今度はティーカップを差し出すカイル。そんなカイルにシェリーは腐った魚のような目を向ける。
「おい!結界を解くか、俺を戻せ!」
三人が再起不能になった事で、すべきことは終わったとばかりに結界の内側から声が掛けられた。
「スーウェンさん結界を解いてください。カイルさんはそのクッキーをクロードさんに渡してください」
シェリーは横にのけられているクッキーを指し示す。これは今回のお礼だ。クロードに報酬は何がいいと聞いたところ『カントリー○アム』と言われたので、以前炎王からの取引で得たお菓子をシェリーはクロードの報酬として出したのだ。
「思ったより保たなかったね」
シェリーとの時間を邪魔された事で、若干カイルの機嫌が悪くなった。クロードも炎王と同じ感じがするため、なるべくシェリーに近づけたくないのだ。
結界を解かれたクロードは苛立った雰囲気を醸しながら近づいてきた。そして、ぞんざいに椅子を引き、ドカリと腰を下ろす。
「おい!あの不出来な奴らはなんだ?」
あの3人の事だろう。シェリーは腐った魚の目のままクロードを見て答える。
「ですから、クロードさんに頼んだのですよ。変革者であるクロードさんに」
「俺に死んだような目を向けるな!気味が悪い」
そう言いながらクロードは己が要望したカントリー○アムを口にする。その時ふっと頬が緩んだ。きっと何か思い出の食べ物なのだろう。
「変革者?ああ、称号のことか。いや、関係ないだろ?っていうか、あいつらだ!不出来すぎるぞ。餓鬼に切れ味のいい包丁だけを与えて、全く使いこなせていない」
ファブロの危険極まりない剣を扱いきれていない事を言っているのだろうが、先日手に入れたばかりなのでそれは難しいのではないのだろうか。
「その辺りは同じ匠の刀を持っているクロードさんが鍛えてあげてください」
「いや、刀のこともそうだが、技も荒すぎる。それも使いこなせていない。あの豹獣人はまだ矯正することは可能だ。だが、あの鬼人の技は駄目だ。どうみても制御も何もあったものじゃない。力の暴力だ」
天津の『龍の咆哮』の事を言っているのだろう。それは天津に任せるべきか。いや、天津も制御をしている風ではなかった。力の全てをその拳に込めて打ち放つ。それが『龍の咆哮』だ。
しかし、シェリーが魔力圧縮をしても制御はできる。だから、問題はリオンが己の魔力を扱いきれていない事にあるのではないのかとシェリーは結論づけた。
シェリーは後ろに振り向き見上げる。
「スーウェンさん、リオンさんに魔力の扱い方を教えてあげてもらえません?」
そうシェリーから言われたスーウェンは『うっ』っと声を漏らして横を向いてしまった。エルフの特徴的な長い耳まで真っ赤になっていた。
「何処に照れる要素があるんだ?そんな死んだ目で頼み事をされて」
呆れるようなクロードの声が耳に入ってきた。シェリーはその目のままクロードの方に向く。
「だからコエーって」
そのクロードは口をもごもごさせている。
「さっきからシェリーの事、悪く言ってるのが腹立つんだけど?」
シェリーとのお茶を邪魔され、己の番を貶す言葉を放つ目の前の黒狼を射殺さんばかりに視線を向けているカイルがユラリと立ち上がる。
「べ、別にあんたの事を悪く言ってないだろ?」
そう、言いながら椅子を引き、クロードは逃げ腰だ。
「そう言う事を言っているわけじゃない」
カイルはクロードの首根っこをガシリと掴み、引きずって庭の中央まで歩いて行く。
クロードは引きずられながら『獣人が竜人に敵うはずないだろ!』と叫んでいる。
「あーあ、クロワンコくん。竜の兄ちゃんを怒らせてしまったんだ」
いつの間にか陽子がクロードが座っていた椅子に現れ、お菓子を貪っていた。陽子の仕事は終わったのだろうか。
2
あなたにおすすめの小説
二百年の眠り姫は、五人の薔薇騎士と龍に溺愛される
七海美桜
恋愛
旧タイトル:五人のイケメン薔薇騎士団団長に溺愛されて200年の眠りから覚めた聖女王女は困惑するばかりです!
