番とは呪いだと思いませんか―聖女だからと言ってツガイが五人も必要なのでしょうか―

白雲八鈴

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27章 魔人と神人

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「一応、大魔導師様から許可が出たから陽子さんも許可を出すけど、あまり勝手なことをするとお仕置きするから」

 陽子はそう言って石の床と壁に覆われた通路を歩いている。その後ろには鎧を身に着けた白髪の青年がついてきており、更に後ろにはシェリーとカイル、炎王の姿もあった。

「なんかよくわからないんだけどさぁ。佐々木さんのとーちゃんが、ここでは一番偉いわけ?死人なのに?」

 白髪の青年は手に持っていた青い棒のアイスを食べながら聞いてきた。
 そう、どこにでもいそうな白髪の青年は、顔の作りを修正したシュロスだ。

「モルテ王は王ですよ」

 そこに背後からシェリーが突っ込む。確かに二人の死人から創られた存在がモルテ王だ。
 それでも王として四千年間君臨し続けている。

「いや、あれは死の王だからそういう者だろう?」

 シュロスのゲーム脳は死の王は死の王という存在で固定されてしまっているらしい。何も問題はないと。

「あ!わかった!君にわかりやすい言い方を陽子さんが言ってあげよう!」

 陽子は立ち止まってシュロスを振り返って見た。

「二十年前に魔王を倒した勇者様御一行のお一人ってこと」
「すげー!」

 陽子の説明でシュロスは瞬時に理解したようだ。重要なのは説明の仕方だったらしい。

「さて、この辺りならいいかな?」

 陽子はそう言って、石が積み上げて側面を強化している壁に向って手をかざした。

「ここの上は隣の家の敷地とまたがっているから、暴れたら陽子さんは君にお仕置きをするからね」

 そう言いながら、陽子が壁を触ると石の壁が木の壁に変わった。いや、普通の部屋の扉のように見える。

 そして陽子はその扉を開けた。

 その中は明かりがないにも関わらず、室内が薄ぼんやりと明るい。漆黒の闇ではなく、まるで地下のダンジョンのように、最低限の視野を確保されている明るさに満たされていた。
 だが、広い空間はあるものの、中身は何もない。

「ここを部屋として使っていい。必要な者があれば、今ならエンエンがいるから物々交換で出してもらえるよ」
「いや、俺には物々交換できるようなものなんて持ってない。強いているなら食べ終わったアイスの棒」
「それゴミだね」

 シュロスはそうだよなっと言いながら、空間にポイッと食べ終わったアイスの棒を捨てるように放り投げた。
 だが、その投げ捨てたはずの物が空間に溶けるように消えてしまった。

「は?」

 それを目にしていたのは必然的にシュロスと向かい合っていた陽子のみで、信じられないものを見る目をシュロスに向けている。

「ちょっと!何で陽子さんのダンジョンに干渉できるの!」

 陽子はシュロスに詰め寄って聞く。ありえないと。

「え?干渉?」

 だが、シュロス自身は陽子が何を怒っているのかわからないようだった。

「君!さっき陽子さんのダンジョンの中にアイスの棒を溶かしたよね!」
「普通だろう?ゴミなんていつまで持っていても仕方がないし」
「普通じゃない!」

 陽子はシュロスに詰め寄って怒っていたが、何か怖ろしいものでも見たのだろうか、シュロスの目の前から消え、シェリーの背後にその姿を現した。

「ささっち! あいつ危険!凄く危険!」

 陽子の怯えようにシェリーは大きくため息を吐く。何を今更言っているのかと。

「はぁ、世界の理にすら干渉してしまうのですから、陽子さんのダンジョンにも普通に干渉してくるでしょう」
「でもさぁ。あいつ、エンエンより危険。エンエンは陽子さんがいれば干渉を阻害できるけど、これだけ干渉が置きないように制御していても、スッって入って来たんだよ。陽子さん。ガクブルだよ」

 普通は自分が創り上げたものに干渉されることは厭うものだ。白き神のように寛容に受け止められるものではないだろう。

 特に陽子は炎王の件があるため、ダンジョンに勝手に干渉されることには、酷く敏感なところがあるのは仕方が無い。

「シュロス王。取り敢えず、空島があるところに行きましょうか」

 シェリーはここにいつまでもいても仕方が無いと、目的地の方に足を進めることを提案した。

 この存在が危険なのは重々に承知している。それ故、アーク族よりも早くにシュロス王を確保し、監視の目をオリバーと陽子にやってもらおうとシェリーは目論んでいたのだ。

 だからここで陽子の機嫌を損ねるのは得策ではないと、問題を先送りしただけだったのだ。
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