神守の少女、二度目の人生は好きに生きます〜因縁相手は勝手に自滅〜

雪水砂糖

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59 説得

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 もうすぐ夕食の時間だが、光矢と叔父様はまだ帰ってこない。よくあることだ。普段ならおにぎりやサンドイッチなどを使用人が届けるのだが、今日はそうもいかない。やきもきしていると、玄関が少し騒がしくなった。二人が戻ってきたのだ。

 食堂に現れた光矢は得意げに言った。
「姉さま、間に合ったでしょ?実はね、時間になると音が鳴る神具の試作品を使ったんだよ」

「いやぁ、助かったよ。あれがなければ気づかなかったね、ははは」

「もう、二人とも!」

 賑やかな声に、お父様とお母様が現れる。

「やあ、克己。夕食を食べに来るなんて久しぶりだ。もっと頻繁に来るといい」

「そうよ、毎日でもいいのよ」

「いやいや、それはさすがに遠慮するよ。今日は話があって来たんだ」

「まあ、そうだろうと思ったよ。食べながらにしよう」

 叔父様は、私の結界の検証結果と、水無瀬家の鉱山での不正調査とともに、対人における結界の効果を調べたいことを説明した。

 お父様は腕を組んで唸る。
「そんな遠い場所に、まだ八歳と六歳の子を連れて行くなんて」

「もちろん佳乃さんにも同行してもらうよ」

 お母様も首を振った。
「私たちも行きたいけれど、外せない用事があるのよ。それに、出向けば目立ってしまって、犯人が逃げるかもしれないわね」

「だからこそ、少数で行く。一見すれば治癒師の訓練のための御一行にしか見えないだろう」

「お父様、お母様、お願いします。私、自分の力を確かめたいの。できることは全部試したい!」

 二人はしばし考え、やがてお父様が言った。

「わかった。ただし瑞葉も皆も変装していくこと。あそこには聖励修道院の奉仕者も来ている。例の親子が回される可能性もあるからな」

「それなら任せてくれ!”魅力を半減する眼鏡”の後に作った”別人に見えるブローチ”、”印象を薄める髪飾り”、”記憶に残りにくいカフスボタン”……他にもいろいろあるんだ」

「よし、全部つけなさい」

「…そうね。用心するに越したことはないわ。でも佳乃、見苦しくならないようにしてちょうだいね。任せたわよ」

「はい。お任せください」
佳乃はにこやかに頷いたが、その瞳には強い意志が宿っていた。

 お父様は続けた。
「鉱山の上の者には話を通しておく。それと治癒師の訓練という名目なら神殿にも事情を話して頼んでおこう。きちんと奉仕者として行くようにすれば不正の調査とは思われないだろう」

「それがいいわ。神殿は横の繋がりも強いから便宜を図ってくれるはず。それに、あの鉱山は岩城家の別荘が近いわね。泊めてもらえるよう頼んでおくわ」

「それは助かる。宿は遠くて不便だったから」

「では、私が手紙を書いておきましょう」

 両親の段取りで話は驚くほどすんなり進んでいく。

 半月以上、家を離れるなんて初めてだ。
 出発の日が、今から待ち遠しくてたまらなかった。
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