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25章-1 冬期休暇-辺境から忍び寄る影
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ナヴァル公爵家 side
「死ぬかと思ったー!駄犬はバカです!竜人に喧嘩を売るなんてバカです!」
狐獣人のセーラが寒さに震えながら、ナヴァル家の当主であるクストを馬鹿と言っている。馬鹿と呼ばれたクストは尻尾を内巻きにして『銀爪に喧嘩なんて売ってない』と言葉しているが、流石に英雄と呼ばれているクストでも超越者クラスの威圧は堪えたのだろう。手が震えていた。
確かにクストが文句を言っていたのはシェリーにだが、クストがユーフィアのことで怒りを顕にしたように、カイルも番であるシェリーの事を言われ、怒っていたに過ぎない。しかし、カイルがシェリーの番であることを知っているのはホンの一握りの者達だけで、クストはなぜカイルが怒ったのか理解できないでいた。
「ユーフィア様。別の部屋に移りましょう。セーラ!温かいお茶の用意をしてきなさい!」
「かしこまりました!」
マリアのユーフィアを気遣う言葉にセーラはこの凍っている部屋から直ぐにでも出ていきたいと言わんばかりに、脱兎の如く部屋から出ていった。
そして、セーラと入れ替わるようにルジオーネが凍りついた部屋に入ってきて、唖然としている。
「何があったのですか?」
「駄犬が銀爪を怒らせたのです」
金狼のマリアでさえ、クストを駄犬呼ばわりをしてしまっている。その言葉にルジオーネも慌ててクストを見る。竜人を怒らすことを何をしたんだと言いたいのだろうが、その前にクストが反論をした。
「だから俺は喧嘩を売ってない!なぜ、銀爪が怒ったのか意味がわからん。あのラースの嬢ちゃんの今までの非常識を言っただけじゃないか!」
クストは己は悪くないし、カイルが怒る意味がわからないという。そう、クストもカイルも正しい。己の番を守ろうとしただけだ。その行為は正当だろう。
ただ、シェリーは逸脱した常識と力をもっている。ユーフィアは世界から与えられた力と周りの環境に恵まれている。そこの温度差がありすぎただけだ。
羨ましい。
シェリーが心の内を漏らしてしまっただけ。
「はぁ。竜人は流石に我々では止められませんよ。それこそ爺様かフラゴル元副統括師団長閣下に相手にしてもらわないと···いや、それこそ王都が破壊されてしまいますね」
ルジオーネはため息を吐きながら、先程いた黒狼クロードか赤猿フォルスミス(シェリー曰くキングコング)に相手をしてもらわないと呟く。
「俺は弱いなぁ」
そう言って、クストはユーフィアの側に行き、部屋を移動しようと手を差し出すが、ユーフィアは何かを考えているようで、先程からのマリアの呼びかけもクストが差し出した手にも気がついていない。
「ユーフィア?」
クストがユーフィアの肩を揺らして声をかけてやっと、ユーフィアの視線がクストを捉えた。
「あの竜人の方はシェリーさんの番なのかしら?」
ユーフィアから突拍子もない言葉が出てきた。年中魔道具のことしか考えていないユーフィアの口からだ。
そのユーフィアの言葉に、ここにいる者達が固まってしまった。つがいとは?
「え?なんだか竜人の方がクストと同じように思えてしまって····」
6つの目がユーフィアを見つめる。カイルがクストと同じ?
「だって、そうでしょう?ここ最近ずっとシェリーさんの側にいらっしゃるでしょう?シェリーさんには優しい目を向けてますけど、私には厳しい目を向けられましたし。クストに怒ったのもシェリーさんを悪く言ったからよ····ね?」
ユーフィアの目の前の狼獣人の三人が頭を抱えている姿をみてユーフィアの方が困惑をしてしまった。
そして、三人の狼獣人は集まって話をしだす。
「それってありえますか?」
「銀爪がラースの番って無いだろ?考えたくもない。ヤバすぎだ」
「しかし、今思えば夏頃からカークス邸に住んでいると情報にありました。行動的には銀爪の方が旦那様より常識的ですので思いもよりませんでした」
「確かに夏頃という情報も入って来ていましたが、銀爪がこの王都に流れ着いて5年ですよ?今更です」
「そうだよなぁ。今更だよなぁ」
「それはそうですよね。竜人となると番が世界のどこにいるかわかるといいますから。旦那様なんて一週間もストーカーしておりましたし」
「あのときは大変でしたね」
「······」
三人の意見がカイルはシェリーの番ではないと、まとまりかけたところで、ユーフィアが一言を投じてきた。
「シェリーさんの隠蔽の魔道具って、いつ見ても素晴らしいと思っていたの。何を隠しているかわからないかったけど、今思うと姿と魔質を隠蔽していたのね」
やはり、ユーフィアの頭の中は魔道具でいっぱいのようだ。しかし、その言葉に狼獣人の三人が騒然となる。
「姿を変えていることはわかっていましたが、魔質ですか!」
「それはやばいじゃないか!そんな事をされたら、ユーフィアがどこにいるかわからなくなるじゃないか!」
「旦那様。声が大きいです。これで銀爪はラースの小娘の番という線もでてきました」
「····」
「····」
軍人であるクストとルジオーネが天を仰ぐ。二人して嫌なことが頭を過ぎった。もしシェリーの番がカイルだとすると、ここ最近シェリーの周りに見かけるようになった4人はなんだと。
