番とは呪いだと思いませんか―聖女だからと言ってツガイが五人も必要なのでしょうか―

白雲八鈴

文字の大きさ
710 / 894
27章 魔人と神人

697

しおりを挟む

 暗闇の空間の奥はほのかに青白く光っている。その奥から話し声が聞こえ、禍々しい気配と共に暗闇に向って近づいて来ていた。

「穢らわしい大地が光っているなど、まさに王の御業ですね」

 狭い空間を声が反響しているようにエコーがかかりながら、聞こえてきた。

「大地が煌々しく光るなど、我らが王に違いない」

 どうやら、シェリーが行った浄化の光が、この場を覆っている丘全体を光らせていたらしい。しかし、シェリーの浄化は強い力を持っているとはいえ、上空にある空島から見えるほど光るだろうか。

 いや、建物が逆さまになっているということは、元々空島の大地であった土が、丘の上の層にある可能性が高い。
 ということは、シュロスが空島の大地に何か仕掛けをしていてもおかしくはないだろう。

「しかし、おいたわしい。王は長きに渡って、このような穢らわしい地に囚われ続けなければならなかったなど」

 言葉を聞く限り、王という存在に固執しているものの、普通に会話が成り立ちそうだ。

 魔王討伐線を戦った者たちから聞く、完全体の悪魔という存在ではないように思える。ということは、アーク族がこの地に降りてきたのだろうか。

 暗闇とほのかに光る場所との境界に人影が現れた。
 いや、人影というと語弊がある。その人物を型取るように青いスジのような物が光って浮かんでみえる。その異様さだけでも、人外がいることが窺える。その異様な存在が、先程の会話から二人以上は居ると予想できた。

「暗い。『暗闇を祓う光よ。我らに導きの灯火を与え給え』」

 その言葉と共に丸く円状に光が描かれ、そこから球状の光の玉が複数現れた。
 そして、部屋全体に散らばっていき、空間全体を仄かに光で満たした。
 先ほどカイルが出した光の魔法より明るさがなく、どこか薄暗い印象だ。

「これは……まさに玉座の間です」
「伝承のとおり全てが青い」

 薄暗い光でも、この空間が青いガラスのような壁に、覆われていることはわかる。しかし、この言葉から、今現在の空島では、シュロスが創った青いガラスのような建物は存在していないと伺えた。

 仄かに光る空間に青い血管のような紋様を皮膚にまとった存在が入ってくる。先程青い光が人の形に光って見えていたのは、皮膚が闇のように漆黒だったため、余計に浮き出たように見えたらしい。

 造形的には人型と分類されるだろうが、頭からは黒い角が生えており、一瞬オーガの変異種のように見えなくもない。だが、その背には一対のコウモリのような薄い膜の翼を折りたたむように背負っている。

 完全体の悪魔と呼ばれる存在だ。

「しかし、王は何処に行かれたのでしょうか?」
「迎えが遅いと出ていかれてしまったのか?」

 二体の完全体の悪魔は周りを見渡しながら、薄暗い空間を進んでいる。しかし、シェリーは五体いると言っていた。ということは、見張りとして他の三体は外にいるのだろう。

「視界が悪いですね。闇を打ち払う術でもこの暗さとは、王の力の強大さを窺えますね」
「おい、あそこを見ろ」

 一体の完全体の悪魔がある一点を差す。そこは先程カイルとモルテ王が暇つぶしに、遺跡で眠る遺骨のように綺麗に骨を並べていたところだ。

 慌てて二体の完全体の悪魔は駆け寄っていく。

「陛下。大変長らくお待たせてしまい、申し訳ございません。陛下をこの穢らわしい大地からお救いすべく、参上仕りました」

 二体の完全体の悪魔が青い床に跪き、こうべを垂れ、迎えに来たことを述べた。
 だが、それに応える言葉は返ってこない。

「陛下?」
「もしかして、あまりにも迎えが遅いことに、お怒りなのですね。そのお怒りは存分に向けてください。王を地に縛り付けた白き神に」

 怒りの矛先が違うように感じる。アーク族に地に落ちれば、ただの鳥人だという呪を与えたのは、白き神だ。それはアーク族に対してであって、シュロス自身に掛けられた呪ではない。

 だが、その言葉にも完全体の悪魔が、陛下と呼ぶモノは応えない。

 そう、彼らが頭を垂れているのは、ただ骨に過ぎない。ここは『返事がない。ただの屍だ』という字幕が、流れるところだ。

 ただの骨から返答がないことに、焦りだす完全体の悪魔たち。まさか、王に無視されるとは予想外だったのだろう。

 その姿を、肩を揺らして見ている者がいる。いや、声を押し殺してお腹を抱えていた。
 この空間を、更に濃い闇で満たしたモルテ王だ。モルテ王の側には死んだ魚の目をして、何もない空間を見ているシェリーに、口元に手を持ってきて、笑いをこらえているものの、シェリーをしっかりと抱えているカイルがいた。

