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26章 建国祭
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今までシェリーの事を“ナオフミの娘”などと変わった呼び方されたことは一度も無い。ただ、そう呼ぶ人物には心当たりがあった。
その声を掛けた人物にシェリーは視線を向ける。赤い髪が印象的で背が高く身体は引き締まって圧迫感があるように大柄だが、体格から女性だということがわかる。
「軍曹さん」
シェリーはこの女性から名乗られた事がないので、その昔知り得た階級で呼んだ。そう、この女性はシェリーと出会った時は妊婦であり、動けない状況だったのを第一層門までシェリーが助けを呼んだことがあった。
「何も無いです」
シェリーは今軍部に足止めされて、時間を消費されることを避けるために何もないと答えた。現に今は何も起こってはいない。起こるのは未来という曖昧な予想だ。ただ、これは女神ナディアからの神託であるため、かなり信憑性が高いだろう。
「何も無いのか?そこの門兵から君が急いでどこかに出かけたと連絡を受けたのだが?」
そう言いながら大柄の女性は手のひらサイズの白い石板をシェリーに見せつけた。これは恐らくシェリーがクストに言ってユーフィアに作らせた携帯電話のようなものだろう。
「出かけようと思いましたが、人が多くてここまで戻ってきました。用件がそれだけであれば、私は失礼させてもらいます」
人が多くて戻ってきた。確かにシェリーは嘘は言ってはいない。しかし、大柄な女性はこの場を離れようとするシェリーを引き止める。
「確かに毎年ながら、第三層は人がごった返しているな。行きたい場所があるのであれば、軍専用の馬車を用意しようか?それであれば、この人混みの中でも人は避けてくれるであろう」
大柄な女性はシェリーがどこかに行きたいのではないのかと確信を持った言い方をした。
その事をシェリーは不可解に思い尋ねる。
「なぜ、その様な事を?」
「うむ。一つはクストにナオフミの娘に注意しておけと言われたからだ。何かあれば必ず動くだろうからとな」
この王都メイルーンの警邏を務めるクストとしては、シェリーの動きに注視しておきたいのだろう。何かと問題は起こしており、過剰な言葉をよく言っているシェリーだが、間違ったことは言ってはいないことをクストは理解しているのだろう。そして、第5師団長のヒューレクレトの信じられない言葉を信じ、警鐘を鳴らしたのもシェリーだ。
何かあればシェリーが動くと踏んで、西区第二層門の門兵にユーフィア作通信機を持たせて、大柄な女性に連絡を取るように言っていたのだろう。己はイザという時に動けるように身を空けとかなければならないからだ。
「あともう一つは、息子の命の恩人だからだな。あれから兄のゴタゴタがあり結局お礼を言えていなかった。とても感謝している。ナオフミの娘。それで、軍用の馬車の用意は必要か?」
この話からすれば、軍用の馬車を出そうというのは彼女の好意だと思われる。そして、彼女は軍用の馬車を個人の采配で用意出来る立場だということが伺えた。
シェリーは彼女の好意を素直に受け取り、軍用の馬車で第二層内を移動していた。
「私の事はシェリーと呼んでください」
馬車に乗った第一声がこれだった。先程から女性に“ナオフミの娘”と言われ続けられて内心腹立たしかったようだ。ムカつく勇者の名前を出され、その娘と再認識させられる呼び方がだ。
「わかった。シェリー」
馬車の中はとても広かった。一個小隊が入るほどの大きさだった。形としては、マイクロバスだった。それも馬車と言いながら自走式で、運転手がこの馬車を動かしている。
そして、席は自由に変えれるのか、だだっ広い車内は壁に固定されたソファが置かれ、テーブルも配置された豪華な内装になっていた。
一番うしろの中央にシェリーが座り、その横にカイル、オルクスが並び、反対側にはリオンがシェリーの隣に座り、その隣にグレイ、スーウェンと並んでいた。そして少し離れた席に赤髪の女性が腰を降ろしている。
「それから、これはユーフィアさん作ですよね。いつから使われるようになったのです?」
今までこの様な物が通行しているのを見たこともないし、ユーフィアから作ったとも聞いてはいなかった。
「今日からだ。今回の祭りの目玉はこの街を周回する馬車だ」
今日からだった。それも今回の建国祭でお披露目するものだった。それを聞いたシェリーは頭が痛いというように、こめかみを押さえだす。
「これ。私達が乗っていいものではないですよね」
「いや、構わない。ナヴァル公爵夫人が作ったのは5台ある。ナオフ……シェリーに乗ってもらえるのであれば、感想を聞いて欲しいとも言われた」
どうやら、これはシェリーに乗り心地の感想を聞くために用意されたものらしい。だから異様に豪華なのだろう。なんせシェリーの周りにいる人物たちは各国の要人と言っていい者たちだからだ。
「ああ、名乗り遅れた。私はリベラ・フラゴルだ。今は大佐の地位にある。これでもこの国の英雄の一人に数えられている」
