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27章 魔人と神人
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「しかし、それではラフテリア様はどうなのでしょうか?既に4000年は生きていらっしゃいます」
人々の悪の心を取り込んだラフテリアはその身を変化させ、人が生きる以上の時を生きているのだ。まるで竜人族のような時の長さを。
「ん?魔人と言われる者達も死は与えられるよ。そこはモルテも差別はしない」
この言い方だと、魔人は魔人という種族として認められ、生きる時もその種族に与えられた生を生きるように定められていると言っているようだ。
「それは悪魔も変わらないということですよね」
「変わっていたら、勇者は戦うこともできなかっただろうね」
それはそうだ。最初の次元の悪魔の襲撃でグローリア国は壊滅的な被害を受けて、勇者召喚まで漕ぎ着けなかっただろう。
「ならば、そもそもアーク族は無駄なことをしているということですよね」
シェリーはアーク族の今まで行ってきたことをズバッと断ち切った。するとその言葉に白き神はクスクスと笑い出す。
「そうだね。無駄だね。だけど、世界に与える影響は甚大だからね。君には頑張って欲しいな。私の聖女」
シェリーは白き神の言葉に一気に肌が粟立ち、両腕を擦りだす。そして、カイルはシェリーを抱える力を強めた。
「好きで聖女をやっているわけではありません」
シェリーは白き神の言葉すら断ち切る。そのシェリーの言葉がツボにはまったのか、白き神は声を上げて笑い出した。
全てのモノに頂点の君臨する白き神の言葉を否定されたにも関わらず、声を笑い出した姿に、地面に伏していたラフテリアは顔を上げて、白き神の姿をその黒き眼に映した。
その姿が己の身と重なった。同じ魔人たちですら力の差に圧倒され忌避される己。人からは黒をまとい、一国を死の国に変えた己は存在そのものを抹消された。普通に話ができるのは、一度己が手をかけのちに大魔女と呼ばれるようになったエリザベートと番であるロビンのみ。己にはロビンが常に側に居てくれたために、毎日が楽しかった。
しかし、白き神はどうだろうか。その身は地上に降臨すれば、弱き者など息することもままならず、死を賜ることになる。同じ神ですら白き神の前では一歩引いた感じだ。
そんな白き神は六番目の聖女として役目を与えた者を存外に気に入っているようだと、以前の時にラフテリアは感じていた。そのことに嫉妬したことは己の心の内に秘めていた。それは六番目の聖女の存在がなければ、己の大切なロビンが人の姿になることは無かったと理解しているからだ。
しかし、ラフテリアはその理由をわかってしまった。誰からも一歩引かれたようにされれば、普通に話をしてくれる存在は、心を満たしてくれる存在なのだと。
ラフテリアは己の黒き眼に映った光景に笑みを浮かべる。敬愛する白き神が楽しそうに笑っていることが嬉しいと。そんなラフテリアを見てロビンも嬉しそうに笑っている。護るべきラフテリアの笑顔が全てだと言わんばかりに。
「やっぱり、君はいいね」
白き神は己が定めた役目を受け入れつつ、否定してくるシェリーに笑みを向ける。その事にシェリーは舌打ちをする。褒められることは何もしていないと。
そして、ここで珍しく白き神は再びカイルに声を掛けた。いつもなら、話す価値などないと言わんばかりに声を掛けずに去っていく白き神がだ。
「別に取って食おうと言うわけじゃないから、そこまで睨まなくていいよ」
カイルの殺気だけで射殺すような、鋭い威圧を受けても、白き神はどこ吹く風という感じで、受け流す。白き神と言葉を交わせるだけの存在に臆するほどではないと言わんばかりだ。
「君たちの役目はわかっているよね?」
シェリーの番である彼らの役目。これはただの番という意味ではないことは明白。
「聖女を護る盾であり、剣であること」
「わかっているならいいよ。前回のように充てがった番を無視して、愚かしい茶番を始めることが無いようにね。まぁ君たちは大丈夫だろうけど」
これは勇者ナオフミの番狂いのことを言っているのだろうか。それだと、番を無視するという言葉が合わない。
「ミゲルロディア大公閣下に言わせたことですか?」
シェリーは白き神が何を言いたいのか分かったのだろう。それもミゲルロディアに言わせたと確信をもって言った。
「ふふふっ。君がそう思うなら、そうだろうね」
しかし、白き神は笑い、シェリーの言葉には答えなかった。だが、それは肯定していると同意義だった。
「あの時突然ミゲルロディア大公閣下から賢者ユーリウスの名が出てきたことが、おかしいと思ったら、そういうことでしたか。誰も神の威に背くことはできない。気に食わないですね」
この話はミゲルロディアが、勇者ナオフミに賢者ユーリウスを仲間にすればいいのではないのかと、助言したことだ。しかし、勇者ナオフミはこれを否定する。必要ないことだと。この事に白き神が一枚噛んでいたようだ。
シェリーは所詮この世界の楔に繋がれたものは、世界の威から逃れられることはできないと皮肉を込めて言ったのだ。
それは魔導師オリバーを見れば一目瞭然。聖女に隷属された魔導師は世界から解放され、魔導師の役目を終えたのだった。
「さて、僕は戻ることにするよ。ナディアの愛し子の術が施された空間だけど、そろそろ限界だろうからね」
いつもと比べ、長く人が住む世界に降臨しているかと思えば、大魔女エリザベートのテリトリーだったために、可能だったようだ。
「さっさと帰ってください」
シェリーは褒美と言いながらも、大した情報をくれなかった白き神を追い出すように手を振る。
「そうそう、帝国だけど、新たな実験ステージに入ったようだよ」
その言葉を最後に白き神の姿は消え、魔女の素朴な家の室内に戻っていた。その爆弾発言にシェリーはフルフルとしながら、右手を握り込む。
