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25章-1 冬期休暇-辺境から忍び寄る影
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「あら、怖い。怖い。ここがモルディールのギルドよ。入って」
カーラは後ろを振り向きながら、手招きをして、建物の中に入っていった。剣と盾が図柄の看板が掲げられた建物であり、そこが冒険者ギルドだということが、示されていた。
ギルドの中の一室にシェリーとカイルが通された。会議室のように大きめのテーブルとそれを囲うように複数の椅子が置かれている部屋だ。
「まぁ、そこに座って。改めまして、モルディールのギルドマスターをしているカーラ・シャルールよ」
やはり、カーラ・シャルールで間違いないようだ。
しかし、見た目はどう見ても筋肉ウサギのグアトールの一族にしか見えない。そもそもウサギ族が冒険者ギルドのマスターをしている時点で普通ではないのだ。
「Sランクのカイルだ」
「Bランクのシェリーです」
お互いが軽く自己紹介をして席に着いた。そして、カーラが神妙な顔をして話しだす。
「実はね。何があったか何もわからないのよ。気がついたら街の外にいたのよ。訳がわからないわ」
何もわからないと言いたいが為にそこまで神妙な顔をしなくても、いいのではないのだろうか。
「だから、何が起こったのか教えて欲しいのよ。王都の本部から何か言われて来てくれたのでしょ?Sランクだなんて、こんな辺境にまで普通は来てくれないもの」
カーラはカイルを見て言う。元々このモルディールは何も問題ないというぐらい、平和な街だった。魔物もスライムとかゴブリンとか低級な魔物ばかりしか見かけない地域だ。低級な魔物しかいない理由は隣国に関係するのだが、ここでは詳しくは語るまい。
だから、わざわざSランクがこのモルディールに来る事態が非常事態だと。
「こっちは連絡が取れなくなったモルディールと連絡を取ってくれと言われただけだ。それ以外に言うことはない」
カイルは今回の依頼の内容のみを答えた。何が起こったのかという質問をギルドマスターからされたにも関わらず。
「その説明じゃ何もわからないわ。私としても何が起こったか把握をしておかないと、これからどうするか決められないじゃない?」
カーラの言うことは正論だ。何もわからないと対策も打てない。ポッカリと抜け落ちた記憶の期間に何が起こったか把握をしておかないといかない。
「何も言うことはない」
しかし、カイルは同じ言葉を繰り返すのみ。
これでは埒が明かないと思ったのだろう。カーラは室内でも外套のフードを深く被っているシェリーに視線を向け、今度はシェリーに尋ねる。
「じゃ、そこのお嬢さんに聞くわ。何が起こったか教えてもらえるかしら?」
矛先を向けられたシェリーはカーラを見た。フードの奥からカーラの目を見て、とてもとても機嫌が悪く答える。
「ゴミムシがクズゴミを使っていただけです。燃やして廃棄すべきだと思いますが、これはクソ狐に始末をつけてもらわないといけませんので」
「全くわからないわ。できれば私にわかりやすく話して欲しいわ」
何も知らないカーラからしてみれば、シェリーの言葉は理解不能だった。しかし、シェリーもカイルと同じくカーラに同じ言葉を返す。
「ゴミムシの所業です」
この二人の態度にはカーラもお手上げのようだ。ため息を大きく吐き出し頭を抱えて、ピンと立っていた白く長い耳がへにょんと折れ曲がっていた。
普通ならギルドマスターとして強く出ればいいのだが、カーラの前にいるのはSランクであり竜人族のカイルとラースの目を持ったシェリーだ。
普通ならこの国には存在しない強者が目の前に存在しているのだ。
下手すれば獣人族でしかないカーラなど一捻りだろう。
「お願いよ。あった事を教えて欲しいの」
だから、カーラはただただ懇願する。教えてほしいと。
「マルス帝国の恐らく第十三部隊か新たに新設された部隊が関わっているのですけど、帝国と事を構えたいというなら、教えますが?」
「て、帝国!で、でも話を聞いただけで帝国と事を構える必要はないわよね?」
「ちっ!」
「舌打ち?!」
今回の件はとてもとても面倒なことになっているので、シェリーは事後処理をすべて国王であるイーリスクロムに任せようと····いや、押し付けようと思っているのだ。
しかし、ここでどう見ても脳筋ウサギの血族であるこのギルドマスターに話すと、グアトールの名を持つ者達に伝わってしまうことは明白だ。
下手すると、統括師団長閣下が動きだしてしまうかもしれない。
まだまだ、シェリーとしては手札が揃っていない状態で軍に動かれるのは、好ましくない。
なので、イーリスクロムに内々で動いてもらおうと考えているのだ。
「ギルドマスターさん。今回の依頼はこのモルディールと連絡を取ることです。依頼を完遂しましたので、帰ります」
そう言って、シェリーは立ち上がる。そして、隣のカイルも立ち上がって、シェリーの手を取って部屋の外に出ようとする。
「ちょっと待って!依頼はそうかもしれないけれど、まだ帰らないで!このまま帰るとじい様に言いつけてやるんだから」
じい様。恐らく統括師団長閣下のことだろう。この国の者なら、子供のような脅し文句が効いたかもしれないが、シェリーもカイルもこの国の者ではない。だから、シェリーは振り返りカーラに答える。
「お好きにどうぞ」
そう言って部屋の扉を閉めた。閉められた部屋の中ではカーラの奇声と物が壊れる音が響いていた。統括閣下の名で折れない者はきっといなかったのだろう。カーラにとってこれはよい教訓になったであろう。本物の力を持つ者は権力というものに跪かないということに。