フーゲンベルク大陸で、長く大陸の大半を治めていたバッハシュタイン王国で、最後の古龍への生贄となった第三王女のヴェンデルガルト。しかしそれ以降古龍が亡くなり王国は滅びバルシュミーデ皇国の治世になり二百年後。封印されていたヴェンデルガルトが目覚めると、魔法は滅びた世で「治癒魔法」を使えるのは彼女だけ。亡き王国の王女という事で城に客人として滞在する事になるのだが、治癒魔法を使える上「金髪」である事から「黄金の魔女」と恐れられてしまう。しかしそんな中。五人の美青年騎士団長たちに溺愛されて、愛され過ぎて困惑する毎日。彼女を生涯の伴侶として愛する古龍・コンスタンティンは生まれ変わり彼女と出逢う事が出来るのか。龍と薔薇に愛されたヴェンデルガルトは、誰と結ばれるのか。
この作品は、小説家になろうにも掲載しています。
【完結】母になります。
たろ
恋愛
母親になった記憶はないのにわたしいつの間にか結婚して子供がいました。
この子、わたしの子供なの?
旦那様によく似ているし、もしかしたら、旦那様の隠し子なんじゃないのかしら?
ふふっ、でも、可愛いわよね?
わたしとお友達にならない?
事故で21歳から5年間の記憶を失くしたわたしは結婚したことも覚えていない。
ぶっきらぼうでムスッとした旦那様に愛情なんて湧かないわ!
だけど何故かこの3歳の男の子はとても可愛いの。
ストーカー婚約者でしたが、転生者だったので経歴を身綺麗にしておく
犬野きらり
恋愛
リディア・ガルドニ(14)、本日誕生日で転生者として気付きました。私がつい先程までやっていた行動…それは、自分の婚約者に対して重い愛ではなく、ストーカー行為。
「絶対駄目ーー」
と前世の私が気づかせてくれ、そもそも何故こんな男にこだわっていたのかと目が覚めました。
何の物語かも乙女ゲームの中の人になったのかもわかりませんが、私の黒歴史は証拠隠滅、慰謝料ガッポリ、新たな出会い新たな人生に進みます。
募集 婿入り希望者
対象外は、嫡男、後継者、王族
目指せハッピーエンド(?)!!
全23話で完結です。
この作品を気に留めて下さりありがとうございます。感謝を込めて、その後(直後)2話追加しました。25話になりました。
脅迫して意中の相手と一夜を共にしたところ、逆にとっ捕まった挙げ句に逃げられなくなりました。
石河 翠
恋愛
失恋した女騎士のミリセントは、不眠症に陥っていた。
ある日彼女は、お気に入りの毛布によく似た大型犬を見かけ、偶然隠れ家的酒場を発見する。お目当てのわんこには出会えないものの、話の合う店長との時間は、彼女の心を少しずつ癒していく。
そんなある日、ミリセントは酒場からの帰り道、元カレから復縁を求められる。きっぱりと断るものの、引き下がらない元カレ。大好きな店長さんを巻き込むわけにはいかないと、ミリセントは覚悟を決める。実は店長さんにはとある秘密があって……。
真っ直ぐでちょっと思い込みの激しいヒロインと、わんこ系と見せかけて実は用意周到で腹黒なヒーローの恋物語。
ハッピーエンドです。
この作品は、他サイトにも投稿しております。
表紙絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品(写真のID:4274932)をお借りしております。
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
召喚とか聖女とか、どうでもいいけど人の都合考えたことある?
浅海 景
恋愛
水谷 瑛莉桂(みずたに えりか)の目標は堅実な人生を送ること。その一歩となる社会人生活を踏み出した途端に異世界に召喚されてしまう。召喚成功に湧く周囲をよそに瑛莉桂は思った。
「聖女とか絶対ブラックだろう!断固拒否させてもらうから!」
ナルシストな王太子や欲深い神官長、腹黒騎士などを相手に主人公が幸せを勝ち取るため奮闘する物語です。
異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?
すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。
一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。
「俺とデートしない?」
「僕と一緒にいようよ。」
「俺だけがお前を守れる。」
(なんでそんなことを私にばっかり言うの!?)
そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。
「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」
「・・・・へ!?」
『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!?
※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。
※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。
ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。
疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!
ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。
退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた!
私を陥れようとする兄から逃れ、
不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。
逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋?
異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。
この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる