神守の少女、二度目の人生は好きに生きます〜因縁相手は勝手に自滅〜

雪水砂糖

文字の大きさ
61 / 96

60 出発

しおりを挟む
 お父様とお母様に許可をもらってから、さまざまな根回しが完了するまでに一ヶ月ほどかかった。
 それでも、早い方だという。

 私自身は特別な準備があるわけでもなかったので、神殿での活動をしながら待とうと思っていた。
 ところが、佳乃の一言に戦慄することになる。

「結界の中に入った複数の人を、触れずに治癒できるのですか?」

 ――そうだ。私はこれまで、結界を通じて治癒を行ったことがなかったのだ。

 佳乃が指摘してくれなければ、本番でいきなり試すことになっていた。

 そこで水無瀬家の討伐隊の協力を得て、練習を始めることになった。
 私の本来のやり方は、まず相手の手を握り、悪い箇所を確かめてから治癒を施すというもの。
 だが今回は、結界に入った人すべてに触れずに治癒を行い、同時に浄化までかけなければならない。
 理屈はわかっていても、実際にやってみると難しい。
 個別に行うのとは違い、治せるのは疲労や軽い怪我程度で、骨折や古傷までは直接治癒をかけないと効果がなかった。

 しかしそこで新たな発見があった。浄化だけでも、疲労や軽い怪我は改善できたのだ。
 さらに、副次的な効果として「鬱々と悩んでいたのに、結界から出たら気持ちが軽くなった」と話す隊員もいた。

 今回の目的においては、結界には浄化の力だけを注ぎ込むことで十分だ。
 これは、禍憑を閉じ込めたときにも無意識に行っていたことだった。

 そうして一ヶ月が経ち、いよいよ出発の日を迎える。
 十日以上の滞在に備えるにしては、荷物は意外と少ない。
 服は動きやすいワンピースと、神殿から送られた神官見習い用のローブ。これがあれば見た目にも信憑性が増すだろう。
 馬車もまた、水無瀬家嫡男が乗っているとは思えないほど簡素な造りだ。
 だが、乗り心地は最高で頑丈にできている。盗賊対策として用意された特別な馬車なのだという。

「無理して不正を暴こうとしなくていいわ。とにかく危ないことはしないでね」

「克己、子どもたちを頼んだぞ」

「ああ、任せてくれ。行ってくるよ」

「お父様、お母様、行ってまいります!」

 両親に見送られ、私は叔父様、光矢、佳乃とともに馬車へ乗り込む。
 胸を弾ませながら、意気揚々と屋敷を後にした。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

復讐は、冷やして食すのが一番美味い

Yuito_Maru
ファンタジー
3度目の人生を生きるピオニー・レノドン。 1度目の人生は、愛した幼馴染と家族に裏切られ、無垢で無力のまま命を落とした。 2度目は、剣を磨き、王太子の婚約者となるも、1度目より惨めに死んでいった。 3度目は、微笑の裏で傭兵団を率い、冷たく復讐の刃を研ぐ。 狙うは、レノドン伯爵家、そして王家や腐った貴族たち。 「復讐とは、怒りを凍らせて成就する歪んだ喜びだ」――ピオニーは今、その意味を体現する。 ----- 外部サイトでも掲載を行っております

私の風呂敷は青いあいつのよりもちょっとだけいい

しろこねこ
ファンタジー
前世を思い出した15歳のリリィが風呂敷を発見する。その風呂敷は前世の記憶にある青いロボットのもつホニャララ風呂敷のようで、それよりもちょっとだけ高性能なやつだった。風呂敷を手にしたリリィが自由を手にする。

私と母のサバイバル

だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。 しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。 希望を諦めず森を進もう。 そう決意するシェリーに異変が起きた。 「私、別世界の前世があるみたい」 前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?

白い結婚にさよならを。死に戻った私はすべてを手に入れる。

美杉日和。(旧美杉。)
恋愛
商人であった父が、お金で貴族の身分を手に入れた。私というコマを、貴族と結婚させることによって。 でもそれは酷い結婚生活の始まりでしかなかった。悪態をつく姑。私を妻と扱わない夫。夫には離れに囲った愛人がおり、その愛人を溺愛していたため、私たちは白い結婚だった。 結婚して三年。私は流行り病である『バラ病』にかかってしまう。治療費は金貨たった一枚。しかし夫も父も私のためにお金を出すことはなかった。その価値すら、もう私にはないというように。分かっていたはずの現実が、雨と共に冷たく突き刺さる。すべてを悲観した私は橋から身を投げたが、気づくと結婚する前に戻っていた。 健康な体。そして同じ病で死んでしまった仲間もいる。一度死んだ私は、すべてを彼らから取り戻すために動き出すことを決めた。もう二度と、私の人生を他の人間になど奪われないために。 父の元を離れ計画を実行するために再び仮初の結婚を行うと、なぜか彼の愛人に接近されたり、前の人生で関わってこなかった人たちが私の周りに集まり出す。 白い結婚も毒でしかない父も、全て切り捨てた先にあるものは――

無能だと捨てられた第七王女、前世の『カウンセラー』知識で人の心を読み解き、言葉だけで最強の騎士団を作り上げる

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
エルミート王国の第七王女リリアーナは、王族でありながら魔力を持たない『無能』として生まれ、北の塔に長年幽閉されていた。 ある日、高熱で生死の境をさまよった彼女は、前世で臨床心理士(カウンセラー)だった記憶を取り戻す。 時を同じくして、リリアーナは厄介払いのように、魔物の跋扈する極寒の地を治める『氷の辺境伯』アシュトン・グレイウォールに嫁がされることが決定する。 死地へ送られるも同然の状況だったが、リリアーナは絶望しなかった。 彼女には、前世で培った心理学の知識と言葉の力があったからだ。 心を閉ざした辺境伯、戦争のトラウマに苦しむ騎士たち、貧困にあえぐ領民。 リリアーナは彼らの声に耳を傾け、その知識を駆使して一人ひとりの心を丁寧に癒していく。 やがて彼女の言葉は、ならず者集団と揶揄された騎士団を鉄の結束を誇る最強の部隊へと変え、痩せた辺境の地を着実に豊かな場所へと改革していくのだった。

ここは少女マンガの世界みたいだけど、そんなこと知ったこっちゃない

ゆーぞー
ファンタジー
気がつけば昔読んだ少女マンガの世界だった。マンガの通りなら決して幸せにはなれない。そんなわけにはいかない。自分が幸せになるためにやれることをやっていこう。

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

華都のローズマリー

みるくてぃー
ファンタジー
ひょんな事から前世の記憶が蘇った私、アリス・デュランタン。意地悪な義兄に『超』貧乏騎士爵家を追い出され、無一文の状態で妹と一緒に王都へ向かうが、そこは若い女性には厳しすぎる世界。一時は妹の為に身売りの覚悟をするも、気づけば何故か王都で人気のスィーツショップを経営することに。えっ、私この世界のお金の単位って全然わからないんですけど!?これは初めて見たお金が金貨の山だったという金銭感覚ゼロ、ハチャメチャ少女のラブ?コメディな物語。 新たなお仕事シリーズ第一弾、不定期掲載にて始めます!

処理中です...