神守の少女、二度目の人生は好きに生きます〜因縁相手は勝手に自滅〜

雪水砂糖

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44 神官様の言葉

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 久しぶりの神殿だ。今日は佳乃も一緒に行動する。
 いつものように掃除を終えたころ、神官様が声をかけてくださった。

「神官様、先日はありがとうございました」

「いえ、こちらこそ感謝しております。そこで、その功績を評価に加え、階級を引き上げることになりましたよ」

「えっ?私は銅級で、この先は禍憑を倒さないと上がらないはずでは?」

「この前の岩毛熊の討伐を、審査に加えさせていただきました」

「……私は結界で守っていただけです」

「瑞葉殿。討伐隊は攻撃役だけで構成されるものではありませんよ」

「えっ!?」

「大規模な討伐隊になれば、攻撃役、盾役、後衛、結界師、治癒師、荷物持ち――ざっと挙げてもこれだけいます。そして、あなたの結界と治癒の実力は素晴らしい。正直、実力が知られれば、こぞって誘いが来るでしょう」

 私は何とも言えぬ気持ちになりながら、曖昧に微笑んだ。

「瑞葉様は、ご自分の凄さを分かっていらっしゃらないのです。ですが他の討伐隊に入るつもりはありません。奥様と私たちで組みますから」

「討伐隊のことはそれでよいでしょう。ですが、これだけは覚えておいてください。禍憑を攻撃して倒さなくとも、補助を務めることは立派な役割です。神殿では、その役割に対してもきちんと査定を行います。例えば荷物持ちの者が、危険の中で必死に重い荷を担いで同行しても、階級が上がる資格はないとお考えですか?」

「いいえ、そんなこと……! わかりました。自分を卑下することは、他の方を貶める可能性があるということですね」

「その通りです。そして、助けられた私たちがどれほど感謝を伝えても『大したことはない』と受け取ってもらえなければ、深く悲しいことでもあります」

「!!!」

 心臓を強く掴まれたように、胸が痛んだ。
 私は、ほんとうに駄目な人間だ。
 神官様の言葉で、またしても気づかされる。

 ――は、攻撃ができない。
 ――は、結界で守るしかない。
 ――は、治癒しかできない。

 私はこれしかできない。そう決めつけて、ずっとばかりを見ていた。

 けれど――。

 私の結界で守られたことで、助かったと泣いてくれた方がいた。
 治癒を施されたことで、もう一度立ち上がれると笑ってくれた方がいた。
 それなのに私は、その気持ちを真正面から受け止めず、
「大したことではない」と打ち消してきた。

 それは、自分を卑下することではなく――
 感謝を伝えてくれる人の心を、踏みにじることだったのだ。

 私は……いつまで「悲劇の主人公」でいるつもりだったのだろう。
 できないことを数えては俯き、できることの価値を見ようとしなかった。
 そんな自分に――もう、終止符を打たなければ。

 バシンッ!!

 気づけば、両手で自分の頬を叩いていた。

「瑞葉殿!!!」
「瑞葉様!!!」

 神官様と佳乃が心配そうに見つめている。

 私はにっこり微笑んで言った。
「お見苦しいものをお見せしました。これはけじめです。今日のお話を機に――私は変わろうと思います」

「瑞葉様。あなたはまだ八歳なのです。そんな急に何もかもできなくてもいいのですよ」
 佳乃が涙目でぎゅっと抱きしめてくれた。

 神官様は朗らかに笑う。
「ははは!さすが透子様の娘さんだ。勇ましい。そしてあなたは優しい人だ、人の痛みが分かる人だ。それは本当に素晴らしい性質です。……いろいろ言いましたが、無理はせず、あなたの思うように進みなさい。きっと神のご加護がありますよ」

「神官様、ありがとうございます」
 私は深く頭を下げて礼を述べ、別れを告げた。

「さあ、佳乃。孤児院に行きましょう」

「はい……瑞葉様!」

 私は前を見据え、歩みを進めた。
 これからは、支えてくれる人と共に、胸を張って歩いていこう。
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