「何故、それを最初に言わないのですか!」
シェリーの叫び声に返事を返す声は聞こえてくることは無かったのだった。
人々の悪の心を取り込んだラフテリアはその身を変化させ、人が生きる以上の時を生きているのだ。まるで竜人族のような時の長さを。
「ん?魔人と言われる者達も死は与えられるよ。そこはモルテも差別はしない」
この言い方だと、魔人は魔人という種族として認められ、生きる時もその種族に与えられた生を生きるように定められていると言っているようだ。
「それは悪魔も変わらないということですよね」
「変わっていたら、勇者は戦うこともできなかっただろうね」
それはそうだ。最初の次元の悪魔の襲撃でグローリア国は壊滅的な被害を受けて、勇者召喚まで漕ぎ着けなかっただろう。
「ならば、そもそもアーク族は無駄なことをしているということですよね」
シェリーはアーク族の今まで行ってきたことをズバッと断ち切った。するとその言葉に白き神はクスクスと笑い出す。
「そうだね。無駄だね。だけど、世界に与える影響は甚大だからね。君には頑張って欲しいな。私の聖女」
シェリーは白き神の言葉に一気に肌が粟立ち、両腕を擦りだす。そして、カイルはシェリーを抱える力を強めた。
「好きで聖女をやっているわけではありません」
シェリーは白き神の言葉すら断ち切る。そのシェリーの言葉がツボにはまったのか、白き神は声を上げて笑い出した。
全てのモノに頂点の君臨する白き神の言葉を否定されたにも関わらず、声を笑い出した姿に、地面に伏していたラフテリアは顔を上げて、白き神の姿をその黒き眼に映した。
その姿が己の身と重なった。同じ魔人たちですら力の差に圧倒され忌避される己。人からは黒をまとい、一国を死の国に変えた己は存在そのものを抹消された。普通に話ができるのは、一度己が手をかけのちに大魔女と呼ばれるようになったエリザベートと番であるロビンのみ。己にはロビンが常に側に居てくれたために、毎日が楽しかった。
しかし、白き神はどうだろうか。その身は地上に降臨すれば、弱き者など息することもままならず、死を賜ることになる。同じ神ですら白き神の前では一歩引いた感じだ。
そんな白き神は六番目の聖女として役目を与えた者を存外に気に入っているようだと、以前の時にラフテリアは感じていた。そのことに嫉妬したことは己の心の内に秘めていた。それは六番目の聖女の存在がなければ、己の大切なロビンが人の姿になることは無かったと理解しているからだ。
しかし、ラフテリアはその理由をわかってしまった。誰からも一歩引かれたようにされれば、普通に話をしてくれる存在は、心を満たしてくれる存在なのだと。
ラフテリアは己の黒き眼に映った光景に笑みを浮かべる。敬愛する白き神が楽しそうに笑っていることが嬉しいと。そんなラフテリアを見てロビンも嬉しそうに笑っている。護るべきラフテリアの笑顔が全てだと言わんばかりに。
「やっぱり、君はいいね」
白き神は己が定めた役目を受け入れつつ、否定してくるシェリーに笑みを向ける。その事にシェリーは舌打ちをする。褒められることは何もしていないと。
そして、ここで珍しく白き神は再びカイルに声を掛けた。いつもなら、話す価値などないと言わんばかりに声を掛けずに去っていく白き神がだ。
「別に取って食おうと言うわけじゃないから、そこまで睨まなくていいよ」
カイルの殺気だけで射殺すような、鋭い威圧を受けても、白き神はどこ吹く風という感じで、受け流す。白き神と言葉を交わせるだけの存在に臆するほどではないと言わんばかりだ。
「君たちの役目はわかっているよね?」
シェリーの番である彼らの役目。これはただの番という意味ではないことは明白。
「聖女を護る盾であり、剣であること」
「わかっているならいいよ。前回のように充てがった番を無視して、愚かしい茶番を始めることが無いようにね。まぁ君たちは大丈夫だろうけど」
これは勇者ナオフミの番狂いのことを言っているのだろうか。それだと、番を無視するという言葉が合わない。
「ミゲルロディア大公閣下に言わせたことですか?」
シェリーは白き神が何を言いたいのか分かったのだろう。それもミゲルロディアに言わせたと確信をもって言った。
「ふふふっ。君がそう思うなら、そうだろうね」
しかし、白き神は笑い、シェリーの言葉には答えなかった。だが、それは肯定していると同意義だった。
「あの時突然ミゲルロディア大公閣下から賢者ユーリウスの名が出てきたことが、おかしいと思ったら、そういうことでしたか。誰も神の威に背くことはできない。気に食わないですね」
この話はミゲルロディアが、勇者ナオフミに賢者ユーリウスを仲間にすればいいのではないのかと、助言したことだ。しかし、勇者ナオフミはこれを否定する。必要ないことだと。この事に白き神が一枚噛んでいたようだ。
シェリーは所詮この世界の楔に繋がれたものは、世界の威から逃れられることはできないと皮肉を込めて言ったのだ。
それは魔導師オリバーを見れば一目瞭然。聖女に隷属された魔導師は世界から解放され、魔導師の役目を終えたのだった。
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いつもと比べ、長く人が住む世界に降臨しているかと思えば、大魔女エリザベートのテリトリーだったために、可能だったようだ。
「さっさと帰ってください」
シェリーは褒美と言いながらも、大した情報をくれなかった白き神を追い出すように手を振る。
「そうそう、帝国だけど、新たな実験ステージに入ったようだよ」
その言葉を最後に白き神の姿は消え、魔女の素朴な家の室内に戻っていた。その爆弾発言にシェリーはフルフルとしながら、右手を握り込む。
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