カーラは後ろを振り向きながら、手招きをして、建物の中に入っていった。剣と盾が図柄の看板が掲げられた建物であり、そこが冒険者ギルドだということが、示されていた。
ギルドの中の一室にシェリーとカイルが通された。会議室のように大きめのテーブルとそれを囲うように複数の椅子が置かれている部屋だ。
「まぁ、そこに座って。改めまして、モルディールのギルドマスターをしているカーラ・シャルールよ」
やはり、カーラ・シャルールで間違いないようだ。
しかし、見た目はどう見ても筋肉ウサギのグアトールの一族にしか見えない。そもそもウサギ族が冒険者ギルドのマスターをしている時点で普通ではないのだ。
「Sランクのカイルだ」
「Bランクのシェリーです」
お互いが軽く自己紹介をして席に着いた。そして、カーラが神妙な顔をして話しだす。
「実はね。何があったか何もわからないのよ。気がついたら街の外にいたのよ。訳がわからないわ」
何もわからないと言いたいが為にそこまで神妙な顔をしなくても、いいのではないのだろうか。
「だから、何が起こったのか教えて欲しいのよ。王都の本部から何か言われて来てくれたのでしょ?Sランクだなんて、こんな辺境にまで普通は来てくれないもの」
カーラはカイルを見て言う。元々このモルディールは何も問題ないというぐらい、平和な街だった。魔物もスライムとかゴブリンとか低級な魔物ばかりしか見かけない地域だ。低級な魔物しかいない理由は隣国に関係するのだが、ここでは詳しくは語るまい。
だから、わざわざSランクがこのモルディールに来る事態が非常事態だと。
「こっちは連絡が取れなくなったモルディールと連絡を取ってくれと言われただけだ。それ以外に言うことはない」
カイルは今回の依頼の内容のみを答えた。何が起こったのかという質問をギルドマスターからされたにも関わらず。
「その説明じゃ何もわからないわ。私としても何が起こったか把握をしておかないと、これからどうするか決められないじゃない?」
カーラの言うことは正論だ。何もわからないと対策も打てない。ポッカリと抜け落ちた記憶の期間に何が起こったか把握をしておかないといかない。
「何も言うことはない」
しかし、カイルは同じ言葉を繰り返すのみ。
これでは埒が明かないと思ったのだろう。カーラは室内でも外套のフードを深く被っているシェリーに視線を向け、今度はシェリーに尋ねる。
「じゃ、そこのお嬢さんに聞くわ。何が起こったか教えてもらえるかしら?」
矛先を向けられたシェリーはカーラを見た。フードの奥からカーラの目を見て、とてもとても機嫌が悪く答える。
「ゴミムシがクズゴミを使っていただけです。燃やして廃棄すべきだと思いますが、これはクソ狐に始末をつけてもらわないといけませんので」
「全くわからないわ。できれば私にわかりやすく話して欲しいわ」
何も知らないカーラからしてみれば、シェリーの言葉は理解不能だった。しかし、シェリーもカイルと同じくカーラに同じ言葉を返す。
「ゴミムシの所業です」
この二人の態度にはカーラもお手上げのようだ。ため息を大きく吐き出し頭を抱えて、ピンと立っていた白く長い耳がへにょんと折れ曲がっていた。
普通ならギルドマスターとして強く出ればいいのだが、カーラの前にいるのはSランクであり竜人族のカイルとラースの目を持ったシェリーだ。
普通ならこの国には存在しない強者が目の前に存在しているのだ。
下手すれば獣人族でしかないカーラなど一捻りだろう。
「お願いよ。あった事を教えて欲しいの」
だから、カーラはただただ懇願する。教えてほしいと。
「マルス帝国の恐らく第十三部隊か新たに新設された部隊が関わっているのですけど、帝国と事を構えたいというなら、教えますが?」
「て、帝国!で、でも話を聞いただけで帝国と事を構える必要はないわよね?」
「ちっ!」
「舌打ち?!」
今回の件はとてもとても面倒なことになっているので、シェリーは事後処理をすべて国王であるイーリスクロムに任せようと····いや、押し付けようと思っているのだ。
しかし、ここでどう見ても脳筋ウサギの血族であるこのギルドマスターに話すと、グアトールの名を持つ者達に伝わってしまうことは明白だ。
下手すると、統括師団長閣下が動きだしてしまうかもしれない。
まだまだ、シェリーとしては手札が揃っていない状態で軍に動かれるのは、好ましくない。
なので、イーリスクロムに内々で動いてもらおうと考えているのだ。
「ギルドマスターさん。今回の依頼はこのモルディールと連絡を取ることです。依頼を完遂しましたので、帰ります」
そう言って、シェリーは立ち上がる。そして、隣のカイルも立ち上がって、シェリーの手を取って部屋の外に出ようとする。
「ちょっと待って!依頼はそうかもしれないけれど、まだ帰らないで!このまま帰るとじい様に言いつけてやるんだから」
じい様。恐らく統括師団長閣下のことだろう。この国の者なら、子供のような脅し文句が効いたかもしれないが、シェリーもカイルもこの国の者ではない。だから、シェリーは振り返りカーラに答える。
「お好きにどうぞ」
そう言って部屋の扉を閉めた。閉められた部屋の中ではカーラの奇声と物が壊れる音が響いていた。統括閣下の名で折れない者はきっといなかったのだろう。カーラにとってこれはよい教訓になったであろう。本物の力を持つ者は権力というものに跪かないということに。
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