 何を必死に、ただの骨に声を掛けているのだと。


しおりを挟む
感想 49

あなたにおすすめの小説

二百年の眠り姫は、五人の薔薇騎士と龍に溺愛される

七海美桜
恋愛
旧タイトル:五人のイケメン薔薇騎士団団長に溺愛されて200年の眠りから覚めた聖女王女は困惑するばかりです! フーゲンベルク大陸で、長く大陸の大半を治めていたバッハシュタイン王国で、最後の古龍への生贄となった第三王女のヴェンデルガルト。しかしそれ以降古龍が亡くなり王国は滅びバルシュミーデ皇国の治世になり二百年後。封印されていたヴェンデルガルトが目覚めると、魔法は滅びた世で「治癒魔法」を使えるのは彼女だけ。亡き王国の王女という事で城に客人として滞在する事になるのだが、治癒魔法を使える上「金髪」である事から「黄金の魔女」と恐れられてしまう。しかしそんな中。五人の美青年騎士団長たちに溺愛されて、愛され過ぎて困惑する毎日。彼女を生涯の伴侶として愛する古龍・コンスタンティンは生まれ変わり彼女と出逢う事が出来るのか。龍と薔薇に愛されたヴェンデルガルトは、誰と結ばれるのか。 この作品は、小説家になろうにも掲載しています。

【完結】母になります。

たろ
恋愛
母親になった記憶はないのにわたしいつの間にか結婚して子供がいました。 この子、わたしの子供なの? 旦那様によく似ているし、もしかしたら、旦那様の隠し子なんじゃないのかしら? ふふっ、でも、可愛いわよね? わたしとお友達にならない? 事故で21歳から5年間の記憶を失くしたわたしは結婚したことも覚えていない。 ぶっきらぼうでムスッとした旦那様に愛情なんて湧かないわ! だけど何故かこの3歳の男の子はとても可愛いの。

ストーカー婚約者でしたが、転生者だったので経歴を身綺麗にしておく

犬野きらり
恋愛
リディア・ガルドニ(14)、本日誕生日で転生者として気付きました。私がつい先程までやっていた行動…それは、自分の婚約者に対して重い愛ではなく、ストーカー行為。 「絶対駄目ーー」 と前世の私が気づかせてくれ、そもそも何故こんな男にこだわっていたのかと目が覚めました。 何の物語かも乙女ゲームの中の人になったのかもわかりませんが、私の黒歴史は証拠隠滅、慰謝料ガッポリ、新たな出会い新たな人生に進みます。 募集 婿入り希望者 対象外は、嫡男、後継者、王族 目指せハッピーエンド(?)!! 全23話で完結です。 この作品を気に留めて下さりありがとうございます。感謝を込めて、その後(直後)2話追加しました。25話になりました。

脅迫して意中の相手と一夜を共にしたところ、逆にとっ捕まった挙げ句に逃げられなくなりました。

石河 翠
恋愛
失恋した女騎士のミリセントは、不眠症に陥っていた。 ある日彼女は、お気に入りの毛布によく似た大型犬を見かけ、偶然隠れ家的酒場を発見する。お目当てのわんこには出会えないものの、話の合う店長との時間は、彼女の心を少しずつ癒していく。 そんなある日、ミリセントは酒場からの帰り道、元カレから復縁を求められる。きっぱりと断るものの、引き下がらない元カレ。大好きな店長さんを巻き込むわけにはいかないと、ミリセントは覚悟を決める。実は店長さんにはとある秘密があって……。 真っ直ぐでちょっと思い込みの激しいヒロインと、わんこ系と見せかけて実は用意周到で腹黒なヒーローの恋物語。 ハッピーエンドです。 この作品は、他サイトにも投稿しております。 表紙絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品(写真のID:4274932)をお借りしております。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

召喚とか聖女とか、どうでもいいけど人の都合考えたことある?

浅海 景
恋愛
水谷 瑛莉桂(みずたに えりか)の目標は堅実な人生を送ること。その一歩となる社会人生活を踏み出した途端に異世界に召喚されてしまう。召喚成功に湧く周囲をよそに瑛莉桂は思った。 「聖女とか絶対ブラックだろう!断固拒否させてもらうから!」 ナルシストな王太子や欲深い神官長、腹黒騎士などを相手に主人公が幸せを勝ち取るため奮闘する物語です。

異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?

すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。 一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。 「俺とデートしない?」 「僕と一緒にいようよ。」 「俺だけがお前を守れる。」 (なんでそんなことを私にばっかり言うの!?) そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。 「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」 「・・・・へ!?」 『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!? ※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。 ※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。 ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。

疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!

ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。 退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた! 私を陥れようとする兄から逃れ、 不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。 逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋? 異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。 この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?

処理中です...