番とは呪いだと思いませんか―聖女だからと言ってツガイが五人も必要なのでしょうか―

白雲八鈴

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25章-4 冬期休暇-悪魔という存在

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「あれは凄い衝撃だっただろうね。上にあった建物全てが吹き飛んでいたからね」

 シェリーの言葉の補足としてカイルが言葉を足した。その横ではグレイが首を縦に振って頷いている。

「ここから推測するに、高魔力を保持するエルフ族を媒体にして、転移門を出現させ、次元の悪魔を各地に送り込むことが可能だということがわかります。マルス帝国とシーラン王国の間には4000メルメートル級の山々があるため、送り込んでくることは不可能だと思っていましたが、その考えを帝国は否定してきました。ですから、早々にエルフ族の奴隷の把握と解放が先決になるのです」

 そう、シェリーは帝国がシーラン王国に次元の悪魔を送って来ることはないだろうと考えていた。例え、奴隷の制御石で制御したとしても、4000メルメートル級の山々を超えてくることは無理だと甘く考えていたのだ。
 しかし、その思いを帝国は砕いてきた。いや、正確には『ハルナ アキオ』という人物だろう。その者は魔道具を作り出す才は無いが、その思考は転移者独特の考え方を持っているのだろう。
 普通に送り込めなければ、転移させればいい。船の足が遅いのであれば、人間魚雷を使えばいい。その思考はこの世界にはない考え方だった。

「ですから、スーウェンさんにシャーレン精霊王国に戻って、奴隷になった者の把握をしてもらいたいのです」

 その言葉にスーウェンは慌てて席を立ち、床に膝を付いてシェリーの手を取った。

「それはご主人様の側を離れろということでしょうか?」

「そうですね」

 シェリーの言葉にこの世の終わりかと言わんばかりの表情になるスーウェン。確かに番であるシェリーの頼み事は聞いてあげたい。だが、この状況で再びシェリーの側を離れるということは了承し難いことだった。

「それを調べるように父に伝言するというのでは、駄目でしょうか?」

 己の父親であるエルフ族の族長であるレイグレシアに頼むのはどうだという案だ。しかし、シェリーは首を横に振る。

「基本的にレイグレシア猊下を信用していませんので」

 その言葉に下唇を噛みしめるスーウェン。確かに己の父親はシェリーの前でかなりの醜態を晒していた。一番はやはり、オリバーを怒らせたことだろう。それも心が一番折れる方法でオリバーは己の父親を屈伏させたのだ。

 父親を信用していないと言われたのであれば、それはスーウェン自ら動かなければならないだろう。だが、しかし、それでも···今の状況でシェリーの側を離れるのは嫌だった。
 それは、己が知らぬ間に今度は誰がシェリーと番になってしまうのだろうという恐怖があった。

 納得できないという感じのスーウェンを見てシェリーはため息を吐く。本当にツガイとは面倒な存在だと。
 だが、この事は早めに把握して人物の特定ができれば、王都の中に侵入させることを防げるとシェリーは考えていた。勿論これはシェリーの一番大切なルークの身の安全を考えてのことだ。
 今は、この王都にシェリーがいるため直ぐに駆けつける事ができる。しかし、ここ最近何度も女神ナディアから催促があるようにドルロール遺跡のダンジョンに向かわなければならない。そうなるといったい何日王都を離れることになるだろうか。
 その間に帝国が仕掛けてくればシェリーはルークを守ることが出来ないのだ。

 この考えはシェリーが全く軍を信用していないから出てくる考えだ。確かに討伐戦を生き抜いた英雄がこの国に存在することは確かであり、国王イーリスクロムを始め、統括師団長しかり、第6師団長のクストしかり、王都の護りとしては十分な戦力はあるだろう。

 しかし、シェリーはエルフの奴隷の情報を得て、これを第5師団長のヒューレクレトに渡しておけば、人の出入りをチェックする王都の外門で弾く事ができるだろうと考えているのだ。

 だから、だから····シェリーはとても面倒だと思いつつ、ルークの為にならとぐっと我慢し、側を離れるのは嫌だと言っているスーウェンに微笑みを向ける。

「スーウェンさん。これはスーウェンさんにしか、お願い出来ないことなのです。奴隷になったエルフ族の調査をしてくださいませんか?」

 と、突如としてその場の雰囲気が固まった。ただ一人シェリーから言われたスーウェンは頬を染め、握っていたシェリーの手を引き寄せ、口づけをする。

「直ぐに行って参ります。数日で終わらせて来ますから」

 そう言ってスーウェンは己の身長程の杖を取り出し、転移をしてこの場から消え去った。あまりにも行動が早かった。ただ、残されたのはとても雰囲気の悪いこの空間。いや、スーウェンは周りの雰囲気の悪さに逃げるように去ったのだろうか。

 そして、シェリーはいつも通りの無表情であり、死んだ魚の目に戻っていた。だから、ツガイとは面倒だと。


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