リベラ大佐。これは第3師団長であるツヴェークから出てきた名前であった。
「だから、何かあるのであれば、力になれる。何があったのか教えてはくれないだろうか」
その声を掛けた人物にシェリーは視線を向ける。赤い髪が印象的で背が高く身体は引き締まって圧迫感があるように大柄だが、体格から女性だということがわかる。
「軍曹さん」
シェリーはこの女性から名乗られた事がないので、その昔知り得た階級で呼んだ。そう、この女性はシェリーと出会った時は妊婦であり、動けない状況だったのを第一層門までシェリーが助けを呼んだことがあった。
「何も無いです」
シェリーは今軍部に足止めされて、時間を消費されることを避けるために何もないと答えた。現に今は何も起こってはいない。起こるのは未来という曖昧な予想だ。ただ、これは女神ナディアからの神託であるため、かなり信憑性が高いだろう。
「何も無いのか?そこの門兵から君が急いでどこかに出かけたと連絡を受けたのだが?」
そう言いながら大柄の女性は手のひらサイズの白い石板をシェリーに見せつけた。これは恐らくシェリーがクストに言ってユーフィアに作らせた携帯電話のようなものだろう。
「出かけようと思いましたが、人が多くてここまで戻ってきました。用件がそれだけであれば、私は失礼させてもらいます」
人が多くて戻ってきた。確かにシェリーは嘘は言ってはいない。しかし、大柄な女性はこの場を離れようとするシェリーを引き止める。
「確かに毎年ながら、第三層は人がごった返しているな。行きたい場所があるのであれば、軍専用の馬車を用意しようか?それであれば、この人混みの中でも人は避けてくれるであろう」
大柄な女性はシェリーがどこかに行きたいのではないのかと確信を持った言い方をした。
その事をシェリーは不可解に思い尋ねる。
「なぜ、その様な事を?」
「うむ。一つはクストにナオフミの娘に注意しておけと言われたからだ。何かあれば必ず動くだろうからとな」
この王都メイルーンの警邏を務めるクストとしては、シェリーの動きに注視しておきたいのだろう。何かと問題は起こしており、過剰な言葉をよく言っているシェリーだが、間違ったことは言ってはいないことをクストは理解しているのだろう。そして、第5師団長のヒューレクレトの信じられない言葉を信じ、警鐘を鳴らしたのもシェリーだ。
何かあればシェリーが動くと踏んで、西区第二層門の門兵にユーフィア作通信機を持たせて、大柄な女性に連絡を取るように言っていたのだろう。己はイザという時に動けるように身を空けとかなければならないからだ。
「あともう一つは、息子の命の恩人だからだな。あれから兄のゴタゴタがあり結局お礼を言えていなかった。とても感謝している。ナオフミの娘。それで、軍用の馬車の用意は必要か?」
この話からすれば、軍用の馬車を出そうというのは彼女の好意だと思われる。そして、彼女は軍用の馬車を個人の采配で用意出来る立場だということが伺えた。
シェリーは彼女の好意を素直に受け取り、軍用の馬車で第二層内を移動していた。
「私の事はシェリーと呼んでください」
馬車に乗った第一声がこれだった。先程から女性に“ナオフミの娘”と言われ続けられて内心腹立たしかったようだ。ムカつく勇者の名前を出され、その娘と再認識させられる呼び方がだ。
「わかった。シェリー」
馬車の中はとても広かった。一個小隊が入るほどの大きさだった。形としては、マイクロバスだった。それも馬車と言いながら自走式で、運転手がこの馬車を動かしている。
そして、席は自由に変えれるのか、だだっ広い車内は壁に固定されたソファが置かれ、テーブルも配置された豪華な内装になっていた。
一番うしろの中央にシェリーが座り、その横にカイル、オルクスが並び、反対側にはリオンがシェリーの隣に座り、その隣にグレイ、スーウェンと並んでいた。そして少し離れた席に赤髪の女性が腰を降ろしている。
「それから、これはユーフィアさん作ですよね。いつから使われるようになったのです?」
今までこの様な物が通行しているのを見たこともないし、ユーフィアから作ったとも聞いてはいなかった。
「今日からだ。今回の祭りの目玉はこの街を周回する馬車だ」
今日からだった。それも今回の建国祭でお披露目するものだった。それを聞いたシェリーは頭が痛いというように、こめかみを押さえだす。
「これ。私達が乗っていいものではないですよね」
「いや、構わない。ナヴァル公爵夫人が作ったのは5台ある。ナオフ……シェリーに乗ってもらえるのであれば、感想を聞いて欲しいとも言われた」
どうやら、これはシェリーに乗り心地の感想を聞くために用意されたものらしい。だから異様に豪華なのだろう。なんせシェリーの周りにいる人物たちは各国の要人と言っていい者たちだからだ。
「ああ、名乗り遅れた。私はリベラ・フラゴルだ。今は大佐の地位にある。これでもこの国の英雄の一人に数えられている」
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