番とは呪いだと思いませんか―聖女だからと言ってツガイが五人も必要なのでしょうか―

白雲八鈴

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25章-1 冬期休暇-辺境から忍び寄る影

閑話 広報部サリー③

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本日は400話と同時投稿です。

(3ヶ月に一度の会議という名の写真販売会)


「さて、みなさん。待ちに待ったこの日がやってきました!」

 ここはとある貴族の屋敷の地下室である。地下室と言っても狭苦しい物置ではなく。舞台があり、テーブルと座席があり、くつろぎながら催し物を見物できるかのような広い広間と言っていい部屋だった。

「司会はこのミルティーが務めさせていただきます」

 その言葉に拍手が沸き起こる。客席に座っている者は様々だ。とある貴族の奥方様から軍部に所属している女性、王宮に勤めている女中など身分問わずに席に着いている。
 ただ、彼女たちは同志である。この会に参加をして密告などの裏切りは絶対に許されない。この会が外部に漏れようものなら、それこそ彼女たちの命取りになってしまうからだ。

「最初はいつもどおりに広報で使われた資料。そして、資料として使われなかったものを出させていだきます。これは希望者の皆様の手にお渡しすることができる資料となっておりますので、焦らずにご着席して札を上げてください」

 広報で使われた資料とは、広報誌で使用するために使われた写真のことである。ここは貴族の広い敷地のそれも地下室であるため、聞き耳を立てるものもいないだろうに、念には念を入れているのだろう。

「はじめは第1師団特集記事から···」

 ミルティーの言葉と同時に舞台の上のスクリーンに写真が大きく映し出された。それに高揚する声が重なって聞こえてくる。
 こう見てみると、ただの写真販売会にしか思えない。
 
 
 
 2時間のスライドショーならぬ写真販売会が何事もなく終了した。本当に平和に何事もなかった。客席からは欲しい物があれば札を上げ購入の希望を示す。それだけだ。

「はい。第1部がこれにて終了しました。会員番号をお持ちでないお客様の出口はこちらになります。会員のお客様は別室で休憩をお取りください」

 司会であるミルティーが一旦会場から人を移動する案内をする。そして、ミルティーはほっとため息をついた。

「お疲れ様。ミルティー」

「ぐんそー。ここまでは無事に終わりました!」

 サリーは人が居なくなった客席を見る。人が居なくなった客席は、すでに椅子やテーブルは片付けられ、広い空間が広がっていた。そして、中央には床に円状の陣が施されていた。

「今回の嵐はどれぐらいになるかしらね?」

「ぐんそー。本当にアレもぶっ込むつもりですか?私、知らないですよー?」

「ぐふっ!いいのよ。いいの。ここには同志しかいないのだから、裏切りは許さないもの。王后様主催のこの会を裏切ろうって人は本当に生命がいらないって意味だもの」

 なんと、この怪しい写真販売会は王后主催の会だったようだ。

「サリー軍曹。会場に人を入れても構いませんか?」

 客席を片付けていた一人から声を掛けられたサリーは頷いて、了承をする。サリーは長いウサギの耳をピンと立たせ、よしっと気合を入れてから、ミルティーと場所を代わり、司会の位置に座した。

「皆様。おまたせしました!第2部はサリーが司会を務めさせていただきます!今回もレア物が多数あり!勿論一点物も!」

「待っていましたわ!」
「今度は私が手に入れます!」
「殺る気は十分です!」

 何かおかしな言葉が混じってはいるが、会場にいる者たちは、この会を待ちに待っていたのだろう。

「さて、一枚目はこれです」

 映し出された写真を見て、会場が一転、しーんと静まり返った。

「これは恐らくもう手に入らないでしょう。そして、外に出すわけには参りませんので、一点物として出させてもらいます!」

 会場がざわざわとざわめきが起こり始める。所々から『まさか』とか『そんなはずは』などと声が聞こえ出してきている。

「奇跡の一枚!若きクロード閣下とクスト様とのTwo Shotバージョン(隠し撮り)から!」

「「「キャァァァーーーーーー!!」」」

 黒髪の青年とその青年とよく似た青黒い髪の青年が向き合っている。二人の狼獣人が武器を持ち、構えを取っている写真だ。 

 これは以前サリーの命によりミルティーが望遠レンズで撮った写真である。本来、この世に存在しないはずのクロードとその末裔であるクストが二人揃って写真におさまっているのだ。

 その写真をみて手を上げたのが4人。4人の女性が魔術で描かれた円状の陣の中に入っていく。

「それでは、ルールは簡単。手に入れられるのはただ一人の勝者のみ!それではFight!!」

 4人の女性が一斉に動き出す。バトルロイヤル方式のようだ。

「ぐんそー。本当に大丈夫ですか?流石にクロード閣下は駄目だと思うんですが?」

 会場の中央では様々声が聞こえ、女性たちの激しい戦闘行為が行われている。それをサリーは横目で見ながら言った。

「ミルティー。今回は撃沈物が2点もあるから閣下の写真なんて忘れさせられるわ」

 撃沈物。それは····

「確かにそれはそうですね。レイモンド様の甘々スマイルに、ツヴェーク様の愛を囁くような写真」

 2つともシェリーがカメラに収めたものとなる写真だ。その写真を思い出し、ミルティーは手を組み天を仰ぐ。勿論これは神に祈っているのではなく。これを撮ったシェリーに感謝の意を込めているのだ。

「ぐふっ。今回も荒れるわよ!それに今回は結界を三重にしてもらているから、多少は問題ないのよ」

 勝者が決まった会場を見ながらサリーは言う。問題にするところが違うような気もするが、ここにいる者達にとっては手に入れられるかどうかは、本当に命がけのことなのだろう。

 そうして、怪しい会議という名の写真販売会の最終戦は参加者全員の大乱闘となり、夜遅くになるまで続くのであった。


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