竜人が己の番に他の男を近づかせるとは思えない。竜人の番に対する執着と言っていい想いは有名な話だ。
これは恐ろしい事が起こっているのではないのかと。
「死ぬかと思ったー!駄犬はバカです!竜人に喧嘩を売るなんてバカです!」
狐獣人のセーラが寒さに震えながら、ナヴァル家の当主であるクストを馬鹿と言っている。馬鹿と呼ばれたクストは尻尾を内巻きにして『銀爪に喧嘩なんて売ってない』と言葉しているが、流石に英雄と呼ばれているクストでも超越者クラスの威圧は堪えたのだろう。手が震えていた。
確かにクストが文句を言っていたのはシェリーにだが、クストがユーフィアのことで怒りを顕にしたように、カイルも番であるシェリーの事を言われ、怒っていたに過ぎない。しかし、カイルがシェリーの番であることを知っているのはホンの一握りの者達だけで、クストはなぜカイルが怒ったのか理解できないでいた。
「ユーフィア様。別の部屋に移りましょう。セーラ!温かいお茶の用意をしてきなさい!」
「かしこまりました!」
マリアのユーフィアを気遣う言葉にセーラはこの凍っている部屋から直ぐにでも出ていきたいと言わんばかりに、脱兎の如く部屋から出ていった。
そして、セーラと入れ替わるようにルジオーネが凍りついた部屋に入ってきて、唖然としている。
「何があったのですか?」
「駄犬が銀爪を怒らせたのです」
金狼のマリアでさえ、クストを駄犬呼ばわりをしてしまっている。その言葉にルジオーネも慌ててクストを見る。竜人を怒らすことを何をしたんだと言いたいのだろうが、その前にクストが反論をした。
「だから俺は喧嘩を売ってない!なぜ、銀爪が怒ったのか意味がわからん。あのラースの嬢ちゃんの今までの非常識を言っただけじゃないか!」
クストは己は悪くないし、カイルが怒る意味がわからないという。そう、クストもカイルも正しい。己の番を守ろうとしただけだ。その行為は正当だろう。
ただ、シェリーは逸脱した常識と力をもっている。ユーフィアは世界から与えられた力と周りの環境に恵まれている。そこの温度差がありすぎただけだ。
羨ましい。
シェリーが心の内を漏らしてしまっただけ。
「はぁ。竜人は流石に我々では止められませんよ。それこそ爺様かフラゴル元副統括師団長閣下に相手にしてもらわないと···いや、それこそ王都が破壊されてしまいますね」
ルジオーネはため息を吐きながら、先程いた黒狼クロードか赤猿フォルスミス(シェリー曰くキングコング)に相手をしてもらわないと呟く。
「俺は弱いなぁ」
そう言って、クストはユーフィアの側に行き、部屋を移動しようと手を差し出すが、ユーフィアは何かを考えているようで、先程からのマリアの呼びかけもクストが差し出した手にも気がついていない。
「ユーフィア?」
クストがユーフィアの肩を揺らして声をかけてやっと、ユーフィアの視線がクストを捉えた。
「あの竜人の方はシェリーさんの番なのかしら?」
ユーフィアから突拍子もない言葉が出てきた。年中魔道具のことしか考えていないユーフィアの口からだ。
そのユーフィアの言葉に、ここにいる者達が固まってしまった。つがいとは?
「え?なんだか竜人の方がクストと同じように思えてしまって····」
6つの目がユーフィアを見つめる。カイルがクストと同じ?
「だって、そうでしょう?ここ最近ずっとシェリーさんの側にいらっしゃるでしょう?シェリーさんには優しい目を向けてますけど、私には厳しい目を向けられましたし。クストに怒ったのもシェリーさんを悪く言ったからよ····ね?」
ユーフィアの目の前の狼獣人の三人が頭を抱えている姿をみてユーフィアの方が困惑をしてしまった。
そして、三人の狼獣人は集まって話をしだす。
「それってありえますか?」
「銀爪がラースの番って無いだろ?考えたくもない。ヤバすぎだ」
「しかし、今思えば夏頃からカークス邸に住んでいると情報にありました。行動的には銀爪の方が旦那様より常識的ですので思いもよりませんでした」
「確かに夏頃という情報も入って来ていましたが、銀爪がこの王都に流れ着いて5年ですよ?今更です」
「そうだよなぁ。今更だよなぁ」
「それはそうですよね。竜人となると番が世界のどこにいるかわかるといいますから。旦那様なんて一週間もストーカーしておりましたし」
「あのときは大変でしたね」
「······」
三人の意見がカイルはシェリーの番ではないと、まとまりかけたところで、ユーフィアが一言を投じてきた。
「シェリーさんの隠蔽の魔道具って、いつ見ても素晴らしいと思っていたの。何を隠しているかわからないかったけど、今思うと姿と魔質を隠蔽していたのね」
やはり、ユーフィアの頭の中は魔道具でいっぱいのようだ。しかし、その言葉に狼獣人の三人が騒然となる。
「姿を変えていることはわかっていましたが、魔質ですか!」
「それはやばいじゃないか!そんな事をされたら、ユーフィアがどこにいるかわからなくなるじゃないか!」
「旦那様。声が大きいです。これで銀爪はラースの小娘の番という線もでてきました」
「····」
「····」
軍人であるクストとルジオーネが天を仰ぐ。二人して嫌なことが頭を過ぎった。もしシェリーの番がカイルだとすると、ここ最近シェリーの周りに見かけるようになった4人はなんだと。
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