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50 家族への報告
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アオくんこと清瀧碧人様と討伐に出向き、初めて禍憑を倒せたことを、家族が揃った夕食で報告した。
さらに、これから結界の可能性を研究するため、碧人様と再び討伐に行く約束をしたことも伝える。
すると、お父様は苦虫を噛み潰したような顔になり、
「瑞葉は、その……」
何か言いたげに口を開いたものの、最後までは聞き取れなかった。
お母様がすかさずお父様を見て、
「コホン、あなたっ」
と咳払いし、小さく首を横に振る。
「瑞葉、素晴らしいわ。あなただけの道を見つけたのね。結界を禍憑の討伐に使うなんて、誰も考えつかなかったことよ。そもそも結界術は、静止している相手に張るもの。あの素早い猪八怪を閉じ込めるなんて!できる人を私は他に知らないわ。少なくとも、私には到底できない」
「君でもできないのか。それは相当すごいことなんだな」
「ええ、あなた。緻密な神気の制御力がなければ不可能よ。そんなことを、まだ八歳の子がやってのけたなんて!」
お父様の声が少し低くなる。
「ただな……これから結界の研究を深めるということは、いずれもっと強い禍憑と対峙することにもなるだろう。二人きりでは心許ない。討伐には佳乃を必ず同行させるように」
「わかりました!許可してくださってありがとうございます!」
光矢はこちらを見て本当に嬉しそうに笑った。
「姉さま、よかったね!攻撃ができないって、ずっと落ち込んでたもんね」
「ええ。それでも皆のおかげで、自分にできることを誇りに思って取り組もうと思えていたの。でも、こうして結界で禍憑を討伐できるとわかったら……やっぱり嬉しいわね」
「叔父様に報告したら、きっと“見せてくれ”と言うな。僕も見てみたい」
「そうか。光矢も付き添ってくれるなら、ますます安心だ。克己も誘って行ってきなさい」
「……」
光矢はじとりとした目でお父様を見やると、視線を逸らされる。
「母様?なんだか父様のご様子、さっきからおかしくありません?」
「ほほほ、気のせいよ。瑞葉が楽しそうで、私たちも本当に嬉しいの。あなたなら大丈夫だとは思うけれど……決して気を抜かないでね」
「はい。ありがとうございます!」
「今日は疲れたでしょう? 早く休みなさい」
「実はもう眠くて……。今日は早めに休ませていただきます。それでは、お先に失礼します」
瑞葉が退席した後。
「あなた……挙動不審でしたよ」
「父様、母様。何かあったのですか?」
お父様は少し逡巡したが、やがて小さく頷いた。
「……光矢には伝えておこうか」
「そうね。実は夕食の前に、清瀧家当主から速達で手紙が届いたの」
「碧人様のお父上ですね」
「ああ。内容はこうだ――『碧人が婚約を望んでいるが、瑞葉殿の気持ちが伴わないうちは無理に結ぶつもりはない。ただ、碧人が思いを伝えるまで、他家との婚約は待ってもらいたい。万一断りづらい相手から申し込みが来たなら、当家に相談してほしい。そして瑞葉殿には、この話は知らせないよう頼む。長く待たせるつもりはない』――そう書かれていた」
「……それ、実質的には清瀧家からの婚約申し込みと同じでは?」
「いや、こうも記されていた。『もし碧人が気持ちを伝え、瑞葉殿が断ったとしても、一切の咎めはないから安心してくれ』と」
光矢は眉をひそめた。
「期限が曖昧ですね。姉さまが断っても碧人殿が“まだ伝えきれていない”と言い張れば、ずっと引き延ばせる可能性があります。他の家からの縁談を受けられない状態が続くことになるのでは?」
「まあ……そうだな」
「完全に外堀を埋められたわけね」
「そのときは、私から強く抗議するから大丈夫だ」
「私はむしろ大賛成よ。碧人様なら申し分ないもの」
「うう……だが婚約なんてまだ早すぎるだろう。我々でさえ高等部の三年次だったじゃないか」
「仕方ないじゃない。愛する相手に出会ってしまったのだから」
「父様。姉さまが不利益を被るようなことがあれば、必ず抗議してくださいね」
「光矢、心配はいらないわ。夫人の咲子様には少しばかり貸しがあるの。万が一瑞葉に何かあったら、きっと助けてくださるわ」
そう言った母――透子の顔は、いつものように微笑んでいるのだが、どこかそら恐ろしかった。
(これは……敵に回したら厄介だな)
光矢は瞬時にそう理解し、まあそれなら大丈夫だろうと追及を緩めたのだった。
さらに、これから結界の可能性を研究するため、碧人様と再び討伐に行く約束をしたことも伝える。
すると、お父様は苦虫を噛み潰したような顔になり、
「瑞葉は、その……」
何か言いたげに口を開いたものの、最後までは聞き取れなかった。
お母様がすかさずお父様を見て、
「コホン、あなたっ」
と咳払いし、小さく首を横に振る。
「瑞葉、素晴らしいわ。あなただけの道を見つけたのね。結界を禍憑の討伐に使うなんて、誰も考えつかなかったことよ。そもそも結界術は、静止している相手に張るもの。あの素早い猪八怪を閉じ込めるなんて!できる人を私は他に知らないわ。少なくとも、私には到底できない」
「君でもできないのか。それは相当すごいことなんだな」
「ええ、あなた。緻密な神気の制御力がなければ不可能よ。そんなことを、まだ八歳の子がやってのけたなんて!」
お父様の声が少し低くなる。
「ただな……これから結界の研究を深めるということは、いずれもっと強い禍憑と対峙することにもなるだろう。二人きりでは心許ない。討伐には佳乃を必ず同行させるように」
「わかりました!許可してくださってありがとうございます!」
光矢はこちらを見て本当に嬉しそうに笑った。
「姉さま、よかったね!攻撃ができないって、ずっと落ち込んでたもんね」
「ええ。それでも皆のおかげで、自分にできることを誇りに思って取り組もうと思えていたの。でも、こうして結界で禍憑を討伐できるとわかったら……やっぱり嬉しいわね」
「叔父様に報告したら、きっと“見せてくれ”と言うな。僕も見てみたい」
「そうか。光矢も付き添ってくれるなら、ますます安心だ。克己も誘って行ってきなさい」
「……」
光矢はじとりとした目でお父様を見やると、視線を逸らされる。
「母様?なんだか父様のご様子、さっきからおかしくありません?」
「ほほほ、気のせいよ。瑞葉が楽しそうで、私たちも本当に嬉しいの。あなたなら大丈夫だとは思うけれど……決して気を抜かないでね」
「はい。ありがとうございます!」
「今日は疲れたでしょう? 早く休みなさい」
「実はもう眠くて……。今日は早めに休ませていただきます。それでは、お先に失礼します」
瑞葉が退席した後。
「あなた……挙動不審でしたよ」
「父様、母様。何かあったのですか?」
お父様は少し逡巡したが、やがて小さく頷いた。
「……光矢には伝えておこうか」
「そうね。実は夕食の前に、清瀧家当主から速達で手紙が届いたの」
「碧人様のお父上ですね」
「ああ。内容はこうだ――『碧人が婚約を望んでいるが、瑞葉殿の気持ちが伴わないうちは無理に結ぶつもりはない。ただ、碧人が思いを伝えるまで、他家との婚約は待ってもらいたい。万一断りづらい相手から申し込みが来たなら、当家に相談してほしい。そして瑞葉殿には、この話は知らせないよう頼む。長く待たせるつもりはない』――そう書かれていた」
「……それ、実質的には清瀧家からの婚約申し込みと同じでは?」
「いや、こうも記されていた。『もし碧人が気持ちを伝え、瑞葉殿が断ったとしても、一切の咎めはないから安心してくれ』と」
光矢は眉をひそめた。
「期限が曖昧ですね。姉さまが断っても碧人殿が“まだ伝えきれていない”と言い張れば、ずっと引き延ばせる可能性があります。他の家からの縁談を受けられない状態が続くことになるのでは?」
「まあ……そうだな」
「完全に外堀を埋められたわけね」
「そのときは、私から強く抗議するから大丈夫だ」
「私はむしろ大賛成よ。碧人様なら申し分ないもの」
「うう……だが婚約なんてまだ早すぎるだろう。我々でさえ高等部の三年次だったじゃないか」
「仕方ないじゃない。愛する相手に出会ってしまったのだから」
「父様。姉さまが不利益を被るようなことがあれば、必ず抗議してくださいね」
「光矢、心配はいらないわ。夫人の咲子様には少しばかり貸しがあるの。万が一瑞葉に何かあったら、きっと助けてくださるわ」
そう言った母――透子の顔は、いつものように微笑んでいるのだが、どこかそら恐ろしかった。
(これは……敵に回したら厄介だな)
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